仲間は誰?
あれからルゥ達はトロ爺やオルトロスにこってり絞られたこともあり、湖には近づかなくなっていた。
今日は森の中でピクニック。
「ねぇ、ルゥ。湖の……美味しかったよねぇ、あの果物」
ハピィがポツリと呟く。
ミラはキッとハピィのこと睨んだ。
「あっ……」
ミラの視線に気づくとはピィはバツが悪そうに下を向く。
あれからなんとなく、ルゥ達は湖の出来事について触れないようにしていた。
初めての人間との遭遇、剣を向けられたこと、はっきりとした敵意を向けられたのはみんな初めての経験だった。
「んーそうだね、おいしかったね。ちょっと怖かったけど」
ルゥはミラの頭を落ち着かせるように撫でながら答える。
この一ヶ月、色々な考えがルゥの頭の中を巡っていた。
今までのトロ爺や、ケルベロス、オルトロス、ハーピィやアルミラージと生活してきたルゥにとって初めての人間との遭遇や敵意。ケルベロスや自分に対して向けられた畏怖の目。そして最後に果物をくれた黒い髪の男の子のこと。
言葉がわからずどうしていいかわからなかった中で、黒髪の男の子だけが身振り手振りで意思を伝えようとしてくれたこと。
「ねぇ……ルゥは……やっぱりニンゲンの街の方が楽しいのかな……?」
ふと、ミラが不安そうにルゥのことを見上げながら呟いた。ケルベロスとハピィもハッとした表情でルゥに目を向ける。
あの日から、ケルベロスもハピィもニンゲンの街で暮らした方がルゥは幸せなのではないかと口にはしないが考えていたようだ。
「んー……今が一番楽しいよ。みんなと遊んで美味しいもの食べて、ハピィともミラとも友達になれて」
ルゥは少し困ったように笑いながら答えた。
今が楽しいのは本当だ、だがあの日の出会いがルゥの中でも特別なものになっているのも確かだった。
「ねぇねぇねぇ!あなた達最近ぜんっぜん、湖にきてくれないじゃなぁい!!!」
突然目の前にふわっとニンフが現れた。
「「「わわっびっくり」」」
ケルベロスの頭の上にニンフは腰を下ろすと、ルゥの方をじっと見る。
「ねぇ〜ルゥちゃん、どうして湖にきてくれないの?」
ニンフは残念そうに、そしてからかうように続けた。
「あの男の子、ほぼ毎日湖に来ては待ってるのにぃ〜」
「えっ……?」
ルゥはびっくりしてぎゅっとケルベロスの毛を握った。
嬉しいような怖いような不思議な感情だった。
「でも……」
ルゥは少し気まずそうにハピィとミラのの顔を交互に見た。
「「「湖だめ、あぶない!!!」」」
ケルベロスがフンと鼻を鳴らすと、ニンフがふわっと宙に浮かんだ。
「もぉ、過保護なんだからぁ。あの男の子なんて一人で毎日来てるのにねぇ。ルゥのい・く・じ・な・しっ」
ニンフはそう言い残すと、どこかへとんでいってしまった。
「だっていきなりニンゲンなんて言われても……言葉もわからないもん」
不安そうにしているルゥの膝の上にミラがよじ登る。ふわふわのミラを撫でながら深いため息をついた。