第三話 期待のクラス替え
微妙な空気のまま何とか登校した二人。
進級したという事はつまり例のアレがある。
1年間いた教室の元自分の席に座って時間まで過ごす。
無論友達などいるはずもなく、いつもはスマホでSNSを見漁ったりゲームをしたりするだけだが。
しかし、今日は違う。
苿結の思考はとある事で埋まっていた。
今年のクラス替えは小鳥遊と一緒になれますように……!!
クラスが離れてても小鳥遊は優しいから僕の事構ってくれるよ? でもさあ、友達より上の関係になりたいんだったら絶対同じクラスの方が良いじゃん?
確かに放課後は小鳥遊の家で遊んだりしてるから僕が一番仲が良いと思いたいけど、小鳥遊の事だから何が起こるか分かんないし!
小学校の頃からずっとモテてたからなあ……。何で未だに彼女がいないのか不思議だな。
小鳥遊以外の事は考えられませんとでも言うかのように、頭を抱えて悶々としていた苿結。
その思考には終止符が打たれた。
そう、ついに貼りだされたのである。
勿論苿結の天敵である陽キャ共が一目散に群がるので必然的に暫く見れないが。
――数分して周りが落ち着いてきた頃、何とかして自分のクラスを確認した苿結。
「五組か……。小鳥遊はどうなんだろ……」
ボソっと呟くが、周りはそんな物気にしない。
「自分のクラスは覚えたなー? じゃあ一組のやつから順番にさっさと二年の教室行けー」
混雑防止のために番号の早いクラスから移動していく。
自分が移動するまでの時間、苿結は気が気では無かった。
そしてついに自分の番が来た。
小鳥遊と同じクラスである事を祈りながら歩みを進める苿結。
2年のクラスは1年の3階から1つ降りた2階なので階段を降りてゆく。
そんな苿結にふと誰かから声が掛けられた。
「お、神崎。2年は同じクラスか」
苿結が待ち望んでいた相手の声だった。
それはもう嬉しそうな声で彼を呼ぶ。
「小鳥遊! 小鳥遊も五組?」
「そうだよ。まさかお前と一緒とはな」
マジか……! もしかして運命? なんちゃって……。
本当になれるとは思ってなかった……良かった……。
「どうした、そんな顔して。なんだ、俺と一緒なのがそんなに嬉しかったか?」
「当たり前じゃん! 何気に小鳥遊と同じクラスなの久しぶりだし」
苿結の純真な笑顔を受けて、どこか苦しそうにうめき声をあげた小鳥遊。
「ちょ……それは反則だ……」
/////
新しい教室で新しい席に座り、新しい担任の話を聞く。
まあ苿結の耳には届いていないが。
今の苿結の頭の中にはもう小鳥遊の事しかない。
満面の笑みでただ佇んでいるのは少し恐怖を覚えてしまう程、普段の苿結からは考えられなかった。
が、次の瞬間。その笑みは崩れた。
先生の話が終わり少々の休憩時間に入ったので、小鳥遊の元に行こうと席を立とうとしたはいいものの。
小鳥遊の周りにはやはり人が集まる。
それらに笑顔で応対する小鳥遊に自分が釣り合っているのか? 果たして自分がそこにいて不自然じゃないか?
そんな事ばかりが脳裏によぎる。
そうだよね……。
僕なんかが小鳥遊と一緒にいるなんて不釣り合いだよね、知ってたよ……。
昨日小鳥遊にメイクしてもらって、小鳥遊にも可愛いと言われた。
それで浮かれてたけどさ。
やっぱり僕が小鳥遊の隣にいるのなんてあり得ない事だったんだよ。
あ、また小鳥遊の所に人が来た。
しかも結構楽しそうに話すじゃん。
はあ、いいや。結局僕はいつも通り机に突っ伏して寝てれば良いんだよ。
悔しいなあ……。
/////
――数分後。
「おい、何してんだよ」
「んあ、小鳥遊? ああ、夢かな」
小鳥遊が僕に話しかけにあの輪から外れてくるなんて流石に無いし……。僕の作り出した、ただの夢か。
「ばーか、何寝ぼけてんだ。さっきはあんなにはしゃいでたくせに。急に元気無くなったじゃねえか、どうしたんだよ」
「ふぇ? 夢じゃない?」
いや、流石に嘘だよね?
「お、この人が理人の幼馴染? 俺は雨乃麗音。これからよろしくね~」
「え? 何、ど、どゆこと?」
「ほら、麗音が自己紹介してんだから。神崎も」
「わ、分かった……。神崎苿結です。よ、よろしく……?」
え、何、どゆこと?
この人ってさっき小鳥遊と結構仲良さげに話してた人だよね?
身長も小鳥遊と同じくらいだし顔も身体もスラッとしててかっこいいし……。
なんで僕の周りにこんなイケメン二人が……。
「はい、これから君も俺の友達ね。あ、RINE教えて~」
「あ、は、はい。これです……」
困惑しながらRINEのQRコードを差し出す苿結。
どうやら新クラスでも何とか(?)やっていけそうで良かったと、少し安堵した。
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「はぁ……疲れた……」
一年いた教室に入って、席に着くなり机に寝そべりそう呟く理人。
「よ、どうした。初日からやけに疲れてそうだけど」
「ん、ああ。麗音か。何でもない」
「あっそう。そういえばクラス変わるけど俺達一緒になれるといいな」
「だな。別に皆俺の事が嫌いってわけじゃないけどこんなグイグイ来てくれんのお前しかいないからな……」
クラス替えか。そんなもんあったな。
神崎とも、もう数年同じクラスになってないな。
もしかしたらこれが神崎といれる最後の学生生活かもしれないし、同じクラスだったら楽しくて良いんだけど。
「え〜、俺と離れるのが嫌なのか〜? 理人ったら可愛いなあ。俺もお前と離れたくないぞ〜」
寝そべる理人に後ろから抱きつく麗音。
理人は唐突の事に驚いて起き上がろうとした。
「ちょ、おま、離せ!」
「あだっ」
身体を起き上がらせようとした理人の頭が麗音にクリーンヒットした。
「あ、すまん。大丈夫か?」
「理人〜、酷いよー。お詫びに購買でなんか奢って〜」
「いやお前のせいだけどな? まあ別に良いけどさ……」
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クラス替えの紙が貼り出された。
えーっと、俺のクラスは……。
「5組か」
そう呟いた理人に嬉しそうに返す麗音。
「おー! 理人、同じクラスだ、やったな!」
「だな。しかしいつの間に隣に……。まあ移動まで待つか」
――数分後。
時間が来た。
「えー、そろそろ時間ですかね。次は5組の方、どうぞ。」
「ほら、麗音。行くぞ。」
「? あ、オーケー」
イヤホンを付けて曲を聴いていた麗音の肩を叩き、移動を促す理人。
雑談をしながら歩みを進める。
「ん? あれは神崎か? ちょっと行ってみるか」
「行ってらっしゃーい」
麗音の元を離れ、神崎へと向かう理人。
「お、神崎。2年は同じクラスか」
「小鳥遊! 小鳥遊も五組?」
「そうだよ。まさかお前と一緒とはな」
ぐっ……。なんて笑顔してんだよ……。
平静を装ってはいるけど大分きついぞ……。
「どうした、そんな顔して。なんだ、俺と一緒なのがそんなに嬉しかったか?」
「当たり前じゃん! 何気に小鳥遊と同じクラスなの久しぶりだし」
またもや神崎の笑顔が理人にダイレクトアタックしてきた。
「ちょ……それは反則だ……」
「ん? なんか言った?」
「いや、何でもない」
あっぶね、声に出てたぞ……。
一年間、いや三年になる時にクラス替えは無いからあと二年か。
耐えられるか……?
おはようございます。百です。
昨日の深夜に急いで仕上げたのでちょっと荒い部分があるかもしれません。
何気に一話一話の進度が遅いんですよね。
第二話なんて登校するだけでしたし。
まあもうすぐテンポ良く進めると思うので気長に待って貰えたらなと。
ブクマやらコメントやら頂けると大変励みになるので是非よろしくお願いします……。(切実)
追記:タイトル付けんの忘れてました〜!




