その翼に誇りを、その瞳に覇天の輝きを 11
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『アネックス・ファンタジアをプレイ中の全てのプレイヤーにお知らせします』
『現時刻を持ちまして、堕龍・オルトロス型が討伐されました!』
「「「!!」」」
突如として鳴り響いたそのアナウンスに、この場にいる全プレイヤーが反応した。
堕龍に向かったプレイヤー達がやってくれたようだ。
実際はたった一体のモンスターの手によるものであることなど、この場の誰もが知る由もない。
「皆様、向こうの方々がやってくれましたわ! こちらも大詰め、最後まで気を抜かずに行きますわよ!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」
全員の耳に届いたゲームアナウンスとセレスさんの掛け声によって、戦場のボルテージが上がる。
堕龍と同じレベルの化け物を誰が倒したか、なんてのは後回しにして、堕龍が倒せる相手と証明してくれたのは非常にありがたい。
堕龍もゴールが見えていると尚更だ。
「あと顔は三つ……なんのアビリティ持ってるか分かる人いる?」
・おそらくアサシン、グラディエーター、ウォーリアーの三つ
・魔法職は優先的につぶしたから、あとはカローナちゃんの得意な近接戦闘職だけだね
・アーカイブの分析力よ
・コメント欄見ながらあれだけ動けるカローナ様もセレスちゃんも大概
「ありがとう!」
さすがはアーカイブ。数が減ってくると、アビリティの種類から取り込まれたプレイヤーのジョブまで分析できてしまうとは。
グラディエーターとウォーリアーはともかく、アサシンはあんまり考えなくてもいいかな。アサシン系は確か、敵対心消去と急所特攻、隠密特攻が得意な職業だったよね。
堕龍がヘイト下げたところで、これだけのプレイヤーに囲まれてる以上意味ないし、隠密なんて持ってのほか。急所だけ気を付ければ大したことはない。
本当は魔法職で囲んで遠距離から狙い撃ちできれば楽なんだけど……
「触手に邪魔されて魔法が届かないのがネックよねぇ」
「お役に立てなくて申し訳ありませんわ」
「仕方ないわよ。最初の形態で魔法職は活躍したし、セレスさんは最初から足止めしてくれてたし、誰も文句言わないでしょ」
「そう言っていただけると助かりますわ。では、あとはカローナ様に任せても?」
「もちろん! きっちり削りきってあげるわよ」
「まぁ待て、俺も混ぜちゃくれねえか?」
そう言いながら私の隣に来たのは、『ジュエラーボックス』のダイヤモンドさんとルビーさん。宝石のようにキラキラと輝くレイピアを抜き、にこやかな笑みの奥に獰猛な闘志を燃やしているのが分かる。
「きれいな剣ね?」
「あぁ、これ? 『クリスト・グランディディエ』ってんだ。で、これをこうすると!」
ダイヤモンドさんは、おもむろに取り出した手のひらサイズの宝石のようなアイテムを、そのレイピアに叩きつけた。砕け散った宝石はキラキラと輝くエフェクトとなってレイピアに吸い込まれ、レイピアが眩く輝きだす。
「職業『輝石占術師』の代名詞ともいえるアビリティ、【ジュエル・エンチャント】だ。宝玉系アイテムと引き換えに、宝石に様々な効果を付与するのさ」
「何カッコつけてるんですかダイヤモンドさん。気取っててキモイです」
「何を言ってるんだいルビーちゃん? カローナちゃんは今配信中なんだろ? これを機に有名人になるかもだし」
「そういうのがキモイです」
「あはは……」
・ギルメンが辛辣で草
・あれ? ルビーちゃんも可愛いぞ?
・ジト目毒舌クール系侍女キャラとか強キャラ来たな
・こんなの宝石箱じゃなくて性癖箱だよ……
「ともかく、俺の手の内が全国配信されるんだ。少しぐらいカッコつけさせてくれよ!」
ダイヤモンドさんがレイピアを構えると同時、レイピアの表面に複雑な文字列が浮かび上がる。魔法陣に使われているものと同じものだ。
『ジュエラーボックス』のメンバーであれば全員が就いている『輝石占術師』はあくまでもサブ職業。ダイヤモンドがメインで使っている職業は別にある。
職業『魔導騎士』。
使用する武器に魔法を設定することで、武器を通して任意のタイミングで魔法を使用できるという、遠近両方の戦闘に長けた上位職業である。
そして、彼が使う武器である『クリスト・グランディディエ』。
【モラクス火山】に住まう金剛蟹のドロップアイテムを惜しげもなく使用したレイピアである。魔法適正と耐久が高く、使用した素材により剣でありながら宝石扱いとなる。
つまり、『魔導騎士』と『輝石占術師』のアビリティを一身に受けるこのレイピアは———
「一振り三発の暴力装置! 【グラン・ペネトレイション】!」
放たれたのは、【ペネトリースパーダ】のさらに上位派生アビリティ。
威力、射程ともにさらに向上し、レイピアという武器種特有の『突き系のアビリティ性能アップ』の効果によりその威力は絶大だ。
強力な貫通攻撃が触手の表面を削り、『魔導騎士』により付与された【サーベイジトキシン】が毒を、『輝石占術師』により付与された【エレクトロ・インパルス】が麻痺を付与し、堕龍を侵食していく。
「それ強いわね!?」
・宝石で剣作るの頭いいな
・これもヘルメス作だろ
・もしかしてメイガスナイトとジェムエンハンサーって相性よかったり?
「だろぉ? もっと俺を映して……って言いたいところだが、せっかく作った隙を逃すなよ?」
「任せなさい、準備は万端よ!」
いざ、吶喊!
お読みくださってありがとうございます。
『輝石占術師』はわりと作者が気に入っているジョブです。




