ここが桃源郷か……
評価・ブックマークありがとうございます!
「皆さんこんばんは~っ!」
●オルゾ・イツモ:[¥5,000] 待ってました!
・キタァァァァッ
・長かった……ここまで……!
・カローナちゃんの配信が久しぶりな気がする
●野良チワワ:[¥3,000] またスパチャ投げられるぜ……!
・最近あんまり配信してなかったね?
久々の配信で始まりの挨拶をすると、早速多くの視聴者さんからのコメントが飛んできた。しばらく間は空いたけど、開始から結構多くの人が見に来てくれていてありがたい。
「皆さんごめんなさい。ちょっと配信するには躊躇われるクエストがいっぱいあって……ティターニアちゃんからの依頼でユニーククエストをやって、その後は流れでPKクランの壊滅を……」
・んんっ?
・なんか変なこと言わなかった?
・ティターニアちゃんからの直々の依頼でユニークを……?
・PKクランの壊滅て
・あー、そういえば【ティエラ】に有名なPKがいっぱいリスポンしてきたな
・あれカローナ様だったんだ
「PKがNPCに色々と迷惑かけてたみたいで、ついにティターニアちゃんから『掃討してほしい』って依頼されたんだよね……私以外にも総合ランキングの1位から7位までが集まったから、なかなかすごい戦いだったわよ」
・ひぇぇ……
・トップランカー7人とカローナちゃんならそりゃ誰も勝てないわ
・ア〇ンジャーズで草
・カローナ様が最速1位になったのはそれか!
・そういえばアナウンスで言ってたな……
・まぁカローナ様なら納得
「そうなんですよ! プレイ開始からずっとAGI振りのビルドしてきましたけど、ようやく最大速度ランキング1位になりました! あっ、アビリティは内緒にしますよ?」
・そりゃそうだ
・わざわざ手の内を配信で明かすなんてしないよね……気になるけど
・アビリティ判明しても対策できるかと言われたら……
・と言うかむしろ、今までランキング1位取れてなかった方が驚きなんだけど
・確かに
「さてさて、それで今日の配信なんですが……ちょっと近況報告とレベリングをしようかなって」
そう言いながら、私はカメラを手に持ち、私が座る書斎机から見える部屋の中を映し出す。白と自然の木の色を利用した落ち着いた雰囲気の広い部屋が映し出され、普段の『アネックス・ファンタジア』とは似ても似つかないイメージだ。
壁や部屋の隅にはちょっとした絵画や花が飾られており、質素な部屋の中に彩を添えていた。
・町にある宿……じゃないよな
・ザ・貴族の部屋みたいなイメージだわ
・あー、どこかで見たことがあると思ったら、アニメで見たことあるのか
「これが一つ目の報告なんですが、今私がいるこの部屋……これ私の部屋
———と言うか、私の屋敷なんですよ」
そう説明しながらUIを操作し、称号欄を他人にも見えるように変更。カメラを向けると、そこに映される『Name: カローナ・ドゥ・リュミエール』と、『《リュミエール辺境伯》』という称号……。
「見ての通り、私アネファン内で貴族になりました」
・えっ
・はぁぁぁぁぁぁぁっ!?
・はっ、貴族!?
・いや、そうはならんやろ……
・なっとるやろがい
・いや……えぇ?
・このゲーム、プレイヤーも貴族になれるんか……
・なんか違うゲーム始まってないっ!?
・ど う し て こ う な っ た
「ティターニアちゃんのお願いを色々と叶えてたら、なんか『辺境伯にしてやる』って……」
・意味が分からなすぎる
・そんなノリで……
・ふつうはそんな簡単に貴族にはなれんのよ
まぁでも、『親愛なる————へ』でティターニアちゃんの故郷を救ったし、国家転覆を未然に防いだりPKクランを壊滅したり……ティターニアちゃんのためになることは色々やって来たから、そこを認められたんだと思う。
「貴族になったからと言って何か変わったわけではないけど……最高なのが一つあるのよ。見せてあげるわね」
私が書斎机の上のベルを鳴らすと、その僅か数秒後……コンコンッと数回のノックの後、静かにドアを開けて入ってきたのは、メイド服に身を包んだ少女だった。
私の『ブリリアンドール』とは違い、ミニスカではなく嫌らしさを感じさせないロングスカート……いや、別に私のメイド服がいやらしい訳じゃないけど。
黒の生地を白のフリルが愛らしく彩り、胸元の慎ましい膨らみも、パッチリとした大きな瞳も、清楚に結い上げた金糸の髪も全てが可愛い!
さらには『妖精族』であるが故の、ガラス細工のような美しい蝶の羽が背中についており、芸術品のような美しさを醸し出していた。
そんな彼女は私の前まで来ると、恭しく一礼して口を開く。
「お呼びでしょうか、ご主人様」
「えぇ、紅茶をお願いできるかしら? アールグレイの砂糖は無し、でもミルクは入れてね」
「畏まりました。すぐにお持ちします」
メイド少女はもう一度頭を下げると、静かに部屋を後にする。
私は満足そうに頷くと、カメラの向きを変えて自分の顔を映し出す。……多分口元はニヤつきを抑えられてないかも……
「こういうことよ」
・どういうことだよ
・本物のメイド……だと……?
・カッは……
・んぁぁぁぁっ!?
・こんなの男の夢すぎるっ……!
・主従関係できてんじゃん! くそぉ、くそぉっ……!
・俺も美少女妖精メイドに『ご主人様』って呼ばれてぇよぉっ!
・メイドカフェみたいに媚びなくてちゃんとした主従関係なの尊い
・いっ……いいなぁぁぁ……(血涙)
・アネファン……こんなに夢があるゲームだったのかよ……!
・ちょっと俺も本気出すわ
・ここが桃源郷か
うんうん、やっぱり私の視聴者さんにはクリティカルが入ったようだ。皆好きそうだしね……
私は現実の方でもメイドがいるから、こういうのには慣れてるけど……それでも、妖精族だとか猫人族だとか、色々な種族の美少女達がメイド服を着ている光景は初めてだ。
しかもゲームだからか皆美人で……ふへへへ…………。
ちなみに、妖精族の子は数人いる。【テルクシノエ】で声をかけたら応募が殺到し、壮絶なガチバトル───じゃなくて平和的な話し合いの末、3人が選ばれたのだった。
『【テルクシノエ】を救った』ってのがあって、皆私への好感度が高くてとても良かったです。
「正直、このままメイドさん達にお世話されながら暮らすのもいいんだけど……それだと私のアネファン終了じゃん? ってことで、今後の予定だけ確認……と言うか宣言しておくわね」
・俺だったらメイドに囲まれてハッピーエンドだが
・この環境でも満足できないカローナ様っていったい……
・宣言?
・これ以上カローナ様がやることがあると?
「もちろんまだまだやることはありますよ! とりあえず、目下の目標としては……【妖仙流抜刀術】の習得と、女王蜂の討伐、ね」
お読みくださってありがとうございます。




