表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第七章 ~天地貫く太古の慟哭~
297/301

100万人記念特別コラボ配信! 10

評価・ブックマークありがとうございます!


「不思議な雰囲気のする遺跡ですわね」


「そうね……」


 ・急に世界変わったな

 ・恐竜の世界にこれがある違和感よ

 ・こんな場所もあるんやなぁ



 切り出された岩を積み重ねてできた遺跡に一歩踏み込んだ途端、まるでその内部だけ外と遮断されているかのように静かで、ひんやりとした空気が頬を撫でる。


 初めに私達が入ったのは大広間のような場所で、入り口から差し込む僅かな光でぼんやりと照らされるその部屋は、正面奥に祭壇のような造形物が見える。



 コメント欄を見て分かる通り、視聴者さんにこの遺跡を知っている人はいない様子。というか、新マップ自体がまだまだ攻略が進んでいない場所なのだ。


 戦闘力の水準が高いとか色々と原因はあるけど、その主な原因は『新マップに行くための手段が少ない』ということだ。


 『アーカイブ』が所持しているヘリでシャトルバスのようにプレイヤーを送ってくれているものの、たった一台に乗せられる人数などたかが知れている。


 中には鳥獣系のモンスターを利用して浮島にたどり着く猛者もいるらしいけど、浮島の上空をプテラノドンが飛んでいることを考えると……どんな未来が待っているかはお察しだ。



 そんなわけで、ヴェロキラプトルやティラノサウルスを知っている視聴者はいたとしても、この遺跡を知っている視聴者さんはいない様子。


 配信者としては最高の状況だぜ!



「明かりを点けますわね」



 そう呟いたセレスさんはインベントリから何らかのアイテムを取り出し、使用すると……



「手を塞がなくても周りを照らせるのは便利アルね」


「えぇ、攻略メインでやってると、こういったアイテムも必要になってくるのですわ」



 セレスさんの頭上にふわりと浮かんだ球体は強い光を放ち、周囲を明るく照らし始める。どうやら、一定時間自動で周囲を照らしてくれるアイテムのようだ。


 こういう便利アイテムもあるのね……私のインベントリ、ポーションか武器しか入ってないんだよなぁ。



「さて、ようやく進む準備ができたアルが……」


「どう見ても迷う系のダンジョンですわね」



 呟くレリーシャさんの視線の先には、祭壇のさらに奥……ぽっかりと暗闇を覗かせる、奥へと続く入り口が口を開けていた。先が見えないほど深いところを見ると、この遺跡はかなり奥まで続いているのだろう。



「どなたかマッピングが得意な方はいまして?」


「やったことはありませんね」


「とりあえず真っすぐ行けばいいでしょ!」


「いつも他のメンバーに任せてたアルからなぁ……」


「考えたこともなかったぴょん!」


「まぁ、分かっていましたわ……」


 ・揃いも揃って脳筋で草

 ・全員が戦闘しか考えてねぇww

 ・全員メイン火力級だからね、そりゃそんな雑事やらないよね……

 ・とりあえず突撃すればいいと考えてるなこいつらww

 ・ある意味方向性一致しててやり易そうなメンバーだな



「ん~……じゃあ私が何とかするわ」


「カローナ様、マッピングもできるのです?」


「やったこと無いから正しいやり方とか全然分からないけど、まぁ何とかなるんじゃない?」


「でも難しいですよ? 通った道を方角と一緒に記録したり、トラップの発見とか解除とか……」


「何か便利なアビリティがあるぴょん?」


「ううん、これをこうして……」



 私は首に下げた鈴を鳴らす。

 遺跡の中は閉鎖空間だからか、澄んだ音が何処までも響いていく。その音に私は耳を澄ませ───


 その音が頭の中に響くほどに、私の頭の中にはまるで3Dモデルのように立体的な地図が描かれていく。


 1回では不十分だったけど、2回、3回と鈴を鳴らすほどに地図は鮮明になっていき、道の有無はもちろん道の幅も奥行きも……何なら音の響き具合で壁の向こうの隠し通路の有無もなんとなく分かってしまう。



「って感じで反響定位エコーロケーションで内部の形状調べて、後は聴いた通りに頭の中に立体図を描くだけだし」


「AIか何かですか?」


「アビリティかと思ったらただの超能力でビックリぴょん」


 ・立体図を描くだけ←?

 ・エコーロケーションで聴いた通り←?

 ・エコーロケーションてそんな詳しく聞こえるんだっけ……

 ・反射した音によって材質も分かるらしいぞ

 ・それってイルカの話では?

 ・カローナ様はイルカだった……?

 ・どちらにせよ人間じゃない説が濃厚



「でも結構便利なのよ? わざわざ目で見なくても道が分かるし」


「そりゃ便利ですわよ……そんなことができる人間が居ないだけで」


「OKグー〇ル! 最深部までの道案内をお願いアル!」


「誰がグー〇ルよ!」



 なんてくだらないやり取りも、視聴者さんには意外と高評価だったようで。有名な配信者が複数集まってわいわいやっている姿に、コメント欄も凄まじい勢いで流れていく。


 気を取り直して、と……。



「とりあえずこっちに道が続いてそうね。先行するからついてきて」



 私は先頭に立って、遺跡の奥へと一歩を踏み出した。



お読みくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ