私も人気配信者の仲間入りってことでいいよね……?
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「えっ、これって……」
セレスさんから渡されたその薄い冊子を見てみると、そこには、様々なデザインのVRチェアの写真が、性能表と共に並んでいた。
しかし、そこに価格は書かれていない。
ってことはつまり───
「ふふふ、驚いてくださったのであれば用意した甲斐がありましたわ! えぇ、100万人突破にちなんで、100万円程度で私が使っているものと同じモデルのVRチェアのカタログをご用意させていただきましたわ!」
「マジで!?」
「あらあら、淑女がそんな言葉づかいをするものではありませんわ」
「あっ、ごめんなさい……でもこれは驚きますよ! えっ、本当にいいんですか?」
「もちろんですわ! 貴女のために用意したんですもの♪」
そう言って微笑むセレスさんは、イタズラが成功した子供のように可愛らしいものだった。
しかし、VRチェアか……正直めちゃくちゃ助かる。
私も普段使いしているVRヘッドギアとVRチェアとの一番の違いは、間違いなく『レスポンス』の違いだろう。
思考入力という方法を採用しているため、思考を読み取り、それを反映させるまでには僅かなラグが発生する。今の技術ではそのラグもかなり改善されているが、完全になくすことは難しいのだ。
もちろんヘッドギアタイプもチェアタイプも一緒だけど、後者の方が読み取り速度も反映速度も遥かに早い。
『僅かにラグがあると感じる』のと、『気づかない程度のラグしかない』とでは天と地ほどの差がある。
さらにはただベッドに寝転ぶよりも楽な体勢でゲームをプレイできるうえ、ゲームプレイ中に何らかの体調不良が発生した場合もすぐに検出してくれるのだ。
プレイ時間が長くなりがちなプロゲーマーや配信者にうってつけの製品と言えよう。
「ありがとうございます! 大切に使いますね!」
「これが一つ目のプレゼントですわ!」
「一つ目? って、まさかまだ何か用意してるんですか?」
「そうですわ! 二つ目はこれです!」
そう言ってセレスさんが胸元からサッと取り出したのは、小さなカード状のものだった……というか、なんて場所から取り出してるのよ!
胸の谷間から物を取り出すとか、現実でできる人いるんだ……私もやってみようかな。もちろんゲームの方でね?
ところで、そのカードに私は見覚えが……。
「私が加奈子様に渡したかったのは、今度行われるWGPの招待チケットですわ!」
「あっ、えっと……」
「あら、どうしましたの?」
「申し訳ないですけど、じつはもうクウから招待チケットは貰ってて……」
「えっ、マジですの?」
「マジマジ。デー……じゃなくて、クウと顔を合わせた時に貰ってて……」
「あら、そうですのね……チッ、先を越されましたわ……」
セレスさんは一瞬、捨てられた子犬のような悲しそうな表情を浮かべるが───直後、まるでレイドモンスターを前にしたかのようにスッと目を細めて舌打ちした。
ちょっと怖いよセレスさん……。
「というわけで、私はそれを受け取れないわ」
「そうですか……。それなら、加奈子様の弟様にお渡しくださいませんか?」
「弟に?」
「えぇ。以前『髑髏會』を壊滅した時も、ファルコン様は多大な活躍をしてくださいましたわ。 ですので、そのお礼ですわ!」
「そういうことなら、私から渡しておくわ。まさかセレスさんからプレゼントを渡されるなんて思わないだろうし、喜んでくれと思うわ」
「ふふ、それなら何よりですわ♪」
WGPの通常チケットは現在抽選期間中。それも倍率1000倍を超えるような超人気だから、抽選なんてまず当たらないと思った方がいい。
そんなチケットを確実に手に入れられるどころか、ファストパスやVIPルームも利用できる『招待チケット』が手に入るとなれば、ハヤトもきっと飛び跳ねて喜ぶだろう。
しかし、私とハヤトで姉弟揃って招待チケットが利用できるとか、やっぱりコネって大事よね!
「そして最後なのですが……」
「えっ、いや、もう十分すぎて流石にこれ以上は……」
「期待させてしまって申し訳ありませんが、これはカローナ様にお願いですわ」
「カローナにね……セレスさんのお願いですから、なんでも言ってください!」
「ありがたいですわ! では遠慮なく……実は何人かの配信者とのコラボ配信を企画ししているのですが、カローナ様も一緒にいかがかと思いまして」
「コラボ配信? しかも、何人かって言いました?」
「はい! 今のところ、優焔様とシスター・レリーシャ様からお声をかけてもらっていますわ」
「二人とも普通に有名人じゃん……」
優焔さんと言えば『エセ中国語』とか『うさんくさい』とか弄られてるけど、ギャグテイストな内容と確かな実力が人気だ。
そしてシスター・レリーシャは言わずもがな……すんごいスタイルと溢れる母性、そしてシスター服という組み合わせで人気が出ないわけがない。しかもその見た目からは到底想像もできない戦い方に、初見の方は度肝を抜かれることになるだろう。
「どうです? カローナ様」
「人気配信者ばかりに囲まれて緊張するけど、私で良ければぜひ!」
「では、日時はまたお知らせしますわね! ふふふ、楽しみですわ!」
アネファンを配信する人気配信者は多いけど、そんな彼らに誘われるなんて……私もかなり成長してきたなぁ……。
よーし、じゃあ本番までに色々と準備しておこうかな!
お読みくださってありがとうございます。




