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第二話 登校するだけのドキドキ

翌朝、苿結はいつも通りの動きで登校の準備をしていたが、どこかぎこちなく抜けている所があった。

1時間ほど早く起きてとある物と格闘していたのだが、それは関係無い。

少し目玉焼きを焦がしたり制服のボタンが一つずれていたりと、ちょっとした事ではあるのだが確実にいつもとは様子が違っていた。

狂った調子で何とか準備を終えた神崎は、小鳥遊が来るまでリビングで座って待っていた。

神崎の家には苿結以外に人がいない。

何も亡くなっているというわけではなく、両親は元々国内外問わず色んな所を転々として働いているので実質一人暮らしとなっている。

何かあった場合は近くに叔母の家があるため、風邪を引いた時等は連絡して助けてもらっている。

まあ風邪を引いた時は小鳥遊家全員が心配して世話をしに来てくれるので、あまり叔母に連絡する事は無いが。

また登校の際は、小鳥遊が苿結の家に来てそれから一緒に学校へ行っている。

学校は徒歩で30分程の場所にあるため、小学校の時からの慣れで毎日二人で歩いて行っている。


「今日はいつもより遅いなぁ……。何やってるんだろ」


苿結がそう呟いた時、インターホンが鳴った。チラッとモニターに小鳥遊が映っているのを確認して玄関のドアを開けた。

小鳥遊は出てきた苿結に対して軽く手を上げこう言った。


「よお、準備出来てるか?」

「当たり前じゃん。今日ちょっと遅かったね、何かあった?」

「いっ、いや、何も。ちょっと手間取っただけだ」


何か隠しているように感じた苿結はじーっと小鳥遊を上目遣いで見上げる。


「!? 何だ急に。お前昨日からおかしくないか?」

「なっ、何が!? そんな事言ってる小鳥遊こそおかしいよ! 今だってほら、目を合わせようとしないし!」


べ、別におかしくないし! そんな、小鳥遊がいつもよりかっこよく見えてちゃんと見たかったとかそんなんじゃないし……。


二人の間にしばしの沈黙が下りた後、苿結が切り出した。


「は、早く行こ! 小鳥遊が遅かったから遅刻しちゃうよ」

「そ、そうだな! でも俺のせいにはしないでくれ?」


視線を微妙に逸らした状態で学校へと歩く二人。


「―――あ、鍵閉め忘れちゃった。ちょっと閉めてくるね」

「おう、待ってるから行ってこい」


焦りすぎて鍵閉めんの忘れてた……。

ていうか何で小鳥遊が昨日よりかっこよく見えんの?

物心つく前から一緒にいる幼馴染なのにちょっとす、好きって自覚しただけでそんな変わるものなの……?

でも僕は男だし……。

男が男の事を好きっておかしいよね……。

いや、もう僕は小鳥遊の事が好きって思ってるんだ。今更変えられるものじゃないし、変えたくない。

まあ、今日中は目合わせられないかもな。

ちょっと恥ずかしい……。


色々と悩んだ末に何かを心に決めた苿結は、さっさと鍵を閉めて自分の事を待ってくれている小鳥遊の元へと小走りで向かった。


「じゃ、行くか」

「うん」


再び歩みを進める二人は、もうすぐリリースされるMMOについて話していた。

見た目や行動はいつもと同じでも中身は昨日から今まででかなりの変化があった。

それは行動にも表れてきており、先程の苿結だけでなくどうやら小鳥遊にもあるようで。


「あれ、小鳥遊クマ出来てるよ。寝れなかったの?」


会話を中断して苿結が小鳥遊にそう聞いた。

小鳥遊はまたもや何かを隠すようにしてこう返した。


「まあちょっと色々あって、な。お前こそ眠そうだぞ。ちゃんと寝たのか?」

「寝たよ。だって2年生初日から遅刻とかやばいでしょ」

「でもお前中3進級の時遅刻したよな。あの神崎が今や学校の事を心配するようになったか……」

「ちょ、それにはワケがあるんだって! だって夏休み終わる三日前にあのモルゲンからリリースされたゲームがあったんだよ。寝れるわけないじゃん?」

「いや俺に聞かれても寝ろよとしか……」


少し顔を赤らめて弁明をする苿結と呆れ顔の小鳥遊。

いつも通りの道でのいつも通りの会話だというのに、胸の奥に隠された想いはいつも通りでは無かった。

一体いつになったらこの気持ちを明かせるだろうかと考える苿結に一つの閃きがあった。

男が男を好きになるのがいけない事だというのならば。

自分が女になってしまえば良いのでは?






----------






「ねみぃ……」


クソ、昨日の神崎がフラッシュバックして全然寝付けなかった……。

確かに可愛かったがそんな寝付けない程だったか?

どうも胸ん中がモヤモヤすんだよな……。

あいつが男なのに女みたいな見た目が出来た事のギャップか?

ダメだ考えれば考える程、余計に分からなくなってきた。

いいや、さっさと準備するか。

……もし神崎が女に生まれてたらあんな感じだったのかな。

その場合俺と神崎はここまで仲良くなってたか……?

小さい時は親が話したりしていたから一緒に遊んでいたが、小学校入って以降は俺達が勝手に仲良くしてたからな……。

中学校に入ってあいつがゲームするようになってからは俺の家で遊ぶ事が多くなったけど、神崎が女だったら俺の部屋に入れるのは嫌だったかもな……。

って何考えてんだ。

さっさと準備しねえとな。


神崎とは違って特にミスも無く準備を終え、母の作った朝食を食べた。

食事中も思考は止まらず、絶えず神崎の事について考えていた。


「あっ、やべ。もう時間じゃん」


急いで残りを胃の中に流し、バッグを持って玄関へ向かう。


「御馳走様! いってきます!」


母にそう告げ家を出る。


「しっかしあいつにどう顔を会わせたものか……」


俺としてはなんとなく会いにくいんだよな……。


「まあ考えても仕方ねえ、行くか」


インターホンを鳴らし神崎を呼んだ理人。

とりあえず当たり障りの無い言葉をかけた。


「よお、準備出来てるか?」

「当たり前じゃん。今日ちょっと遅かったね、何かあった?」

「いっ、いや、何も。ちょっと手間取っただけだ」


お前の事考えてたなんて言えるわけないだろ!

どうしても昨日の顔が重なって見える……。


少し物思いに耽るような理人をいきなり下から見上げてくる神崎に驚いた小鳥遊。


「!? 何だ急に。お前昨日からおかしくないか?」

「なっ、何が!? そんな事言ってる小鳥遊こそおかしいよ! 今だってほら、目を合わせようとしないし!」


ああ、クソ。こいつは人の心が読めるってのか!?


「は、早く行こ! 小鳥遊が遅かったから遅刻しちゃうよ」

「そ、そうだな! でも俺のせいにはしないでくれ?」


俺がちょっと遅れたのは神崎の事考えてたせいだからほぼお前のせいみたいなものだろ!

いや、それは暴論か?

あ~顔見てらんねえ……。


「――あ、鍵閉め忘れちゃった。ちょっと閉めてくるね」

「おう、待ってるから行ってこい」


何か焦ってるように見えるな……?

別に学校に遅刻するだなんてあいつは別に考えてないだろうし……。

分からねえな。

あ、帰ってきた。


「じゃ、行くか」

「うん」


互いに視線を少し外しながら歩く二人。

神崎が何かに気づいたようで。


「あれ、小鳥遊クマ出来てるよ。寝れなかったの?」


だからお前の事を考えてたんだよ……!

でも何で俺は神崎の事がこんなに気になるんだ?


「まあちょっと色々あって、な。お前こそ眠そうだぞ。ちゃんと寝たのか?」


何かを隠すように自分から話の対象を逸らす理人。


「寝たよ。だって2年生初日から遅刻とかやばいでしょ」

「でもお前中3進級の時遅刻したよな。あの神崎が今や学校の事を心配するようになったか……」

「ちょ、それにはワケがあるんだって! だって夏休み終わる三日前にあのモルゲンからリリースされたゲームがあったんだよ。寝れるわけないじゃん?」

「いや俺に聞かれても寝ろよとしか……」


なんでそんな恥ずかしそうに弁明するかな……。

可愛すぎんだろ……。

女装してなくてこれとかアレになったらどうなってたんだよ……俺が……。

って、あれ? こいつ。眼鏡はどうしたんだ?


「お前眼鏡は? コンタクトにしたのか?」

「あ! 気づいてくれた? 実はそうなんだよね~」


まさか言われるとは思っていなかったようで、少し嬉しげにする苿結。

それをもろに食らった小鳥遊は。


これは無理だ……。勝てねえ……。

学校行くだけでこれとかどうなっちまうんだよ……?

こんにちは、百です。

まさか登校するだけで一話消費するとは思ってもいませんでした。

割とスローテンポでいく事になるかもしれません。

頑張って続き書いてるので応援代わりにブクマ、コメントよろしくお願いします。

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