素材集め・ルナティック 9
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「【旋穿蜂壊】!」
赤黒い雷のようなエフェクトを纏う刺突が、キングランディアの首へと突き刺さる。クリティカル発生。凄まじいエフェクトを撒き散らしたキングランディアは、直後の爆発音と共に吹き飛んだ。
貫通攻撃である【旋穿蜂壊】に、そこまでのノックバック効果は無い。熱放出による爆発で威力を逃がしたのだろう。
けど、クリティカルは発動していた。
『クリティカル特攻』を持つ【旋穿蜂壊】の威力はその程度で弱められるものではない。
そして【旋穿蜂壊】のクリティカルで発動する追加効果は……
「グルルルルッ───」
強制ダウン。
キングランディアは、その場に崩れ落ちるようにその場に横たわった。
「…………」
その一連のやり取りで、私は全てを察した。
こいつは、私が戦う前からもう───
・カローナちゃん?
・どうした?
「……ごめん、ちょっと考え事してた。"浮世現世嘆く月下の盃"───『酒呑童子』、起動」
妖気解放と同時に『ドレッシング・エフェクター』を弾き、装備を『妖仙之姫──戦舞之装』に変更。
アンフィスバエナを片手で掴み上げ、振り上げる。
「妖仙流柔術───【山嵐】!」
「グッ、ガッ───」
高速で投擲されたアンフィスバエナは真っ直ぐにキングランディアの眉間へと突き刺さり、僅かな悲鳴を漏らす。
直後、一瞬でその目前へと踏み込んだ私は、握った拳に雷を纏う。そして───
「妖仙流剛術───【禍震霆】!」
「ッ───!」
眉間に突き刺さったアンフィスバエナを避雷針に、妖仙の雷が猛威を振るう。擬似パイルバンカーとなったアンフィスバエナがキングランディアの頭を貫き、これがトドメとなったのだった。
♢♢♢♢
「というわけでキングランディアも倒したんですけど……今のバトルで皆さん気付いたことありました?」
ドロップしたキングランディアのアイテムを回収しつつ、私は視聴者さんへと質問を投げ掛ける。
視聴者さんも同じことを考えていたら確定なんだけど……
・気付いたこと?
・まぁ確かに簡単に倒しちゃったけど
・あっ、最初から手負いだった?
「あっ、それ正解です。高威力のアビリティばっかりだったとはいえ、普通ならあれも耐えると思うんですよ」
熱放出による緊急脱出もあるし、鬣による防御力は相当なものだ。にも拘わらず、大振りなアビリティもろくに避けることができず、実際予想よりも遅かったというのが私の感想だ。
「そもそも鬣がありながら首にクリティカルするのがおかしいんですよ」
・あー
・確かに
・首を守るための鬣なのに突き一発で抜かれてたら意味ないしね
「そうなのよ。【ドゥルガー・スマッシュ】で下から引っこ抜いた時に見えたけど、お腹側の鬣がごっそり引きちぎられてて、すごい量の出血もあったのね。私はもう瀕死のキングランディアを倒しただけだったってことね」
・ラッキーと言えばラッキーだけど
・気持ちいい勝利ではないよな
・漁夫の利で草
・鬼畜脳筋カローナ様
「問題は、キングランディアをそこまで追い詰めた相手が何者なのかって話よね……」
キングランディアは、逃げて生き延びるぐらいなら戦って死を選ぶぐらいにプライドの高いモンスターだ。
しかしこの個体は、重傷を負いながらも逃げて生き延びていた。
この個体が弱い個体だったのか、それとも王者としてのプライドをへし折られての圧倒的な敗北を喫したか───
「一度は"キング"になったんだから、弱いわけではないと思うんだけど……ってことで、今から確かめに行きませんか?」
・まだ連戦するんか……
・現リーダーの個体やろ? 数段強そう
・でもカローナ様なら行けそうなのがな……
「皆さんも気になりますよね? ってことで、カルラ!」
「モウミツケテル」
「早っ!? さすがカルラ、超優秀! じゃあお願いね!」
「カァッ!」
私の両肩を掴んだカルラが、高らかに声を上げて【空間転移】を発動した。
一瞬で景色が変わり、上空へ───はてさて、現役のキングランディアとはどれ程のものなのか……
───私が見下ろす視界の先に現れたのは、そんな軽い気持ちを後悔するほどのモンスターだった。
「グルル───」
「っ……!?」
目が合った途端、ゾッとするほどのプレッシャーに思わず肌が泡立ち、本能が警鐘を鳴らす。無数のランディアのメスに囲まれて大地を闊歩するそいつは、確かにキングランディアだ。
けど、違う。
だってこいつは───!
『アナザーユニークモンスター: レオニダス・キングランディア──"皇帝" に遭遇!』
・えっ
・アナザーキタ——————ッ!
・あっ、これヤバイやつだ
「カルラ! 撤退!」
「グルァァァァァァァアッ!」
カルラが再び【空間転移】を使うのと、"皇帝"が咆哮を放つのは同時。
ドーム状のエフェクトが目の前に迫る光景を最後に、私はギリギリで離脱に成功するのだった。
「ゴルルルルル……」
先ほどまでカローナとカルラが居た場所を見上げ、"皇帝"は『仕留め損ねた』とばかりに唸り声を漏らす。
それも数秒のこと。
メスのランディアに先を促された"皇帝"は、先ほどの咆哮で凍りついた地面を爪で削りながら、ゆっくりと歩き始めたのだった。
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