100万人記念特別コラボ配信! 2
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「それにしても、見事に前衛ばかり集まりましたわね」
紹介も一通り済んだところで放たれたセレスさんの第一声がそれだった。
私はもちろん、実は他の皆も前衛職だったりするのだ。見た目は完全に後衛職のレリーシャさんでさえ。
バランスは悪いけど、実力でカバーできそうなメンバーだし大丈夫でしょ!
「というか、ラビリちゃんも前衛なんだ……って、見た感じスピード型っぽいしそれもそうか」
「そうだぴょん! けど、最速のカローナさんがいるのでアイデンティティ死んでるぴょん……」
「あはは、なんかごめん……」
「さて、皆様準備はよろしくって? 今回の配信の趣旨を説明しますわよ!」
セレスさんの一言に、彼女に注目が集まる。今回の企画はセレスさんが考えてくれているということで、私は何も知らないままここに居るのだ。
「今回私達が目指すのは、ズバリあの空に浮いている『浮島』ですわ!」
『浮島』といえば、あの堕龍を倒したことによって追加された新マップだ。
何だかんだで後回しにしてたから、未知のマップをこのメンバーで攻略できるのはありがたい。
「実は、この場に居る全員はまだ浮島の探索を行っていないのです。全員初見の新マップ攻略、とても盛り上がると思いませんか?」
・それは楽しそう
・確かに、憂炎もレリーシャちゃんも新マップ行ってなかったな
・カローナ様は寄り道ばっかりしてたし
・配信者5人で初見攻略とか楽しみすぎる……!
「セレスさんもまだ浮島行ってなかったのね?」
「はい! カローナ様と攻略できれば楽しいかと思いまして♪︎」
子犬のような笑顔を見せるセレスさん、可愛すぎか……!
「そう言うことなら大賛成よ! これだけのメンバーが居るなら心強いですし!」
「俺はカローナちゃんの戦いが間近で見られるのが楽しみアル」
「私も! 短期間で登録者100万人を突破したカローナさんを参考にさせてほしいぴょん!」
「そうと決まれば早速向かいましょう! ジョセフ様に頼んで、特別にヘリを出してもらえることになっていますわ!」
セレスさんがそう宣言すると、ナイスなタイミングでヘリがやってきた。私達の近くに着陸したそれに、セレスさんは私達を先導して向かっていく。
さぁて……最近素材集めばっかりやってたし、今回は久々の自由度の高い配信だ。
憂炎さんもレリーシャさんも、私より登録者数の多い配信者だし、せめて2人をアッと驚かせてやるぞ!
♢♢♢♢
「そういえば、カローナちゃんは事務所には所属しないぴょん?」
ジョセフさんが運転するヘリの中で、ラビリちゃんが私を眺めながらそんなことを呟いた。
確かに……セレスさんはもちろん、憂炎さん、レリーシャさん、ラビリちゃんもV配信者の事務所に所属している。
「確かにカローナ様は未だ個人勢ですわね」
「個人で登録者100万もなかなかヤバいアル……」
「何か理由があるのでしょうか?」
・確かに個人でやってるな
・個人でここまで人気爆発してるのヤバくね?
・可愛いうえにスペックが高すぎるしなぁ
・プライマル発生からスペリオルクリアまでで爆発した印象
・所属しないん?
「私も同期の子と企画配信とかして、結構軌道に乗ってるぴょん! カローナちゃんもどうぴょん?」
「あ~……配信でこんなこと言うのもどうかと思うんだけど、将来どうしようかなって悩んでてね?」
「将来? ……そう言えば、カローナ様は高校生でしたわね」
「えっ、年下……じゃないぴょん! 私は永遠の15歳ぴょん!」
・あっ(察し)
・悲しいなぁ……
・ラビリちゃんサイバーパンクロリバニーなのにカローナ様より年上……
「カローナ様、『将来どうしようかな』とは……?」
「あっ、えっとね……正直に言いますと、私はこのまま配信を続けるとは限らないので……」
「「「「えっ」」」」
・はっ
・はぁぁぁぁぁぁぁっ!?
・カローナ様が、配信を止める……?
・なん……だと……?
・いやだぁぁぁぁぁぁっ!!
・いや待て! 『続けるとは限らない』だけでやめるとは言ってない!
・えっ……カローナちゃんやめちゃうん……?
・待って理解が追い付かない……
「ひとまず高校卒業までは配信は続けるつもりなんですけど……」
「その後はどうするのです?」
「そこで悩んでいまして。一応東〇大学の医学部いける学力はあるので、そっちにいくのもありかなって……そうなると忙しくて配信してる暇なんてないですし」
・東〇大学とか言わなかった?
・日本一の大学で草
・カローナ様「医学部いけます」
・なんでそんな天才が配信者やってるんですかね?
セレスさんが私の顔を見て絶句しており、憂炎さんとレリーシャさんも理解が追い付いていない様子。
ラビリちゃんに至っては一瞬ぐにゃッと表情が歪んだのが見えた。……もしかして学歴コンプレックス?
「でも最近、私の父親の会社を継ぐ可能性も出てきて……そうだとしたら、ハー〇ード大学とかMITとかで技術の最先端を学ぶのもありかなって思えてきまして」
・ひぇっ……
・カローナ様「学ぶのもありかな……」
・↑行ける前提で話してるのヤバい
・MITってなんや
・マサ〇ューセッツ工科大学
・日本一が来て次は世界一か……
・カローナ様って何者だよ……
・上位存在定期
「あとは、Mr.Qの誘いに乗ってプロゲーマーになるか……もちろん配信を続ける可能性もありますけどね?」
「……つまりカローナ様は、医者になるか社長になるか、プロになるか配信者を続けるかで迷っていると……」
「そう言うことです! まぁでも、まだ『できるからやろうかな』ってフワッとした感じだし……配信とダンスなら『やりたいこと』なんですけど……」
四条家の跡取りには、残念ながらそう言った俗物的なものを求められていない。私の家、そう言うことに結構厳しいのよね……。
うーん……お父さんを説得するか……。
それとも弟に継いで貰って、私は家を出るか……微妙だなぁどっちも……。
「大物すぎて笑えるぴょん……」
「俺、今のうちにサイン貰っとこうかな……アル」
「……主は『我の地位まで来る気か?』と申しております」
「セレス君、そろそろ到着する」
私の将来の話をしていたところ、ジョセフさんからそんな言葉が届いた。窓から外を見てみれば、とても浮島とは思えないほどに広い台地が広がっている。
ここが今回の目的の場所ね。
「畏まりましたわ! 皆様、準備はよろしいですか?」
「もっちろん!」
「いつでも行けるアル」
「えぇ、お任せください」
「楽しみだぴょん!」
「その意気ですわ! では皆様、新しい大地へレッツゴー! ですわっ!」
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