怪しいメガネの男の子
ルゥが森でこってりしぼられて大人しくしている頃、人間の街では街と湖を毎日のように行き来している怪しいこどもがいた。
「おい、フィンまた今日も湖に行くのか?良い加減バレるぞ」
「……アラン、しつこい。俺はあの子と会話したいんだ」
「会話って言ったって……あんなのニンフに揶揄われただけさ。ケルベロスがあんな場所に、ましてや人間の女の子と一緒にいるわけないじゃないか」
「それを確かめるためにも通ってるんだよ」
あの湖での出来事は子供達の中ではニンフにみせられた幻影ということでみんな納得していた。そうでなければ、あまりに怖い経験だったし、親に言ったところでただ怒られるか馬鹿にされるかなので誰もあれ以降、湖の話題は口にしなくなっていた。
フィンだけはあの日から毎日魔物探知機を片手に、毎日湖へ向かい何かに耳を傾けながら怪しげな本と薬を飲んでは首を傾げていた。
「ちなみに、最近研究室に篭りきりなのも、湖のあの子がらみなのかい?」
アランが、フィンのリュックにパンパンにつまった怪しい薬達を見ながら呆れたように言った。フィンの研究机の上には、魔物の言葉と書かれた本や、紫色の液体が入った瓶、謎の機械が無造作におかれていた。
「もうそろそろ完成しそうなんだよなぁ……。」
アランに聞こえるか聞こえないかの声でボソッと呟く。
「んーまぁ、なんか面白い事があったら僕にも教えてくれよ」
諦めたような呆れたような笑いをフィンに向けるとアランは部屋を出ていった。
フィンは父親の部屋からくすねた魔道具透明ケープをかぶると誰にもバレずにまた湖へと向かうのだった。