怪しげな...
「あれから、ルゥ達こなくなっちゃったねー・・・」
「ニンゲンの子供は毎日きているのに?」
キラキラ光る綺麗な湖の中でニンフ達があの日のことについて話し合っていた。
ニンフ達はイタズラ大好き。いろいろなことに興味津々。そりゃ魔物に育てられたルゥのことなんて大好きに決まっている。だって面白いから。
あの日の湖での出来事は全て、ルゥを人間に出逢わせようとしたニンフの仕業だった。
「あの男の子、健気じゃなぁい?毎日来てはルゥを探してるみたい」
「フィンって呼ばれていたっけ…?」
「そうそう!フィン!」
ニンフはフィンのことをとても気に入っているようで大盛り上がり。
るどうやら二人を近づけたいようだった。
「やっぱり、あんな急に水で飛ばしたのは失敗だったかしら」
「でも、フィンの方はルゥに興味を持ってくれているわけだし、ある意味成功でしょ!」
良いことをしたと本気で思っているニンフはフフンッと得意げに笑う。周りのニンフも反省するものなど誰もいなかった。
一方、フィンはルゥと出会ってからは毎日欠かすことなく湖へ足を運んでいた。そして毎晩自室に閉じ籠り、怪しい研究をおこなっているようだった。
王城の研究室や材料も自由に使えるということでフィン達親子は恐ろしいスピードで様々な魔道具の開発をしていた。王様も一目置いていているようで、息子のアランをフィンと共に過ごさせていることが多かった。
「おい、フィン。また今日も湖に行くのか?あれから一ヶ月近く通っているけどまだ会えないんだろ?あれは、きっとニンフ達が見せた幻だよ。大体ケルベロスに遭遇して無傷で帰って来れるわけがないんだ」
「アランはついて来なくていいってば。それに俺はあの子は実在する。魔物の群れの中で暮らしている人間なんて興味がわかない訳がない」
フィンはなにやら怪しい薬を鞄に詰め込むと、家を飛び出した。
「おーい、俺は今日行けないから、必ず夕方までには帰れよ!!」
アランは、小走りで街の外へ向かうフィンに対して叫ぶ。どうやら、届いたようでフィンは左手を軽く上げて森へ入っていった。
「これだから、魔術オタクは……気になると周りのことが一切見えなくなるんだから」
アランはやれやれと首をふると、城へ戻っていった。
「あっ。ほら!今日も来たわよ!」
フィンが湖に着くとニンフ達は大はしゃぎ。
「健気な子ねぇ。ねぇ、せっかくだからルゥを連れて来ない?一ヶ月も通っているのよ。そろそろご褒美をあげたっていいでしょ?」
ニンフ達が楽観的に考えることしかできず、誰も反対するものはいなかった。
「そうと決まれば、早速ルゥを探しましょう!!」
フィンの前をキラキラした何かが通る。フィンは一瞬気配に気づいたものの、あまりに早かったため見ることはできなかった。
「今、なんかいたような気がしたけど……。はぁ、今日こそはあの子に会えるといいな。やっとお話できるのに」
フィンは鞄にある紫色の液体を見ながら怪しく笑っていた。