素材集め・ルナティック 2
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突如として地上から空へと放たれた光の柱は、その威力を物語るように衝撃波を周囲に撒き散らしながら、遥か上空の雲を消し飛ばす。
数秒後、空気に溶けるように消えていった光の柱……というかレーザー砲に、私は色々と察する。
あー……今の、絶対ジャガーノートΩの一撃だ……。
【ホライズン・ゲイザー】で見てみれば、レーザー砲が消えた後には何かの燃えカスがパラパラと落ちていくのが見えた。
おそらく【ターミナル・オロバス】の上空を横切った何らかのモンスターが、領空を侵した判定となってジャガーノートΩに迎撃されたのだ。
「えっ、今のが通常攻撃?」
・あれ絶対ジャガーノートΩだろ
・さすが最強格
・攻撃が全部SFのそれなんだよな
・遠距離攻撃があの性能のくせに近接も異常だからね
・カローナ様、もしかしたらすでに捕捉されてるかも
「へっ───」
視聴者さんからそんな指摘があった直後───視界の奥で一瞬煌めきがあった後、一秒とかからず到達した白いレーザーが私に直撃した。
「っ!? ……あれ?」
・ちょっ
・直撃した!?
・カローナ様っ!?
・死……んでない!?
・カローナ様キョトンとしてるww
・なんで聞かないの!?
レーザーはたっぷり10秒間ほど私に直撃していたのに、私にはノーダメージどころかノックバックすらない。
レーザーが通った後は超高温で融解したように、地面の岩が赤熱してドロドロと……
「あっ、これ熱攻撃なんだ!」
思い至った私が『ゴールデンアヴィス』のチャージを確認すると、後から追加した分も含めて四つの『オリハルダイン・アラトリア』の魔石が全てフルチャージとなっていた。
私に当たったレーザーは純粋な熱光線であったため、熱を吸収する性質を持つオリハルダイン・オラトリアの魔石が全部吸収してくれたのだ。
ラッキー!
命を救われたのはこれで何回目か……やっぱヘルメスさんの装備最高すぎる! ありがとうヘルメスさん!
「ぅおっ!」
直後、もう一発放たれたレーザーをギリギリで躱し、私はその発生源へ向けて駆け出す。
・二発目は食らわないカローナ様
・今度は普通に避けるのかよ!?
・なんで一回見ただけで見切れるのか
・ユサッ
・……良い
「このぐらいの距離なら光ってから約0.3秒で届く! つまり、見てから回避よゆーっ!」
・余裕とは
・0.3秒が余裕……?
・当然のように0.1秒で反応するカローナ様……
・当たらんww
・完全に見切ってやがるぜ
身体を伏せ、翻し、宙を舞い……身体のすぐ横を通り抜けるレーザーは怖いけど、当たらなければどうと言うことはない!
ジャガーノートΩから放たれる何条ものレーザーは、空気を焼きながら高速で迫る。が、ジグザグに走りながら的を絞らせない私にはもう当たらない。
降り注ぐレーザーの合間を掻い潜りながら駆け抜け、徐々にその威容を視界に捉え始める。
黒い肉体に銀の装甲を身に纏った巨大な獣。ナイフのような牙や爪の凶悪さはもちろんの事、ライオンの顔とオオカミの顔と言う二つの顔を一つの身体に宿し、さらには尻尾にもヘビの顔を備えている。
何匹ものモンスターを一つの身体に押し込んだような、異様な姿だった。
『ユニークモンスター: ジャガーノートΩ に遭遇!』
「ッ───」
アナウンスが流れ、ジャガーノートΩとの戦闘が完全に開始された瞬間───ジャガーノートΩが持つライオンの頭が空を見仰ぎ、大量の空気を吸い込む。
ブレス?
レーザー?
「いやっ……!」
「ゴアァァァァァァァァァッ!!」
「っ───!」
ブレスやレーザーでもないと直感した私は、その直感に従って両手で耳を塞ぐ。
直後、ライオンの頭から放たれたのは、空気を引き裂くような咆哮。ビリビリと物理的な衝撃すら感じるほどのその声を正面から受けた私は、数瞬の硬直に襲われた。
咆哮だからって当たり前のようにスタン効果を付けるのはどうかと思うんだよね! 咄嗟に両耳を塞いだとはいえ、硬直を防げないんだから───
「っ!?」
「オォォォォォォォォッ!」
硬直中の私の目の前に迫ったのは、煌々と燃え盛る火炎放射。咆哮を放つライオンの頭とは別々に動くオオカミの頭が、火炎放射を放ってきたのだ。
『ゴールデンアヴィス』で熱を吸収できるとは言え、顔とか太股とか、露出してるところは普通に焼けるのよ!?
即座に『ゴールデンアヴィス』のチャージを消費して衝撃波を発生、私自身の身体を弾き飛ばし、その場から緊急離脱!
「【次元的機動】!」
地面を転がる勢いのまま、ふわりと浮くように前方宙返り。
その真下を、ジャガーノートΩが横凪ぎに振るった爪から放たれた見えない斬撃が通り抜ける。
「うーわっ」
一息つく間もなく、口の中に白い光を生み出し始めるライオンの頭と、バチバチと電気を纏うヘビの尻尾……
【バニシング・ステップ】起動!
『ドレッシング・エフェクター』を弾いて『魅惑の恋人』シリーズに変更、直後に【バニシング・ステップ】で無数のデコイを生み出す。
が、
「ひぃぃぃぃっ!」
撒き散らされたレーザーとレールガンがデコイを貫き、次々と消し飛ばしていく。
デコイを囮に死角に回った私には当たらないけど、もし当たったら死ぬってこんなの! 『大量殺戮兵器』って呼ばれるのも納得───っ!
なんでオオカミの頭はヘイト値を全部消費したはずの私の姿を捉えてるのかしら!? 匂いか!? 匂いで即捕捉ですか!?
【ヴォイド・ステップ】起動!
【ヴォイド・ステップ】でコピーするのは、デコイを生み出す【バニシング・ステップ】。一瞬で消されたデコイを再び生み出した私は、オオカミの頭から放たれたレーザーで消されていくデコイを横目にジャガーノートΩの頭上を取る。
攻撃は全部即死級。
しかもそれを、反撃の暇もないほどに連打してくる。
ヘイトを0にしても即捕捉。
仕方ない……こんなの、まともに戦っていられないわ!
「【進化の因子───“恋人”】!」
『因子とファンタジアが混ざり、覚醒する!』
『バイオファンタジア計画が進行───』
『プレイヤー名: カローナ の種族が一時的に ネペンテス・アグロ― に変化します』
頭の上に咲いたバラの花が洗脳の臭気を撒き散らし、デコイに気を取られたジャガーノートΩは、逃げる間もなく臭気に包まれる。
ライオンとオオカミの両方の目から光が失われ、ガクンッを力が抜けて身体が僅かに沈み込むのが分かった。
「よーし、これでチェックメイ……ト?」
【恋人】のデバフが決まったと思ったその時……独立して動くヘビの尻尾が、自分自身の身体に噛みついたのだ。
そしてその瞬間、ビクンッを振るえたジャガーノートΩのライオンとオオカミの目に再び光が戻る。
……まさか、自分で【恋人】の洗脳を解除した!?
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