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第30話 (1/4)

 

 12時間前


 14605年

 収穫期の26日目


 園香は無表情で扉の前に立ち、フレームが母親を最後に抱きしめる姿を見守っていた。彼女にできることは、もう何もなかった。虚しい無力感が彼女を襲い、喉を締めつけ、あらゆる希望を奪っていく。

 ~また、同じことが起きる。~

 息が乱れる。

 ~誰かが死ぬ。そして私は生き残る。~

 視線が部屋をさまよい、窓の外へと向けられる。けれど、逃げることはできなかった。何かに目を奪われる。

「フレーム……?」かすれた声で問いかける。「あれ……あれって、もしかして――」


 xxx


 彼は窓辺を見た。そこにはヴァヴァリーの古い植木鉢――ティーポットが置かれていた。

 その中で咲いていたのは、かつてテロンが彼女に贈ったあの種から生まれた花。魔法使いたちの大好物だった。

「これって……?」

 信じられなかった。あのロゼット形状に、見覚えがあったのはそのせいだった!

 園香は植物に飛びかかり、茎を切り取った。「間違いないわ!」

 彼のもとへ駆け寄り、ためらうことなく花の頭部を彼の口へ押し込む。

 彼は噛み、飲み込み、ほろ苦い甘さを感じた。

 目まいがした。まぶたが重くなる。

 もう遅い。

 ――彼は、母にまた会える。


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