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魔物に育てられたこども  作者: 酒のムニエル
7/10

魔物との出会い



「アラン王子!!俺たちがしっかり先導するので任せてくださいね!」


バンがアランの周りをうろちょろしながら意気揚々と歩く。時折、アランの隣を少し気怠そうに歩くフィンのことを睨みながら。


バンが途中不敵な笑みを浮かべたりしていたが、大きなアクシデントもなくアランたちは、湖まで平和に辿り着くことができた。


「わぁ〜すごいや!!!」


さっきまでの威勢ばどこへ消えたのか、バンはキラキラ光る湖にはしゃいでいた。アランやフィンも初めてこんなに大きな湖へやってきたので同じように釘付けになっていた。年相応の反応だった。


全員が湖をしばらくぼーっと眺めていると、突然激しい水飛沫があがる。


「なんだ?!!」


水飛沫と共に何かが地面に落ちてきた。


——それはシルバーグレーの髪に、紫色の瞳。水飛沫のせいか髪はキラキラと輝いていた。


「おんな……のこ?」


一同が呆気に取られていると向こうもこちらに気づいたようで、固まっている。


「街の子か?僕たちと同い年ぐらいに見えるけど…」


アランがエディに聞くがエディは首を横にふる。


「いや、みたことないです。少なくとも僕らの周りでは……」


アランが少女に話しかける。


「おーい、どこからきたんだ?親とはぐれたのか?一人だと危ない、僕らと一緒に街まで帰るか?」


アランの問いかけに少女は全く反応しない。


「あの子は耳が聞こえないのか……?」


アランが戸惑っていると、突然、辺りが暗くなる。

戸惑いながらも辺りを見回すとアラン達の後の森の方から、魔物が現れた。日の光を遮るような大きい魔物が。


「頭が三つ……おいっ、あれケルベロスじゃないか…!!?」


エディが叫ぶ。エディは剣を抜き、アランを守るようにケルベロスに剣を向けた。


「おい、フィンなんとかしろよ、お前魔術師だろーー!!」


バンはフィンの後ろに隠れフィンのことをグイグイ前へと押す。


「*?>;@?!!」


突然湖のそばにいた女の子が、何か叫んだかと思うと、ケルベロスとエディの間に入った。

なぜかケルベロスを守るように立っている。


「おい、危ないぞ!!!君、こっちへきなさい!!」


アランが叫ぶが少女の耳には届いてないようだ。

——というよりは、言葉が通じてないようだった。


フィンは少女のキラキラした髪と紫色の瞳に興味を持ってるようでじっと目を離さない。


「おい、フィン、あいつの目紫に見えないか......?なんで魔物の象徴の目を……あいつも人間のふりをしてる魔物なんじゃ……」


バンがフィンに耳打ちする。その時フィンはなにかをひらめいたようにハッとなった。


「エディ、剣を下ろして」


フィンはそういうと、近くに落ちていた魔物も人間も食べることができる果物をそっととって近づいた。

敵意がないことを示すためだ。

少女は少し戸惑っているように見えたが、突然ケルベロスの中から現れたハーピーとアルミラージが少女のそばへ来る。


「いったい何が起こっている……?」


エディ達はは少し混乱しているようにフィンと少女の様子を見守っていた。


「ねぇ。ないとは思うんだけど、少女とハーピーが会話しているように見えない?」


アランがまた突拍子も無いことを言い出す。


「人間と魔物が会話なんてできるわけないじゃ無いですか!殿下、それより今のうちに逃げましょう!」


バンがアランとエディの腕を引っ張りフィンを置いて逃げ出していった。


残されたフィンは、まだ少女に果物を差し出していた。

少女はハーピー達と何か会話らしきものを終えると、フィンに恐る恐る近づき、手から果物を受け取る。


「`:**><;;!」


少女は今度は困り顔で何かを訴えてきていた。

フィンはもう一度言って、となんとかジェスチャーで伝えてみる。

残念ながら、少女に意味は伝わっていないようだが、敵意がないことは向こうも理解してくれたようでケルベロスが警戒体制を解いてくれた。


すると今度は少女の方からジェスチャーが帰ってきた。

手に持っている果物を指して……5?


「まさか、果物があと5つほしいってことか…??」


フィンはこくりと頷くと、湖の近くに食べ頃の実を探し5つほど渡してあげる。


少女は嬉しそうににこりと笑うと、ケルベロスに乗って森の中へと消えていった。



「あれは確かに魔物の言語だ…。少しだけ父から聞いたことがある」


フィンが何かを考え込むようにその場に佇んでいると、アランとその護衛達が馬で迎えにきてくれたようだった。


「フィン!!大丈夫か!?」


「あ、アラン。大丈夫、ありがとう」


フィンはこくりと頷くと、護衛の馬にまたがる。

何かを決心したようにフィンは少し微笑んでいた。


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