思ったよりやるわね?(超上から目線)
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気を取り直して、と……
対峙する私とロッシュさんとの間に、得も言われぬ緊張感が漂う。方や近衛兵団統一の鎧一式に身を包んで剣を正眼に構え、方や金と黒の絢爛な鎧に身を包んで薙刀を持つ腕をだらりと下げている。
前者がロッシュさん、後者が私である。
他の近衛兵の人達も興味津々といった様子で、私達からある程度距離をおいたところから取り囲んで眺めている。
「遠慮しないで良いからね? というか、本気でやらないとすぐに終わっちゃうわよ」
「もちろんそのつもりです……でなければ、色々と失礼ですからね」
一度大きく深呼吸したロッシュさんは、落ち着いた声色でそう答える。
うんうん、いいぞ。良い感じに集中できているようだ。まだまだ入団したてで浮き足立ってるかと思えば、意外にも堂に入ってる感じがする。
ロッシュさん、武力方面も結構鍛えてたな?
「フゥ……行きますっ!」
そう一言断ったロッシュさんは、次の瞬間には一気に間合いを詰め、剣を袈裟懸けに振り下ろしてくる。
けど───
「それは正直すぎる、わよ!」
「っ……!」
振り下ろされた剣を薙刀の柄で受け、逸らす。ギャリギャリッと音を立てて薙刀の柄の表面をなぞった剣はそのまま地面を叩き、私へは届かない。
対する私は、剣を受け流す勢いを利用して刃を跳ね上げ、ロッシュさんに斬りかかる。
「くっ……!」
「おっ?」
迫る薙刀の刃に対し、ロッシュさんはなんとさらに間合いを詰めてきたのだ。
私の薙刀を肩口で受けつつも、当たった部分は刃ではないから鎧に弾かれてダメージはない。
むしろこのままタックルを受けそうな私の方がダメージを受けそうだ。
なるほどなるほど……ロッシュさん、結構強いのでは?
捻りがないから剣筋が読まれやすいけど、薙刀の柄の部分で受けるという判断の早さと、格上相手に躊躇いなく踏み込む勇気も併せ持っている。
『信用できるから』と推薦したけど、意外と良い拾い物だったのでは……?
「なんてね」
「はっ……!?」
薙刀を受けつつタックルしに来たロッシュさんの目の前で、私の姿が掻き消える。まぁ、単純に全力で横に飛んだだけだけど。
私が攻められていながら上から目線でロッシュさんを評価してたのも、トップスピードが違いすぎるからだ。
「見てから反応よゆーっ!」
「なっ、はっ!?」
【変転】起動! 【バニシング・ステップ】!
横っ飛びした私を追ってロッシュさんが視線を動かすのと同時、その場にデコイを残してさらに回り込む。
ロッシュさんの視線移動よりも速く───黒紫の軌跡を残して、私は駆け抜ける!
「くっ……おぉぉ!」
闇雲に振られるロッシュさんの剣を潜って肉薄、ここで一発。
「ぐぅっ!」
薙刀の柄による一撃とはいえ、鎧の隙間を狙っての一発だ。結構痛かったのだろう、ロッシュさんの口から苦悶の声が漏れる。
が、その一撃で捉えられていなかった私の位置を把握したのだろう。私の追撃の直前、カウンターアビリティの【ラディエルカウンター】を差し込んできた。
あぁ、なるほど……そういう対応もできちゃうのね。と考えた瞬間には、すでに私は脚を止め、範囲攻撃アビリティの【ウェーブ・スラッシュ】を構えている。
「さぁて───」
「くっ、そっ……!」
「そう来るよね……!」
範囲攻撃に対し、カウンターアビリティは無力。それをよく理解していたロッシュさんは、崩れた体勢を無理やり立て直して腕を振り回すように斬りかかる。
発動前にチャージが必要な範囲攻撃アビリティは、発動前に潰す。これ鉄則ね。
考え得る限り、最高の対応だ。
私でなければ、ね。
「はっ……!?」
何度目かも分からないロッシュさんの困惑の声が響く。そりゃそうだ。かろうじて放った剣戟が、私の身体を抵抗もなく通り抜けたら誰だって驚く。
なんてことはない。
ただ、ロッシュさんがカウンターアビリティをキャンセルするのとほぼ同時に私も【ウェーブ・スラッシュ】をキャンセルし、その場にデコイを残しておいただけだ。
そしてその困惑の隙が、致命傷。
「これで終わり、かな?」
「ま、参りました……」
次の瞬間には、インベントリから取り出した『ヴィルトゥオーソ』の刃をロッシュさんの背後から首に当て、そう告げる。
ロッシュさんは混乱したまま、かろうじて降参の言葉を紡ぐこととなった。
「いやぁ……アビリティの切り替えとか精密な操作とか、やっぱVRチェアはレベチかも……」
「えっ……なんですか……?」
「あっ、ごめんね、こっちの話。……ロッシュさん、思ったよりやるわね」
「そ、そうでしょうか……訳も分からないうちに首に刃を突き付けられていましたけど……」
武器をしまい、ロッシュさんに手を差しのべて身体を起こすと、ロッシュさんは困惑気味ながらも立ち上がる。
「いやいや、一撃受けた後の対応はすごく良かったと思うわよ? ね、ライカンさん!」
「いきなりこちらに振らなくても……まぁ、はい。まだまだ雑ですが、悪くはなかったです」
「あ、ありがとうございます!」
「ライカンさん、もうちょっと誉めてあげてもいいのに……」
まぁライカンさんからすればみんな『まだまだ』か。私でもアビリティを使わせられなかったレベルだからねぇ……。
ロッシュさん本人はそれでも嬉しそうだし、それならいっか。
「ほれ、次の相手は誰じゃ?」
「「「「「!?」」」」」
何気なく放たれたティターニアちゃんの一言に、私と近衛兵団の皆さんの間に衝撃が走る……!
「えっ、次って……別にちょっとお試しだからこの一戦だけで───」
「何を言うておる。私がわざわざここまで来たのじゃ。近衛兵達の実力を測る良い機会じゃし、もっと面白い試合を見なければもったいないじゃろう」
「いやそれただの我が儘───」
「では命令じゃ。そなた達全員、少なくとも一回はカローナと試合をし、私にその実力を見せてみよ」
「「「「「はっ……!」」」」」
ひぃぃぃっ! 勝手に話が進んでくぅっ!
ちょっとしたお試しのつもりだったのに、この人数と戦ったらもうガッツリ対戦ゲー潜ってるのと一緒なのよ!
助けて隼翔ぉっ!
「まぁ、自業自得だよね……」
私の視線に気づいたらしいファルコンが、小声でそんなことを呟く。『やれやれ』感をだすな、『やれやれ』感を!
あー、もうっ!
分かったわよ! 全員きっちり相手してあげるから、覚悟してかかってきなさい!
お読みくださってありがとうございます。




