閑話 出校日ってさぁ……
評価・ブックマークありがとうございます!
えー、朝の更新でなぜか『完結済み』になっていて、ご指摘をいただきました。
まだまだ全然終わらないので、その証明のためにもう一話投下します。
これからもよろしくお願いします!
出校日ってさ、要らないよね?
折角40日ぐらいある休みなのにわざわざそれを分断してくるなんて、学生へのいじめだよ絶対。
いや、課題の進み具合がどうだとか生活リズムがどうだとかっていうのが気になるのは分かるけど……休日は休日でそれなりの生活リズムを構築してる訳で、いきなり学校のリズムに合わせるのが云々かんぬん…………。
と色々言い訳してるけど、ぶっちゃけゲームのやりすぎで眠いんだよね……。PKerとの戦闘が多いし、堕龍に叩き潰されるし、それでイライラして夜遅くまでプレイしてるし……。
ふぁっ……おっと、欠伸が……。
「あー、かなっちが欠伸なんて珍しいね?」
「ぁっ、うららちゃん。見られてたのね、恥ずかしい……」
私の欠伸を見逃さず、微笑ましいものでも見るかのように話しかけてきたのは、クラスメイトの『春野 うらら』だ。彼女を一言で表すなら、『コミュ力お化けギャル』だろう。
「かなっち勉強でもしてた? 学年1位なのに勉強の必要ある?」
「勉強じゃなくて、久しぶりにゲームにハマっちゃって、ついつい寝るのが遅くなっただけよ?」
「えっ!? かなっちもゲームとかやるの!?」
「まぁ人並みにはね?」
嘘です。廃ゲーマーですごめんなさい。何なら配信までしちゃってる人です。
「へー、かなっち頭いいからゲームとかやらないかと思ってた。ねぇねぇ、なんてゲーム?」
「『アネックス・ファンタジア』、知ってるでしょ?」
「えっ、かなっちも『アネックス・ファンタジア』やってるの!?」
「「「「っ!!」」」」
カナコとうららの会話に聞き耳を立てていた周囲の男達に緊張が走る———!
「最近始めたばっかりだけどね。と言うか、『も』?」
「私もやってるし! 結構やってる人多いよ? おーい、まりっぴ! メグメグ!」
「なーにうらら、またカナちゃんにウザ絡みしてんの?」
「カナちゃんと一緒にいたらあんたの性格の悪さが際立つよ?」
うららちゃんに呼ばれて来たのは、彼女のギャル仲間の『雛岸 真梨亜』と『日廻 恵美』だ。
うららちゃんも含めて三人ともすごい美人なうえ、私のようなオタクにも優しい、伝説の『オタクに優しいギャル』というやつだ。
「そんなんじゃねーし! それより聞いて聞いて! かなっちも『アネックス・ファンタジア』やってるって!」
「へー、カナちゃんもやってるんだ!」
「ねぇねぇ、なら私らとフレンド登録しようよ! 私らもやってるしさ!」
「いいでしょ、かなっち? てか、今レベルどれぐらい? 始めたばっかって言ってたけど」
「レベルはまだ30もいってないぐらいよ? 二つ目の街も出てないしね」
「じゃあまだまだ初心者さんなんだねー」
「全然いいよぉ、うちら一応50は余裕で越えてるし? カナちゃんの力になると思うよ?」
「それよりさ、良ければ俺が加奈子さん協力するよ?」
おっと、急に男子が入ってきたぞ?
周りを見てみると、男子達の群がチラチラとこちらを見ながら、勇者を見たかのような眼差しを、会話に入ってきた男子……『山田 祐哉』に向けている。
私が『アネックス・ファンタジア』をやってるって言った時から、ずっと会話に入るタイミングを窺ってたな……?
「ちょっと、祐哉だっけ? 横入り止めてくんない?」
「聞くと君らはまだせいぜいレベル50ぐらいだろう? 俺はすでに70越えてるし、レアクエストも何個も出してる。どっちが力になるかは明白だろ? 加奈子さんもプレイするなら上級者と一緒がいいだろ?」
「はぁ? あんたアネファン通してかなっちに近付きたいだけでしょ」
「下心丸見えなのよ」
「うるせぇ! 決めるのは加奈子さんだろ! どうかな、悪くないだろ?」
「え、嫌だけど?」
「 」
「プッ……言葉失ってて草。即玉砕しててマジうける(笑)」
「やっぱりむさ苦しい男どもより、うちらと……」
「ありがたい申し出だけど、攻略は自力でやりたいな~って……ぁっ、フレンド登録が嫌なわけじゃないけどね?」
直前まで即振られた祐哉を笑ってたのに、『自力でやりたい』って言った瞬間、何でそんな捨てられた子犬みたいな目になるかな……。めっちゃ焦ったじゃん。
「あー、ビックリした。うちらまでフラれたかと思った」
「まぁでもそうだよね。キャリーとかなしで自分で攻略するのもゲームの醍醐味だしね?」
「それよりカナちゃんがアネファンにハマってるってのが分かっただけ良くない? 会話の幅が広がるってゆーか、カナちゃんと仲良くなりたいし?」
「もうずっと前から友達だと思ってたけど」
「「「っ!」」」
「えっ、何?」
「そうだよね! 友達だもんね!」
「ちょっ、んむっ……!」
何が琴線に触れたのか、破顔したうららちゃんに思いっきり抱きつかれた。
ちょっ、大きっ……溺れっ……。
「そういうことサラッと言えちゃうあたり、カナちゃんってほんとカナちゃん」
「さすカナ?」
「よーしよしよしよし……」
「ぷはっ! 犬じゃないんだけど!? 周りが見てるし!」
「あっはっはっ、可愛くてつい!」
この学校は普通高校だし、クラスの半分は男子だ。今のこの百合百合しい光景も見られてる訳で……案の定、若干前のめりになった男子達の視線を感じる。
「あっ、そうそう。アネファンと言えばさ、クウ様って知ってる?」
「ブッ! ゴホッゴホッ!」
「えっ、ちょっ、今のどこかに笑う場所あった?」
「ごめっ、ちょっとむせただけ……」
知ってるも何も、昨日の夜一緒にプレイしてたんだけど。変な意味ではなく。そんなにタイムリーな話題が出てきたら動揺しちゃうじゃん。しかも『様』って……マジか。
「クウ様っていうプロゲーマーがいてね? なんと! プライマルクエストを進行させたんだって! すごくない!?」
「え、えぇ、そうね……」
「えー、かなっち反応薄くない?」
「まぁ、カナちゃんはアネファン始めたばっかりだし? クウ様とかプライマルクエストとか言われてもピンと来てないんじゃない?」
「あー、確かに。カナちゃんごめんね?」
「ううん、全然謝ることじゃないわよ」
「あっ、チャイム鳴っちゃった」
「話したいことまだめっちゃあるからさ、次の放課も話そうね!」
「えぇ、色々教えてね?」
「りょうかーい! ぁっ、ヤッバ。せんせー、課題ロッカーに置いてあるんで取ってきまーす!」
ギャルのエネルギーってすごい。最初から最後までずっと押されてたわ。
……クウさんや、あんた女子高生にも人気出てるよ。悲願達成できて良かったね……。
あいつがモテてると考えるとなんか腹立つなぁ。
次回から新しい章に突入します。
ぜひお楽しみください!




