第29話 (3/3)
リサレは、金網のドームに守られた鋭い刃のような城塞塔を見上げた。
今回は、目標を果たすためなら、どんな手段も選ばない。
もう黒い迷宮に引きこもっているわけにはいかない。
戦うしかない。最後まで。
電流フェンスの前に立ち、彼女は手を伸ばした。指先の皮膚が熱を帯びて光り始める。
――お前か、私か。
フェンスか、自分の体か。
どちらが崩れるにせよ、リサレはかまわなかった。
今、全力を尽くさなければ、一生後悔する。
彼女は指先の熱に意識を集中させた。
光はさらに強くなっていく。
深く息を吸い込み、いざという瞬間を迎える。
電流は彼女の体を貫こうとしたが、逆流し、元の回路へと弾き返された。
指の間の金属線が溶け、火花が飛び散る。彼女は少し後退しなければならなかった。
その瞬間、城の全ての明かりが落ちた。
溶けた金属から立ち上る煙を見つめ、彼女は驚きに目を見張る。
「おい!」突然、声が飛んできた。
リサレはハッとして振り向く。
そこには若い警官が立っていた。だが、その落ち着いた様子に違和感を覚える。
まるで今来たばかりではないようだった。
一体、いつからそこにいたのか?
「何をしている?」
灰色の制服にはフェニックスの紋章が光っていた。
「あなたがやらなかったことを、私がやるのよ!」リサレは歯を食いしばり、怒りをにじませる。「私は正義のために戦うの!」
全身を熱で包み、彼に向かって突進した。
しかし警官は素早く身をかわし、彼女の攻撃を受け流す。
素肌に触れないよう巧みに距離を保ち、言った。「無許可で魔法を使うのは違法だ。君を拘束しなければならない。」
「やれるもんなら、やってみなさいよ!」リサレは蹴りを放つが、彼は身を沈めて避けた。
「協力しないなら、撃つしかない。」警官は横に跳び、リサレの拳が腹に届くのをかわす。
そして腰のレールガンに手をかけた。
「スチュルジスの奴らが全員死ぬまで、私は止まらない!」彼女は低く唸るように言った。
しかし警官は、今にも抜こうとしていた銃をホルスターに戻し、数歩後ずさった。
そして、何かを感じたように後ろを振り返って周囲を見回す。
――誰かに見られている?
リサレは耳を澄ました。
確かに、近くの暗がりに数人分の呼吸音がある。
物陰に誰かが潜んでいる。
「いいだろう。」警官は、落ち着いた声で言った。「なら、俺に手伝わせてくれ。」
「……は?」リサレは眉をひそめた。
「目的は同じだ。」彼は自分の名を名乗った。「俺はルディ・フォールド。」
「名前なんて関係ないわ。」リサレは即座に突っぱねた。「他人をそう簡単に信じるほど、私はバカじゃないの。気なら、証明してみせて。それができたら、その時はまた考えるわ。」
彼女は再びフェンスに駆け寄り、熱した手のひらで金網を焼き切り、簡単に隙間を作って中へと滑り込んだ。
警官に追ってこられないようにするため、彼女は外側の金属線に手をかけてもう一度加熱した。
熱と力で金網をねじり戻し、穴を閉じていく間、彼女はルディの顔をまっすぐに見つめていた。
――彼の顔には、微塵の表情も浮かんでいなかった。