来ちゃった♪
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というわけで、早速アネファンにログイン。
今回はVRチェアの性能チェックのため、久々に配信でも素材集めでもないゲームプレイである。
と言っても、ただ性能チェックして終わりってのもつまらないし───
「やっほー、ファルコン!」
「どうも、お姉ちゃん」
私が手を振る相手は、弟の隼翔改め『ファルコン』である。彼は何というか……『旅の吟遊詩人』みたいな雰囲気のある全身装備に身を包んだイケメンだ。帽子に飾られたフクロウの羽根がお洒落だ。
まぁ確かにイケメンだけど……弟っていう先入観があるからか、あんまりトキメかないというね……。
「なんだかんだこうやって私とファルコンだけでプレイするのって初めてじゃない?」
「本当にね……初めてすぐの時に『一緒にやる』って言ってたのに」
「あはは……配信とかプライマルの発生とかいろいろあって、結局流れちゃったからねぇ」
あの時は『隼翔がウィザードだから、隼翔が後衛で私が前衛で』って話をしてたのにね……今じゃ私は『酒呑童子』、ファルコンは『コンサートマスター』だからね……。
まぁでも、ファルコンレベルの音楽バフを一人で受けられると思うとヤバいよね?
「それでお姉ちゃん、VRチェアの性能はどうなの?」
「今のところは普通よ? と言うかまだ喋ってしかいないんだし、思考入力速度が気になるほどのプレイしてないでしょ」
「まぁそれもそうか……じゃ、とりあえず何か討伐しに行かないとね?」
「てっことでいろいろ考えてるんだけど……何行く? 金蝦蛄とか、あとまだ私が倒してない大ムカデとか」
金蝦蛄は『オリハルダイン・オラトリア』、大ムカデは『マキシマムヘヴィ・センチピード』だ。どちらもアネファン内最強レベルのモンスターだし、VRチェアの性能テストにはちょうどいいかも。
「あれ、女王蜂じゃないんだ?」
「うーん……確かに、私が女王蜂を倒すならファルコンのバフが必須だとは思ってるんだけど……」
女王蜂って普通に頭も良いからさ、ファルコンがバフの発生源だと分かるとすぐに狙われる可能性があるんだよね。女王蜂を相手に誰かを守りながら戦うなんて、私でも自信がない。
「……一応、女王蜂を倒すための戦法を色々と考えてるんだよね。正攻法じゃまず無理だから、奇襲的な戦法を」
「へぇ……奇襲なんてお姉ちゃんにしては珍しい」
「いやホントに、女王蜂の眷属でさえ私含む配信者5人がかりでやっとだったからね? まともに戦ったら死ぬって」
「えぇ……普段あれだけ何も考えずに突っ込むのに……」
「皆脳筋て言うけどさぁ! 別に何も考えずに特攻してるわけじゃないからね!?」
「本当かなぁ……」
「まったく、もっと姉を敬いなさいよね」
「はいはい……で、実際のところ金蝦蛄にしても大ムカデにしても、僕を守りながらだといくらお姉ちゃんでもキツくない?」
「あー……【恋人】使ったら意味ないし、だからと言って普通に戦ったら———」
「大ムカデに潰されるか、蟹に轢かれるかだね」
「じゃ却下か……」
うーん……せっかく隼翔とゲームできる機会だし色々と攻略したいところだけど、完全後衛職のファルコンを前衛一人で連れ回すのはリスキーか。もっと大人数ならともかく……
となると、1対1が約束されていて、なおかつVRチェアの性能を存分に発揮できる戦いが───
「あっ」
「何かあった?」
「様子見がてら、こんなのはどうかなって───」
私はふと思いついたことをファルコンに耳打ちする。ファルコンは驚いたように目を見開き、『いいのかなぁ……』と小声で呟く。
ま、大丈夫大丈夫!
私なら顔パスだしね!
♢♢♢♢
「やっほー♪」
「「「「「っ!?」」」」」
「…………」
気の抜けたような私の声に、その場にいた大勢の男性NPCは揃って驚きの表情を浮かべ、ファルコンはジトッとした目を私に向けてくる。
私とファルコンがやってきたのは、妖精女王ラ・ティターニア様が誇る近衛兵男の訓練場だ。ティターニアちゃんの専属秘書をやっていて、さらには辺境伯当主の私は当然のように顔パスで入場可能だった。
VRチェアの性能テストにちょうどいい場所を探していて、思いついたのがここだったのだ。それなりの実力者が集まっているし、例のお兄さま───ロッシュ・ドゥ・ヴァロワさんの様子も見ておきたかったしね。
……別に揶揄いに来たわけじゃないからね?
「えっ、あっ……カ、カローナ様……!?」
「あっ、お兄さま! えへへ……来ちゃった♪」
「「「「「なっ……!?」」」」」
「ひっ……!」
早速発見したロッシュさんへにこやかに手を振ると、途端に周囲の近衛兵たちの視線がロッシュさんへと集中する。まるで、『お前……女がいたのか?』とでも言いたげな表情で。
……彼に対する今後の訓練が理不尽に激しくならないことを祈ろう。
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