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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第七章 ~天地貫く太古の慟哭~
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パワーレベリング

評価・ブックマークありがとうございます!


 さて、宣言したからにはやるしかないんだけど……すぐに取り掛かれるかと言えばそうではない。


 そもそも、私()持ってないしね。

 桔梗さんから一本取ったことで十六夜いざよいさんへの挑戦権を得られたはいいんだけど、刀がないと当然【抜刀術】なんて習得できないわけで……



 というわけで、レベリングと素材集め。集めた素材をヘルメスさんのところに持って行って、刀を作ってもらう予定だ。



「レベリングと言えば、やっぱりここよね!」



 草一本すら生えない、灰色と茶色の大地。

 頂上が抉れた山のいたるところから、もうもうと煙が上がる光景。


 【モラクス火山】に、私は来ていた。



 ・地獄定期

 ・レベリングで来る場所じゃない

 ・ちょっと意味が分からないです

 ・どうやって蟹を倒してるの?



「いや、私もまともに倒してるわけじゃないわよ? あんな数のカニに追い詰められてら、倒すどころか逃げることすら難しそうだし」



 “酒呑童子”状態での【妖仙流剛術】を何発か耐えるほどの防御力だし、何より今は『ゴールデンアヴィス』シリーズがないのだ。


 コカパク・トラリの封印のためにチャージを使い切っていて、【変転コンバージョン】を使えない状態になっていた。


 チャージの回復にはを与えれば良い。本来は私の体温でも徐々に回復できるんだけど……それだとフルチャージまでとんでもなく時間がかかる。


 だから、今はヘルメスさんにお願いして鍛冶用の炉の中に『ゴールデンアヴィス』シリーズを突っ込んであるのだ。そのまま高温で熱し続けておけば、2日ぐらいでフルチャージできるだろう。



 と言うわけで、今回は『冥蟲皇姫インゼクトレーヌ』シリーズを使っている。



「よーし……【セカンドギア】、【次元的機動ディメンジョン・マニューバ】、【スリップストリーム】、【メタバース・ビジョン】、【ホライズン・ゲイザー】起動!」



 グッグッと膝を伸ばして準備運動しながら、アビリティを重ねてバフを盛る。さらに『禍ツ風纏(まがつかぜまとい)』を指で弾き、翡翠の風を纏う。


 そして───



「GO!」



 くすんだ灰色の大地を、私は一気に駆け抜ける。

 もちろん、金剛蟹の住処も関係なく。


 侵入者の接近に反応して金剛蟹が穴から飛び出てくるも、すでにそこに私の姿は無く……私は走り回っては蟹を住処から誘き出し、とあるものを探し続ける。


 それは、黄金蝦蛄……『オリハルダイン・オラトリア』の住処だ。



「オリハルダイン・オラトリアの住処は基本的に横穴だから、向こうに見える壁のところまで行くわね」


 ・はっやww

 ・俯瞰で見るとわらわら出てきて気持ち悪いな……

 ・でも、出すだけ出して倒すわけではないんだ



 そう、ここで一体一体戦っても、めちゃくちゃ時間がかかって効率が悪い。それに、金剛蟹は基本的に自分の行動範囲から出ようとはしないからね。


 だからこそ、利用するのが『オリハルダイン・オラトリア』だ。



「そぉいっ!」



 1分とかからず発見した横穴の巣穴に、私は手ごろな石を拾って投げ込む。石はガンゴンと音を響かせて奥深くへと飛んでいき、直後、穴の奥から凄まじいプレッシャーが放たれた。


 暗い穴の奥に、ぼぅっとオレンジ色の光が灯る。

 オリハルダイン・オラトリアの前足に灯る、破滅の光だ。


 その威容を見せつけるように黄金の巨体がゆっくりと現れ───



「【進化の因子エボリューションコード───“恋人ザ・ラバーズ”】!」



 瞬時に『ドレッシング・エフェクター』を弾いて『魅惑の恋人(アミュールラバーズ)』シリーズに変更し、アナザーアビリティを発動する。


 オリハルダイン・オラトリアが前足の光を放つよりも早く、私の頭の上に咲いたバラから放たれた臭気に包まれ、だらりと前足を降ろした。



「……て感じで、オリハルダイン・オラトリアは自分の巣穴を壊すことはしないから、出てきた直後に【恋人ザ・ラバーズ】で催眠を入れれば安全に操れるってわけよ」


 ・誰が真似できると?

 ・やっぱチートだよアナザー

 ・ん? 待てよ、操れるってことは……

 ・いや、まさかな……?(震え声)



「そのまさかよ!」



 インベントリを開いた私は、愛の鞭(・・・)……『【特殊変転エクスコンバージョン】付与DEX特化5段階強化神経接続式因子-ファンタジア相互活性指令制御ユニット “ネペンテス・シナプス“』を取り出し───って、名前長いわっ!


 【恋人ザ・ラバーズ】発動中にだけ使用できるその武器は、私の身体と同化して『ネペンテス・アグロ―』と同じように無数の触手を与えるのだ。



「以前使ったときには、この武器をただの腕の延長としてしか使っていなかったけど……これ『指令制御・・・・』って名前がついてるのよね。つまり、こういうことなのよ!」



 無数の触手が、動かないオリハルダイン・オラトリアの身体に絡みついていく。その触手は蝦蛄のからの隙間から入り込み───ビクンッと震えたオリハルダイン・オラトリアは、ゆっくりと動き出して私の前で身体を屈めたのだ。


 そして私がその背中に乗ると、再び身体を起こしたオリハルダイン・オラトリアは、巣穴から出てこちらを睨みつけている金剛蟹の群れへと吶喊を開始した。



「【恋人ザ・ラバーズ】の効果だけだと、停止とか突撃だとかの簡単な命令しかできないんだけど……この鞭を使うことで、神経を乗っ取って自由に動かせるようになるのよね」


 ・ひぇっ

 ・急にホラーにするなよ!

 ・寄生虫かな?

 ・神経を乗っ取るとか怖すぎる……

 ・やっぱ黄金蝦蛄を使って蟹を倒すんじゃん!

 ・えっぐぅ……

 ・カローナ様、どこに向かってるの……?



 【恋人ザ・ラバーズ】の臭気で催眠状態になった無数の金剛蟹が1か所に集まり、そこへオリハルダイン・オラトリアのシャコパンチが放たれる。


 大地を抉るほどの衝撃波が一切合切を消し飛ばし、周囲に大量のドロップアイテムを撒き散らす。



 ……これ、倒してるのはオリハルダイン・オラトリアだから、経験値の大部分がそっちに入るんだよね。けど、私も【恋人ザ・ラバーズ】のデバフで貢献してるから、その何割かを得られるという寸法だ。



「時間は短いから、集中していくわね!」



 両前足のチャージを使った後は白兵戦の開始だ。【恋人ザ・ラバーズ】で止めてはシャコパンチで破壊し、また止めては破壊し……


 アビリティが終了するまでの間、私はこれを繰り返してレベリングするのだった。


お読みくださってありがとうございます。

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