手がかり
一方、湖ではニンフ達が今日もフィンが来るのを隠れて待っていた。ルゥ達を人間と合わせてからニンフは湖に毎日来ているフィンを観察するのが楽しくてしょうがないと言った様子だった。
「あっ、ほら今日もまたきたわよ!どうしようそろそろ話しかけてみちゃう?」
「えぇー絶対びっくりされて終わるだけだよぉ。そんなのつまんなぁい」
悪戯付きなニンフはどうやってフィンのことをおどろかそうかと湖で大はしゃぎ。
「だって透明になっているつもりなわけでしょぉ?私たちからはまる見えなのに」
「ニンゲンの目ではあれは見えないのぉ?へんなのぉ」
「確かに普通のニンゲンより影薄い気はするけど……」
フィンは湖へ着くと、魔物探知機を見ながらウロウロし始めた。少しずつニンフ達に近づくと、透明ケープをはずしカバンに入っていた緑と紫が混じったような怪しげな薬を1本のんだ。
「あら、何飲んだのかしら」
「なんか変な色ね、おいしくなさそー」
ニンフ達はフィンを観察しながら思ったことを口々に話す。
「意外と味もおいしいよ」
フィンが湖の方を向きながら独り言のようにつぶやいた。
「え?ええぇ?今のわたしたちにいったのかなぁ!?」
「まさかぁ、ニンゲンがわたしたちのコトバわかるわけないじゃんー」
「でもルゥはわかるよ?」
「ルゥはニンゲンだけどぉー仲間だから!」
フィンはニンフ達の言葉にびっくりしたように顔を上げた。
「ルゥ……?人間?あの子のことか?」
その瞬間、フィンの前に1体のニンフが興奮した様子で姿をあらわした。
「あっれぇ〜!!よくみたら、ルゥ達のあった時のあのニンゲンの一人じゃん!」
「ルゥ……あの時の果物を受け取った子のこと?」
当たり前のようにニンフの言葉にフィンが返した。
ニンフも少しなら人間の言葉が理解できるが、こんなにはっきりと正確に聞き取れたのは初めてだった。
「えぇ〜なんでこんなに会話できるのぉ?あなた何者ぉ?ルゥのこといぢめるのはだめだよぉ」
「いじめるつもりはないよ、ただまた話してみたいだけだよ」
メガネの奥の薄いグレーがかった瞳がニンフのことをしっかりと捉えていた。
「ふぅん。ほんとにぃ?」
ニンフもまけじとフィンのことを見つめ返す。じーっとみているうちにニンフはフィンのメガネに興味津々。レンズに顔をギューと押しつけながら楽しくなってしまっていた。
「ならいっか〜!!確かにあなた健気に毎日きてたしぃ、あたしからルゥをまたここに来るように言ってあげる〜!」
気づくとニンフは楽しそうにフィンの周りのクルクルと回って喜んでいた。
そんなニンフよりも更に楽しそうに、そして怪しげにフィンはニヤッと笑った。
「やっと……手がかりをつかめた」