表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/218

第29話 (3/3)

 

 リサレは、金網のドームに守られた鋭い刃のような城塞塔を見上げた。

 今回は、目標を果たすためなら、どんな手段も選ばない。

 もう黒い迷宮に引きこもっているわけにはいかない。

 戦うしかない。最後まで。

 電流フェンスの前に立ち、彼女は手を伸ばした。指先の皮膚が熱を帯びて光り始める。

 ――お前か、私か。

 フェンスか、自分の体か。

 どちらが崩れるにせよ、リサレはかまわなかった。

 今、全力を尽くさなければ、一生後悔する。

 彼女は指先の熱に意識を集中させた。

 光はさらに強くなっていく。

 深く息を吸い込み、いざという瞬間を迎える。

 電流は彼女の体を貫こうとしたが、逆流し、元の回路へと弾き返された。

 指の間の金属線が溶け、火花が飛び散る。彼女は少し後退しなければならなかった。

 その瞬間、城の全ての明かりが落ちた。

 溶けた金属から立ち上る煙を見つめ、彼女は驚きに目を見張る。

「おい!」突然、声が飛んできた。

 リサレはハッとして振り向く。

 そこには若い警官が立っていた。だが、その落ち着いた様子に違和感を覚える。

 まるで今来たばかりではないようだった。

 一体、いつからそこにいたのか?

「何をしている?」

 灰色の制服にはフェニックスの紋章が光っていた。

「あなたがやらなかったことを、私がやるのよ!」リサレは歯を食いしばり、怒りをにじませる。「私は正義のために戦うの!」

 全身を熱で包み、彼に向かって突進した。

 しかし警官は素早く身をかわし、彼女の攻撃を受け流す。

 素肌に触れないよう巧みに距離を保ち、言った。「無許可で魔法を使うのは違法だ。君を拘束しなければならない。」

「やれるもんなら、やってみなさいよ!」リサレは蹴りを放つが、彼は身を沈めて避けた。

「協力しないなら、撃つしかない。」警官は横に跳び、リサレの拳が腹に届くのをかわす。

 そして腰のレールガンに手をかけた。

「スチュルジスの奴らが全員死ぬまで、私は止まらない!」彼女は低く唸るように言った。

 しかし警官は、今にも抜こうとしていた銃をホルスターに戻し、数歩後ずさった。

 そして、何かを感じたように後ろを振り返って周囲を見回す。

 ――誰かに見られている?

 リサレは耳を澄ました。

 確かに、近くの暗がりに数人分の呼吸音がある。

 物陰に誰かが潜んでいる。

「いいだろう。」警官は、落ち着いた声で言った。「なら、俺に手伝わせてくれ。」

「……は?」リサレは眉をひそめた。

「目的は同じだ。」彼は自分の名を名乗った。「俺はルディ・フォールド。」

「名前なんて関係ないわ。」リサレは即座に突っぱねた。「他人をそう簡単に信じるほど、私はバカじゃないの。気なら、証明してみせて。それができたら、その時はまた考えるわ。」

 彼女は再びフェンスに駆け寄り、熱した手のひらで金網を焼き切り、簡単に隙間を作って中へと滑り込んだ。

 警官に追ってこられないようにするため、彼女は外側の金属線に手をかけてもう一度加熱した。

 熱と力で金網をねじり戻し、穴を閉じていく間、彼女はルディの顔をまっすぐに見つめていた。

 ――彼の顔には、微塵の表情も浮かんでいなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ