霧隠れの霊廟リベンジ 1
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今回から新しい章に入っていきます(_ _)
Xデーの到来である。
Mr.Qもヘルメスさんもプライマルクエスト後編がひと段落したようで、いよいよ『霧隠れの霊廟』に挑む時が来たのだ。同盟を結んだ大型クラン『アーカイブ』の協力の下、最後の準備にてんてこ舞いである。
「ついにこの時が来たようだな……」
「カローナ、装備の打ち直し終わってるぞ」
「本当？ どんな感じ？」
「説明するより見てもらった方が早いな。渡しておく」
「えっ、なにこれ、強すぎん？」
「HPポーションにMPポーション……バフポーションも入れておきましょう」
「我々アーカイブにはこれぐらいしかできないからね。霊廟の攻略にかかる物資は存分に提供しよう」
「……ついにこの時が……」
「聖水とか要ります？」
「どうなんだろうか。堕龍は別にアンデットモンスターって訳では無さそうだけど……」
「無いより良いだろ？ アイテムボックス入れとこうぜ」
「ついに……」
「できれば動画とか残して欲しいんですけど……」
「動画サイトと連繋してるやつ居たよな？ そいつに頼んだら？」
「いや、プライマルクエスト発生者以外のやつが居たらなんか影響があるんじゃないか？」
「だったらディー・コンセンテスの誰かに頼んで……」
「ダメもとでカローナさんに頼んでみる？ 彼女、結構有名な配信者でしょ？」
「おまっ、カローナ様に頼むなんて恐れ多い……」
「お前、そっち側だったのか……」
「そもそもプライマルクエストの中身を公開するのはちょっとまずいんじゃない？」
「いや誰か反応して！？」
さっきからずっとゲ◯ドウポーズでなんか言ってたMr.Qがついにキレた。
「いやだって、霧隠れの霊廟に挑む直前のくそ忙しい時にくだらないことしてんじゃないわよ」
「……なんかカローナちゃんって俺への当たり強いよね……」
「あんたがちゃんとしてればいいのよ。自分の準備はいいの？」
「もちろん！ 今の俺ははっきり言って最強だから」
「そ、良かったわね」
「し、塩対応すぎる……」
「夫婦漫才はそのあたりにしてくれないかね？」
「「夫婦じゃないし！」」
「……そういうところだと思うのだが……。まぁ良い。準備が良いならそろそろ行ってくれるとありがたいのだが」
「そうね、Mr.Qなんて放っておいてそろそろ行きましょうヘルメスさん？」
「そうだな。俺はあんまり戦闘には参加できないから、頼りにしてるぞ」
「カローナちゃん、俺は？」
「来たいならこれば？」
「……なんか本当に悲しくなってきた……」
Mr.Qにはこれぐらいでちょうどいいのよ、これぐらいで。あんまり優しくしすぎるの付け上がるしね。
まぁ、彼の実力は知ってるし……攻略では頼りにしてるわよ。
♢♢♢♢
街を出てしばらく、外から見ても分かるほどの霧に包まれた高峰に到着。なんとしてでも、今回のチャレンジで何とか攻略したいところだ。一応装備を確認しておくと……
『冥蟲皇姫の鎧AGI5』———甲虫姫装の鎧を元にさらに大量のディアボロヴェスパの素材と、ダイハード・メガランチュラの素材をつぎ込んで打ち直した上、大量の素材を突っ込んでAGI特化で５段階強化を行った逸品だ。
装備時のステータスアップ効果はもちろんのこと、【変転】の効果もパワーアップしている。
さらに、頭装備である『冥蟲皇姫の帝冠DEX5』、脚装備である『冥蟲皇姫の脚鎧AGI3STR2』を装備している。
もちろんこれらの装備も【変転】の機能を持っている。
冥蟲皇姫の鎧が胴・腕・腰に渡る装備のため、頭と脚を合わせて防具を装備できる五部位全てを『冥蟲皇姫』シリーズで埋めることができた。
つぎ込んだディアボロヴェスパの素材は何十……下手したら百に届いてるかも。
レベルアップで習得したアビリティも合わせて、私は比べ物にならないほどに強くなっただろう。
と言うかこのゲーム……レベリングが罠かもしれない。
カグラ様が言った通り、レベルを上げたら大量のアビリティを習得したのだ。梵天丸さんとめちゃくちゃ戦いまくったからなんだろうけど……。
その戦いによって積み重ねられた経験がアビリティ習得に繋がるのであって、つまり効率を考えてさっさとレベルアップするのは罠だということ。
ついでに習得したアビリティはどれも私の戦い方に則したものであり……つまり、どんなアビリティを獲得するかは、就いている職業だけでなく、プレイヤーがどんな行動をするかによって決まるというわけだ。
さすがにもう別のキャラビルドに転向は無理そうだ。いや、まぁ変えるつもりはないけどね。
霧隠れの霊廟は相変わらずの濃霧、なんだけど……
「あれ？ なんかさ、前回来たときより霧が薄くなってる？」
いや、違うな。どちらかと言うと、私たちの周りだけ霧が避けているように見える。私たちを中心に半径３mほどのドーム状に霧が薄い部分があり、その外側は真っ白の濃霧が埋め尽くしている。
「あぁ、多分俺が居るからだね」
「ん？ どういうこと？」
「ほら、ラウンドナイツの後編で新しい職業を修得してさ。勇者の隠し上位職業———その名も『シュバリエ』。アーサーに聞いてさ、どうもシュバリエにはこの霧を軽減する効果があるみたいなんだよね」
「へぇ……」
イベント限定効果みたいなものかしらね。私たちが開始してるプライマルクエストが、この霊廟攻略クエストと繋がってる訳だし……あれ？
「なら私も同じことできるんじゃない？」
「あぁ、ヘルメスもプライマルクエスト後編で新しい職業を修得したって言ってたし、カローナちゃんもそうなんじゃないかと……」
「いや、私の職業は攻撃で”妖気”を溜めないと使えないはずで……あれ？ できる……」
「お、やっぱりカローナちゃんも新しい職業手に入れてるんだね。使えそう？」
「ちょっと待ってて」
なんで？
妖気は一回のバトル中限定で、溜めておくことはできないはずなんだけど……霧隠れの霊廟に妖気が溢れてる？
「まぁイベントってことで何でもいいか。えっと……”黒く、闇く、深く、蒼窮覆う黒の迦楼羅天”———」
———『鴉天狗』、起動。
直後、妖気によって象られた黒翼が身体から溢れ、私を覆い隠した。
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