100万人記念特別コラボ配信! 11
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「ねぇセレスさん」
「カローナ様、言いたいことは分かりますわ」
遺跡の探索を開始してしばらく。遺跡の内部を調査していた私とセレスさんは、ある考えに行き着いた。
いや、遺跡の探索のしかたとか全然分かってないから、とりあえず気になった箇所を確認しながら進むだけなんだけど……。
「カローナちゃん、何か気づいたアルか?」
「一応私とセレスさんは思い至ったことはあるけど……逆に憂炎さんは何か気がつきますか?」
「いーや、ただ古い遺跡だなってだけアルな」
「モンスターが出現していないところが気になりますね」
「えっとえっと、壁の不思議な模様が気になるぴょん!」
「ですよねぇ」
・何か言おうとしてアワアワしてるラビリちゃん可愛い
・確かにモンスターが出てきてないのは気になったな
・基本脳筋の集まりなメンバーだからおとなしい映像だと物足りない
・あぁ、視聴者まで脳筋に染まってる……
・逆にカローナ様とセレスちゃんは何か気づいてるんか
・カローナ様、もっと喋ってくれ……!
「あっ、えっと……一応予想は立ってますけど、確信が持てないので」
「それに、本当にそうだった時に皆様の反応が楽しみですしね」
余計に気になる言い方してごめんね!
でもインパクトは大事なの!
「でもセレスさん、そうだとしたらかなり大変なギミックがあると思うんだけどどうしようかしら?」
「無理に私達だけでクリアしようとしなくても良いのでは? 視聴者の皆様に助けを求めても良いのですから」
「何の話をしているのか気になるぴょん!」
「カローナちゃん、道案内お願いアル!」
「はいはーい───んっ?」
鈴を鳴らし、その音に耳を傾ける。私の耳に届いたその音は甲高く、僅かなうねりを含んでいるようで……
「どうしたアルか?」
「多分隠し通路ね、これ。しかも多分広い空間がありそうなのよ」
脳内3Dマップと照らし合わせると、私達が探索してきた場所とは層が異なる地下に続いていることが分かる。
中央に近い部分だから、そこに広い空間があると考えて良いだろう。
「いよいよアルか。入り口は」
「この向こう側」
私は壁の方へと歩みを進め、コンッと壁を叩く。音が響くからそれほど壁は厚くないとは思うけど……
「ま、壊してから考えようかな」
「では私から」
「その次は俺アルね」
・そういうとこなのよ
・殴れば何でも解決すると思ってそう
・即応するレリーシャちゃんも大概やぞ
私の言葉にすぐに反応し、左の手のひらに右の拳を打ち付けながら壁の前に立ったのはレリーシャさんだった。
誰も『遺跡を壊すな』と言わないどころか、壁をぶっ叩く順番待ちをしている辺り、やっぱり私と気が合いそうね!
さてさて、『拳聖』レリーシャさんは───
「【ジョルト・ブラスター】!」
ズゴォォォォォォォンッ!
清楚な修道服に身を包んだシスターから繰り出された凄まじい威力の拳が、アビリティエフェクトを纏いながら壁に叩きつけられる。
炸裂音と共に部屋全体が揺れ、パラパラと小さな石の欠片が降り注ぐ。
さ、さすが拳聖……スターストライプさんほどではないにせよ、物理火力は全プレイヤーの中でもトップレベルじゃない?
というか、ボクシングを学んだ今の私だから分かる。壁を殴った瞬間のレリーシャさん、足運びも腰の入り方も完璧だった。
レリーシャさん、さてはかなり殴り慣れてるな? 特に人を。
「破れませんか。意外と硬いですよ」
「次は俺の番アルな。"流雲拳"───」
腰を落とし、中段に構えて拳を握る憂炎さんに、雲のようなエフェクトが纏わりつく。
雲はゆるりと流れて拳に集まり───
「【天津星砕】!」
ボッ! と雲を裂き、憂炎さんの拳が壁に叩きつけられる。
レリーシャさんの一撃とは異なり、衝撃が一点に集中したことで周囲に響くことなく100%の威力が叩き込まれるも、それでも壁はまだ健在だった。
「これでも崩れないアルか?」
「ただの構造物というわけではないようですね……」
「ラビリちゃんもやっとく?」
「私は対物アビリティ持ってないのでパスするぴょん!」
「オッケー、じゃあ私がやるわ!」
高威力物理攻撃なら当然───
「『ゴールデンアヴィス』シリーズに決まってるわよね!」
『ドレッシング・エフェクター』を弾いた私は、全身を黄金の鎧に包み込む。重装兵にも劣らないゴツいシルエットのその鎧は、オレンジの光を宿して怪しく輝く。
【次元的機動】、【セカンドギア】、【アトモスブレイカー】、【アイドリング・ルーティーン】、【ファイナル・ゼーレ】起動!
最短最速で叩き込め───
「【ドゥルガー・スマッシュ!】」
ドドドドドドドドドドドッ!
一撃で12ヒットする打撃アビリティが、破壊の権化たるシャコパンチの威力を纏って壁に叩き込まれる。
激しい砂煙と破片が飛び散る中、反動で吹き飛んだ私は空中で体勢を整えて着地しながら壁の方へと目をやり───
「うそっ、今のでも破れてない!? というか凹んでる!?」
「どうやら表面は岩でできていても、中身は金属だったようですね。私にお任せあれ」
吹っ飛んだ私の代わりに前に出たのはセレスさん。かなりバフを盛ってるのか彼女の身体を様々なエフェクトが包んでおり、その杖の先が凹んだ壁の方へと向けられる。
「【アトミック・マントラ】!」
放たれたのはマグマのように赤熱した超高温の柱。レリーシャさん、憂炎さん、私の三人の攻撃で崩れ、剥き出しになった金属部分へと直撃し、容赦なく融かしていく。
「おぉ、すごい威力アルね」
「この威力の魔法を維持するなんて、相当MPを消費してますよね……」
「さすがトップランカーぴょん」
・一人ずつ順番にアビリティ撃ってくのなんか草
・お笑い芸人のそれなのよ
・昔こんな感じのコント見たなぁ
「これでトドメ、ですわっ!」
セレスさんの言葉に反応するように、止まる直前にダメ押しとばかりに威力を上げた【アトミック・マントラ】によって、壁がドロドロと融け落ちる。
人が通れるほどに空いたその穴の奥には、先の見えない暗闇が───
「っ!?」
「ヒッ……!」
「これはっ……また邪悪な……」
「……私、やっちゃいましたか?」
「いよいよ山場が来たアルね」
壁に空いたその穴から溢れ出た障気は、まるで随分と長い間怨みを燻らせていたかのように邪悪な気配を纏っていた。
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