表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
プロローグ ~V配信者、かの地に降り立つ~
7/291

ボス戦(後半)

評価・ブックマークありがとうございます!

お陰さまで日間ランキングが徐々に上がっております(_ _)


「ちょっ、素殴りとかアリなのぉっ!?」


「オォォォォォォッ!」


ドレッド・タイタンの巨体から放たれた容赦のない振り降ろし(チョッピングライト)が、私の頭上に迫り———



「【スカッフル】っ!」



———刹那、私の足から黄色のエフェクトが弾け、地面を蹴った私は一瞬で最高速度に到達してドレッド・タイタンの視界から消える。


ドレッド・タイタンの攻撃はそのまま地面に突き刺さる。あまりの威力に地面が震え、砂埃と石の破片が飛び散り、爆発でも起こしたかのような惨状だ。


が、当たらなければどうと言うこともない。

当たらなければ、ね……マジ危ねぇ……。【スカッフル】を獲得できてて良かった……。



【スカッフル】

効果時間中、AGIに+20%の補正。さらにハンドリング性能が上昇し、効果時間中に攻撃を回避する度にAGIに+5%の補正(最大25%まで)。


【スカッフル】はレベルアップによって習得したダンサー系アビリティである。AGIを大きく上昇できるだけでもかなりありがたいのに、ハンドリング性能に補正……つまり、発進やブレーキ、方向転換など、ステップに関わる行動が行いやすくなる補正が入るのだ。


これのお陰で、着地した直後の1、2歩目からトップスピードに乗ることができ、ドレッド・タイタンの拳を避けたというわけだ。



ホッと胸を撫で下ろしてる場合じゃないわね。

相手は地面にいる私を殴りに来たせいで、前にめりになっている。つまり、棒の攻撃範囲にわざわざ首を突っ込んできてくれたという訳だ。

この瞬間を逃す術はない。



「もういっちょ!」



再びの【ピアースレイド】を、真上に突き出すように放つ。アビリティエフェクトの赤黒い閃光は、一度目と寸分違わず眉間をピンポイントで打ち抜き、僅かにドレッド・タイタンの首を仰け反らせる。そして……



「ふふ……欠けた(・・・)わね?」



パラパラと私の上から降り注ぐ小さな破片は、ドレッド・タイタンの眉間から。同じ場所に二度の【ピアースレイド】を受けたドレッド・タイタンの体表は、その貫通効果によって限界を迎えていた。



「さすがにこれだけあからさまに『装甲が剥がれましたよ』って演出しといて、そこが弱点じゃないとか無いわよね?」



アネックス・ファンタジアは、細かいところまで病的なまでに拘っているゲームだ。いくら全身を鎧で覆ったとしても、その隙間に攻撃を刺し込まれれば生身へと届いてしまう。


つまり、これほど硬かったドレッド・タイタンも、表面を剥がしてしまえばダメージが通りやすいはず。


ビキニアーマーが最強の装備だとかいう時代は終わったのだ。



「だったら、そこを狙わない手はないわよねっ!」



棒高跳びの要領でドレッド・タイタンの腕に飛び乗った私は、そのまま腕を駆け上がりドレッド・タイタンの顔面へ肉薄。そして魔纒・風を纏った棒術、【空風・打】を眉間に打ち込み、その傷口を広げる。



「オォォォォッ!」


「まだまだぁ!」



【空風・打】の反動で僅かに身体が離れた私へと迫るドレッド・タイタンの拳、これを———



「【流葉】!」



棒で上から押さえつけるように受け流し、攻撃は下へ、私の身体は上へ。身体を捻って威力を殺しながら、トラップされたサッカーボールのように宙に浮いた私は、ドレッド・タイタンの腕に着地すると同時に【アクセルステップ】を起動する。


黄緑色の閃光が弾けた脚が爆発的な推進力を生み、再び私の身体をドレッド・タイタンの顔面へと近づける。



「先駆け2発ぅ!」


「ガッ……!?」



腕の上を走りながらインベントリから取り出した『ゴブリンナイフ』2本を、ドレッド・タイタンの両目に1本ずつ投げつける。攻撃力もなければ耐久値もないナイフだけど、眼球に投げつけられて無視できるものでもない。


間髪入れぬインベントリ操作で取り出したのは『ゴブリンソード』。ゴブリン・ナイトからドロップした、飾り気の無い無骨なショートソードだ。


僅かだが怯んだドレッド・タイタンへ、【アクセルステップ】の勢いのまま飛び込んだ私は、ドレッド・タイタンの眉間へとゴブリンソードを突き入れた。



「グォォォォォォッ!!」


「硬い! けどっ……!」



まるで砂に剣を刺したような感覚。だけど確実に、ゴブリンソードの切っ先はドレッド・タイタンの眉間に食い込んだ。



「おっと」



振るわれた腕を避けて地面へと降り、ドレッド・タイタンを見上げる。ゴブリンソードが刺さっている部分からはおびただしいダメージエフェクトが漏れ、相当なダメージが見てとれた。



「ここまでくればもうこっちのもんでしょ」


「オォォォッ!」


「とっくに攻撃は見切ってるのよ!」



大上段から振り下ろされた大剣を横に移動して避け、【空風・突】をゴブリンソードの石突きへと叩き込む。


振り下ろしから派生する薙ぎ払いをジャンプでかわし、【空風・打】をゴブリンソードへと叩き付けて切っ先をさらに深く押し込む。


着地と同時に横へ回り込み、突進を繰り出そうとしたドレッド・タイタンの視界から消えたことにより突進は不発。


死角から近づき、ドレッド・タイタンの膝を足場に身体を登った私は、至近距離から【空風・突】をゴブリンソードにぶち当てる。



「フフフ……はははははっ!」



次第に深く差し込まれていくゴブリンソード。

それに対して、鈍くなっていくドレッド・タイタンの動き。

そして上がっていく私のテンション。

いつの間にか私の攻撃の方が圧倒的に多くなり、そしてゴブリンソードが根本まで完全に埋まった頃———



『エリアボス: ドレッド・タイタン を討伐しました!』

『プレイヤー名: カローナ が称号 《岩原を踏破せし者》 を獲得!』

『アーレスへの道が開かれた!』



———仰向けに倒れたドレッド・タイタンの巨体が消えていくと同時に、そんなアナウンスが流れるのだった。



          ♢♢♢♢



「ふぅ、何とか勝てたわね」


・お疲れ様!

・まだレベル低いのによくやるわ

・結局ダメージ0なんだよなぁ

・カローナ様強すぎる……



「一応これで【アーレス】の街には行けるようになったのよね? じゃ、今回はこの辺りにして、少し【アーレス】を見てからログアウトしようかと思います! ありがとうございましたー!」


・次回も楽しみにしています!

・お疲れ!

・お疲れさまでした!



カメラを切って、『次元繋ぐ天文鏡』を停止……ふぅ、こんなところね。


次はどんな配信にしようかな?



さらに増えてきた登録者数に若干の恥ずかしさを覚えながらも、足取り軽く第二の街【アーレス】へと歩を進める。新たな街に更なる冒険を期待して———



コメントもお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ