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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第七章 ~天地貫く太古の慟哭~
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セレスさんと初顔合わせ

評価・ブックマークありがとうございます!


「ここだよね……」



 次の休日、広大な摩天楼の中でも一際高いマンションを麓で、その威容を見上げていた。


 スマホを何度確認しても、セレスさんから送られてきた住所はこの場所である。……えっ、こんな高級そうなところに、私一人で乗り込むの?


 めちゃくちゃ緊張するんだけど……。

 不審者って言われて連行されたりしないよね?



「……ま、いつまでも目の前でうじうじしてても仕方がないし……」



 私は意を決してドアを潜り、一階のフロント……っていう表現が正しいのか知らないけど、フロントっぽいところへ。なんだか高級ホテルみたいな雰囲気……


 とはいえフロントマンはさすがに居らず、常駐の警備員はいるみたいだけど、基本的に来客は機械で対応のようだ。



 私は教えてもらっていた部屋へ、インターホンを鳴らす。すると、AIによる自動音声らしき声で応答があった。



『どのようなご用件でしょうか?』


「はい、カローナ(・・・・)です……と伝えていただければわかるかと思います」


『ただいま確認いたします。少々お待ちください』



 そうして、自動音声はしばらく停止する。きっとセレスさんに確認してるところなのだろう。セレスさんとは時間も打ち合わせ済みだし、留守とかにはなっていないはず。



『確認が取れました。いらっしゃいませ、カローナ様』



 そう音声が流れると同時、ガチャンッと重厚な音を立てて鍵が開き、これまた重厚な玄関の扉が開く。


 その扉を抜けた先、球体にカメラのレンズのようなが付いた自動操縦のドローンが、私の顔の高さに浮いていた。



『どうぞこちらへ』


「えっ、何この超ハイテク機器……」


『私はこの建物の案内を担当しているAIです。セキュリティも兼ねていますので、怪しい動きはしないようにお願いします』


「だ、大丈夫です……!」



 ふわふわと空中を移動するドローンAIと会話しながら、私はその後ろを付いていく。廊下を抜け、エレベーターに乗り、一気に最上階へ……。


 そうして到着したその場所には、これまた一際豪華なドアが佇んでいた。



神瀬かみせ様、カローナ様がいらっしゃいました』


『すぐに行きますわ!』



 ドアの前でドローンAIがやり取りをしてくれたようで、インターホンの向こうから聞こえてくるセレスさんの声。


 その数秒後、ドアが開くと、ゲームの中の『セレスさん』と変わらない姿の女性が姿を現した。



「お待ちしておりましたわ、カローナ様! どうぞ中に入ってくださいまし!」


「お、お邪魔しますね……!」


「あなたもありがとうございますわ!」


『お役に立てて何よりです。では、私はこれで』



 ドローンAIは私とセレスさんが問題なく邂逅できたことを確認すると、ペコッと頭を下げて次の仕事へと戻っていった。


 なんだか可愛いAIだったなぁ。



「さぁさぁ、どうぞこちらへ!」



 私はすんごい高級な部屋の様相に気圧されながらも、セレスさんに案内されるままに部屋の中へと脚を踏み入れた。



        ♢♢♢♢



「改めて……わたくしは『ゴッドセレス』として配信者をしています、神瀬かみせ玲子れいこですわ!」


「カローナこと四条しじょう加奈子かなこです。……その、セレスさんってアバターそのままの姿なんですね……」


「そうなのですわ! わたくし、アバターは現実の姿をトレースしていますもの」



 そんな風に嬉しそうに話すセレスさんは、女優とかやっていてもおかしくないほどの美人だ。


 背は意外と高め、トレードマークの銀髪縦ロールも健在、白銀のドレスを身に着けていてはち切れんばかりの巨にゅ───胸もそのままだ。


 アネファンの中で見慣れた『ゴッドセレス』がそのまま抜け出して来たようで、なんだか不思議な感じだ。



「カローナ様……じゃなくて、加奈子かなこ様こそ、ものすごい美少女ですわね……カローナ様は美麗でカッコいい雰囲気ですけど、加奈子かなこ様は可憐な感じなのですね。それに配信とは声も変えています?」


「あはは……一応高校生なんで、見た目も声も変えないとクラスメイトにバレちゃいそうだしね……」


「それでも美少女すぎますわよ……もし加奈子かなこ様がメディアとかで活動を始めたら、どんなタレントもモデルも涙目ですわね」


「そ、それは言いすぎな気が……」


「お待たせいたしました」



 タイミングを見計らって、メイド服に身を包んだ美少女が私とセレスさんへとティーセットを差し出す。


 ティーカップではなく、ティーセットである。ソーサーに乗った高級そうなカップと芳醇な香りの紅茶、そして様々なお菓子が乗った三段重ねのアレ(・・)……想像する限りの理想的なティータイムのセットが、目の前に置かれたのだった。



「あら、ありがとうございますわ、アリサ」


「ありがとうございます」


加奈子かなこ様、この度は玲子れいこ様の我が儘に付き合っていただき、ありがとうございます」


「い、いえ、我が儘なんてそんな……!」


「申し訳ありませんが、しばらくの間玲子(れいこ)様にお付き合いいただきたいと思います。玲子れいこ様、加奈子かなこ様……いえ、カローナ様が好きすぎて毎日狂っていますので」


「何を言っていますの、アリサ?」


「狂っ───えっ?」


「しかし、この部屋は完全防音で、あれこれしても外にはバレませんのでご心配なく」



 無表情のまま両手でグッと拳を作り、ムフーッとしてるセレスさんの専属メイド、アリサさん……。この人もこの人で、なかなか特殊……面白そうな人だ。



「もう! アリサは邪魔しないでくださいまし!」


「これは出過ぎた真似を……すみませんでした。では、失礼いたします」



 一礼してその場を去るアリサさんは、そのまま部屋を出る……かと思えば、ドアから顔だけ出してこちらをじっと観察している。


 バレバレだけど、なんか可愛いなこの子。



「では加奈子かなこ様、改めて登録者数100万人おめでとうございますわ! そして、先日は急に来てしまって申し訳ありませんわ」


「いえいえ、むしろありがとうございます! いつの間にかここまで増えてたんですねぇ……」


「本当に気づいていなかったんですね……」


「色々とクエストが立て続いて、そっちに集中してたのよね」


「カローナ様らしいですわね……さて、早速(わたくし)からプレゼントをお渡ししたいのですが……」



 そう言って差し出してきたのは、一冊の雑誌のようなものだった。それほど厚くはなく、プレゼントと言うには何だか───


 という考えも、その中身を見るまでであった。



「えっ、これって……」


「ふふふ、驚いてくださったのであれば用意した甲斐がありましたわ! えぇ、100万人突破にちなんで、100万円程度でわたくしが使っているものと同じモデルのVRチェア(・・・・・)のカタログをご用意させていただきましたわ!」


お読みくださってありがとうございます。

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