100万人記念特別コラボ配信! 14
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「後ろはお任せください! 私が近づけさせません!」
そんなことを言いながら、聖水(意味深)を散らしまくるレリーシャちゃん。さすがは聖水と言うべきか、直接かけられたゾンビはもちろん、地面に落ちた聖水にも触れられないのか、ゾンビ達は通路へと脚を踏み入れては引くのを繰り返している。
後ろは大丈夫そうね。
問題は……
「前からもめっちゃ来るんだけどぉっ!」
・『アル』忘れてて草
・やっぱあの口調ってキャラ付けだったんだな
・これだけ狭いとずっとタイマンだもんなぁ
・まぁ、可愛い女の子を守って死ぬなら本望だろ
憂炎さんから泣き言のような声が上がり、同時にゾンビと戦っているらしい戦闘音が響く。
ごめんね……殿を務めているレリーシャさんを除けば、私は薙刀が使えないしラビリちゃんは大鎌だし、セレスさんもこんな狭い場所で魔法をぶっ放すわけにはいかないし……。
憂炎さんが適任なのよ。
「ひぃぃっ! 近いぴょん! 憂炎さん早く処理してほしいぴょん!
「ちょっ、そんなにくっつくなアル! 色々当たって———いやっ、動きにくいアル!」
「イチャイチャしてんじゃねぇですわ!」
「憂炎さん何鼻の下伸ばしてるのよ!」
「これは仕方がないアルよ! ラビリちゃんも魅力的な女性アル!」
「いいから! 黙って戦うぴょん!」
「イ、イエスマム……!」
・なんかユーエンがやたらいい思いしてない?
・ゾンビを怖がるラビリちゃん可愛いけど……なんでユーエンに……!
・そもそも男女1:4で配信してる時点でなぁ
・複数の女に攻められる浮気男みたいな構図だな
・俺も怖がるラビリちゃんに後ろから抱き着かれてぇ……
・むしろ抱きしめてあげたい
・なんかストレートな変態が増えてきたな?
憂炎さんが物理系職業だから、必然的に相手との距離が近くなる。そのすぐ後ろにいるラビリちゃんも当然ゾンビとの距離が近くなるわけで……
そう言えばラビリちゃん、ゾンビが出現するようになってからあんまり戦闘に参加してなかったけど……もしかしてこういうの苦手?
素でやってるなら可愛い娘ね本当……。
憂炎さん、役得だなぁ。
「…………」
ラビリちゃんに頼りにされて、なんだかんだ言いながらニヤけている憂炎さんを見てたらなんだかイラっとしたので、『ドレッシング・エフェクター』を弾いて『魔弾の射手』シリーズに変更。
後ろからの狙撃でサポートすることにする。
「危っ……!? カローナちゃん!? 掠ったアルよ!?」
「大丈夫、掠ってない掠ってない」
「何が大丈夫アルか!?」
「来てるぴょん! 前向いてぇっ!!」
「んぐぇっ!? 首引っ張るなアル……!」
「援護するわね!」(連射しながら)
「ひぃぃぃぃっ!!」
・なんか可哀想になってきた
・意外と尻にしかれるタイプだったんだな……
・女の子達が強いだけなのでは
・適当に撃ってるようで、ユーエンには掠りもせずに正確にゾンビを撃ち抜いてるのすごいな
・カローナちゃん、まさか銃撃つの慣れてる……?
・あっ、そっち側の人でしたか……
「そんなわけないでしょうが」
一応、カサブランカさんから聞いて銃使い系職業『ガンスリンガー』は取得したし、装備による射撃系攻撃への補正と視覚強化系アビリティがあれば、あまり経験がない武器もそれなりに形になる。
……ミューロンちゃんのところでかなり練習したもんね。
「カローナちゃん! この道の先はどうなってるアルか!?」
「ゾンビの声がうるさくて反響定位が使えないわ! とにかく前に進んで!」
「仕方ないアル……!」
なんだかんだ言いつつ、先陣を切って引っ張てくれる憂炎さんはやっぱり良い人だ。
♢♢♢♢
流石に憂炎さんにずっと戦闘を任せるのも悪いから、私と交代しながら道を突き進むことに。
そんな風に狭い道を進むことしばらく。
「なんだか雰囲気が変わって来たアルな」
「そうね……」
「もしかして、当たりを引いたぴょん?」
徐々にゾンビの数が減り、石造りだった通路は次第に金属で舗装された空間に代わっていった。
うーん……やっぱり、元々あった遺跡を改造して、何かに利用している———という考えで合ってそうね……。
わざわざ外側を偽装してるぐらいだし、重要な施設には違いない。そしてその中心に近づいているということは……ラビリちゃんの言う通り『当たり』なのかもしれない。
そして———
「おっ、通路を抜けたあるね」
「これはまた……どこか見覚えがありますわね」
セレスさんのアイテムによって照らされたその空間は広く、周囲を取り囲むようによく分からない機械がずらりと並んでいる。
セレスさんが『見覚えがある』と言ったのは、その景色がどう見ても【ディア・キャロル】の内部と似ていたからだ。
ほとんどが割れているから全体像は見えないけど、人が一人入れるぐらいに大きなガラスの筒がいくつもある。そこに繋がる何本もの管を辿れば、その先は中央にある大きく複雑な機械に繋がっている。
今は動いていないであろうその機械の中央部分の台座には、古ぼけた一冊の本と淡い光を放つ純白の羽根が一枚、意味ありげに置かれていた。
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