親方! 空から女の子が!
評価・ブックマークありがとうございます!
それから3分後、【恋人】が解除される寸前でオリハルダイン・オラトリアも〆め殺し、今日の分のノルマは達成。
私の目の前には、更地となった広い空間に金剛蟹のドロップアイテムがそこら中に転がる光景が広がっていた。
「はい、と言うことで……出現した蟹はひとまず片付いたので、今から回収タイムです」
・oh……
・これナーフした方がいいんじゃねぇかなぁ?
・金剛蟹一匹倒すのにどれだけ苦労すると……!
・カニ漁ってこんなに楽だったっけ?
・この量を独り占めはヤバい
・あっ……み、見えっ……!
・どうして拾う時に膝を曲げず脚線美を強調しながら拾うのか
・前かがみになった時にスカートが上がって見えそうになるのがグッとくる
私が金剛蟹の素材を拾っていると、そんなコメントが流れてくる。……ごめんなさい、狙ってやりました。
軽く脚をクロスして、前屈する感じで拾うの……なんか色っぽくてよくない? 私は好き。
「いや、まぁ私もこのゲーム性での【恋人】は正直ズルすぎると思ってるんだけどね」
このゲームは、かなりモンスター優位なゲームだ。
と言うのも、プレイヤー側はレベルキャップが設定されているにも関わらず、モンスターにはそれが無いのだ。
二つ目の街付近で出会ったハクヤガミがレベル160越えだったのが良い証拠だ。
レベル差があるからと言って必ずしも勝てない訳じゃないから、複数人でパーティを組んでモンスターを倒し、素材を集めて次のモンスターへ……と言うのが本来の進め方のはず。
それが【恋人】で全部ぶっ壊れてるんだよね。
「ま、一日3分だけっていう制約はあるんだけどね」
・デメリットでもなんでもなくて草
・時間制限があるのは当たり前で、反動とか無いしね……
・やっぱりアナザー捜索した方がいいんだろうか
・アナザーアビリティ発動中の効果って元になってるモンスターと同じ能力なんだよな
・多分そう
・今分かってる奴だと【運命の輪】と【戦車】がヤバそう
・他のも大概だと思うけど
「おっ、【運命の輪】と【戦車】? どんな相手か教えてもらっていい?」
視聴者さんの話を聞くと、アナザーモンスターの情報を集めている掲示板もあるらしくて、そこにはすでにいくつかのアナザーモンスターの性能が明らかになっているのだとか。
そんで【運命の輪】と【戦車】の性能なんだけど……。
『サンサーラ・フェニクス───運命の輪』……簡単に言うと、無限蘇生を持つ化け物だそうだ。
HPが0になると、炎のエフェクトを撒き散らしながらさらに強くなって復活するのだ。その性能故に大勢のプレイヤーがサンサーラ・フェニクスを狙い、現在復活回数15回。
強化は上乗せされていくため、すでに手が付けられない強さなのだとか……。
もしかして、【運命の輪】を手に入れたら3分間不死身……?
で、【戦車】の方はと言うと……『マキシムス・クロウラー───戦車』。
戦艦級にバカでかいサソリで、全身から重火器の砲身が所狭しと……。それだけで海外のB級映画も真っ青な『なんでもあり』感なんだけど、どれだけ砲身を破壊しても周囲の岩や金属類を吸収して砲身を再生してしまうらしいのだ。
遠距離では無数の砲撃、近距離では巨体+超耐久の暴力。まさに難攻不落の要塞だ。
「それってさ、プレイヤーに勝てるやつ?」
・無理じゃね?
・遠距離だとそもそも硬すぎてダメ通らんし、近距離だと普通に踏みつぶされる
・スターストライプ並みの高火力を継続して出せるならワンチャン……
・無理すぎて笑えてくる
・けど、今分かってる中だと一番【戦車】が可能性高いとかいうバグな
・他のもギミック色強すぎてなぁ
「あー、今考えると、確かに【恋人】も『呼吸したら即死』だったしねぇ」
臭気を吸った瞬間から意識が飛んで相手に食べられるのだから、呼吸したら終わり……確かに難易度設定がバグってるレベルだ。
「けどまぁ、アナザーアビリティって人権級に強いし、苦労してでも狙う価値は───」
「───んカローナ様ぁぁぁぁぁっ!」
「っ!?」
・!?
・この声はっ……!?
・ちょっ、何か来たww
・カローナ様のストーカーか?
ドロップアイテムをほとんど拾い終わった頃、どこからか私の名前を飛ぶ声が聞こえてくる。その声は徐々に大きくなり、真っすぐにこっちに向かってきているのが分かった。
激しく聞き覚えのある声に、私は若干頬を引きつらせつつ───声のする方向に向かって視線を上げた。
「カローナ様ぁぁぁんっ!」
「んむっ……!?」
・飛んできたww
・交通事故で草
・ストーカーかと思ったらストーカーだったわ
・あ^~
・カローナ様の顔が埋まってる……!
・デッッッッッッッ!
・なるほど、カローナ様はロリもお姉さんもイケる口か
声の主は当然セレスさん───ということを認識するよりも早く、上空から私に向かって一直線に飛んできたセレスさんに抱き着かれ、私はバランスを崩して地面に転がった。
い、いったい何が起こったのよ!?
お読みくださってありがとうございます。




