大出世とはこのことである(白目)
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「───と言うわけで、PKクランは壊滅させてきたわよ」
「うむ、ご苦労じゃった」
解散し、【ユピテル】まで戻ってきた私は、その足で王宮を訪れてティターニアちゃんへの報告を行った。
「それにしても『古の獣』の復活を企んでおったとは……ウェルブラート辺境伯を絞っても正体の分からなかった『強大な力』の正体がまさか、な」
「ティターニアちゃんは『古の獣』のことは知ってるの?」
「そう呼ばれている何かが存在する……程度しか知らなんだ」
「あー、ダークエルフも周りと交流がないからねぇ……あっ、ところでさ」
「なんじゃ?」
「ティターニアちゃんは……と言うか、王家に伝わる文献か何かで、エルフとダークエルフが決別した時の歴史とか残ってない?」
「エルフとダークエルフが決別した歴史?」
「うん。エルフとダークエルフがめちゃくちゃ仲が悪いって話を聞いたんだけど、話の内容におかしな点があって……当人同士じゃなくて客観的な事実が残ってないかなって」
「なるほどのう……思い当たる物は無いが、存在しないとも限らないのう。探しておこう」
「オッケー、ありがとう!」
睨んだ通り、王家には色々な本が残っていそうだ。当然歴史に関して記したものもあるだろうし、残ってるといいけどなぁ……
「して、ダークエルフは今どんな様子じゃ?」
「『古の獣』の封印は一時的だから、完全に平和とは言えないけど……外部とは関わりたくないってことでひっそりと暮らすんだと思うわ。PK達も痛い目見せたし、また襲われることは無いと思うわね」
「ふむ、それなら良いのだが……それとなく兵を巡回させ侵入者が近寄らないようにしておこう」
「それが良いかもしれないわね」
「さて……改めてご苦労じゃった、カローナよ。何か褒美を与えてやりたいのじゃが……」
「別になくてもいいわよ? そもそもプレイヤー側がやらかしたものだしね」
顎に手を当てて悩むティターニアちゃんに対し、私は謙虚にそう返す。……と言うのが建前で、内心は報酬めっちゃ欲しい!
妖精女王からの直接依頼の報酬だなんて、相当いいものに決まってるでしょ。それも普通のプレイではに入らないぐらいに!
って、正直に言えるわけもないしね。
「……そうじゃ」
私が期待に目をキラキラとさせていると、何かを思いついたようなティターニアちゃん。『いよいよか!?』とそわそわする私に対し、ニヤリとニヒルに笑みを浮かべたティターニアちゃんから、まさかの爆弾発言が放たれた。
「ちょうどウェルブラート辺境伯を取り潰して、その領地が空いてるのでな……お主は新たな辺境伯として領地を守るが良い、カローナ・ドゥ・リュミエール」
「ちょ待っ───えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
辺境伯!?
私が!?
カローナ・『ドゥ・リュミエール』って何!?
「いやいやいや……無理でしょ! 私なんて貴族とは正反対な性格してるし、そもそも領地がどうこうなんていきなり言われてできるわけないでしょ!?」
「だからお主に言っておるのだ。辺境伯は実力こそ全て……堕龍を打倒し、『古の獣』までも封印したお主には、むしろ役不足かも知れないのじゃ」
「でもですねぇ、いきなりそんなこと言われても───」
「別に、いつも敬わずに『ちゃん』付けで呼びよって、とは思っとらんぞ」
「そっちが本音かこの野郎」
「そういう所じゃ」
ハッ! しまった!
私のツッコミ魂が疼いてつい……。
くっ……さすがにもう断れなさそう……。もっと適した人がいるだろうに、私にこんなのって……。
まぁ、どうせ『私を取り込んでおきたい』って考えからだと思うんだけどね。
「あー、もう、分かりましたよ……謹んでお受け致します。ラ・ティターニア様」
「うむ、それで良い」
ティターニアちゃんは満足そうに笑みを浮かべて頷くと、片膝をついて頭を垂れる私の額に人差し指を当て、何やら言葉を紡ぐ。
魔法の詠唱のようにも聴こえるそれを唱えると同時、私の身体を淡い光が包み込み、すぐに収まった。
『プレイヤー名: カローナ が、称号 《妖精女王の加護》、《リュミエール辺境伯》 を獲得しました』
「これで、お主は正式に王国の一端を担う守人となった。更なる活躍を期待しておるぞ」
先ほどの行動は、何かの儀式的なものだったのだろう。アナウンスするよって、私に新たな称号が増えたことが明かされた。
あー……これまた次の配信のネタに困らないなぁ……。
「しかし、そうなると私の小間使い───じゃなくて専属騎士が一席空いてしまうな」
「今小間使いって言った?」
「気のせいじゃ。お主には専属秘書も続けてもらうが、今までのような頻度で頼みごとができなとなると……」
「……なんだか腑に落ちないけど……それならちょうどよさそうな人がいるけど、どう?」
「ふむ? お主の目に留まった人物がいるのかの?」
「うん、『仮面舞踏会』で会った人なんだけど、作戦のために騙して利用しちゃってねぇ……あっ、もちろん人格的にも良い人だよ」
私はティターニアちゃんに紙とペンを貸してもらうと、彼の姿を思い出しながらサラサラと描いていく。創作はあれだけど、模写は結構得意なんだよね。
「こんな感じの見た目で、身長は高めで金髪蒼眼、どこかの貴族の三男で、芸術に明るい人だったわね。それで…………こんな感じの声だったわ」
「ヴァロワ男爵家の三男、ロッシュ・ドゥ・ヴァロワでしょうか」
特徴を話しながら声真似をすると、ずっと静かにティターニアちゃんに側に立っていたライカンさんが、一人の男性の名前を出して来た。
「男爵家の三男なのね」
「声や特徴も一致していますし、比較的歴史のある家です。ほぼ間違いないかと」
「ふむ……カローナがそう言うのなら、検討する価値はあるかの……よろしい。ライカン、そのものを王宮に呼ぶのじゃ」
「畏まりました」
ピシッとした所作で一礼したライカンさんは、そのまま部屋を後にする。きっと手紙か何かを用意しに行ったのだろう。
うん、『仮面舞踏会』では私の勝手で色々と利用しちゃったし、ちょっと心苦しかったのよね……これがそのお詫びになるといいんだけど。
「ふふふ、名付けて『弱小貴族の三男に生まれた俺が、女王様に認められて専属騎士に!? 超絶ウルトラ立身出世でバカにしてきた奴らを見返します!』作戦よ!」
「なんじゃその長ったらしい作戦名は……」
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