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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第六章 ~我、陽陰相見えて調和を望む~
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対PKクラン戦 5

評価・ブックマークありがとうございます!


 駆け抜け、叩き据え、種を植え付ける。理不尽な徴収・・でHPを保ったまま暴れまわる私は、また一人のPKを撃破した。


 戦場の傍らに華やぐ真っ赤なバラから目をそらし、次のターゲットへと突きを───



「ふんっ!」


「おぉっ」



 ガキンッと金属同士がぶつかる音を響かせ、そのPKに私のマジカル☆ステッキが逸らされた。


 ……正面からだったとはいえ、『禍ツ風纒(まがつかぜまとい)』のバブがかなり乗った一撃を逸らすとは……なかなかの技量を持っていそうだ。



 PKであることを示す赤いドクロマークの横……表示されているプレイヤー名は『レグラッド』。お非~リアさんからの事前情報では、彼がこのPKクラン『髑髏會』のリーダーだ。


 私は一度距離を取り、棍棒ステッキを構えて対峙する。



「おいおい……ランカー共が揃いも揃って、なんの冗談だ?」


「冗談なんかじゃないわよ。私達は本気で潰しにきたのよ」


「クソがっ、これからいいところだってのによぉ!」



 レグラッドが声を上げ、同時に動き出す───



「っ……!」



 レグラッドが投擲したダガー……エフェクトを纏って高速で飛んでくるそれは、何らかのアビリティによるものなのだろう。


 確かに速いけど……【超越視界メタバース・ビジョン】の前には、遅すぎる!


 飛んできたダガーの下を潜り、一瞬でレグラッドへと間合いを詰める。



「【バニシング・ステップ】!」



 冷静な判断はさせない。

 一瞬フェイントを入れて、レグラッドを中心に円を描くように背後へ。まるでコマ送りのようにその途中に無数のデコイを置き、ヘイトを分散。


 紛いなりにも実力者なのだろう。背後に回る私へ即座に反応したレグラッドは流石だ……が、


 【ヴォイド・ステップ】起動!



 【バニシング・ステップ】の効果でヘイト値が0になった瞬間、【ヴォイド・ステップ】を起動する。


 その効果は、他のステップ系アビリティのコピー……私がコピーするのは、当然【インビジブル・ステップ】だ!



 認識されない時間は3秒……いや、1秒あれば十分!


 振り返ろうとしているレグラッドを置き去りに、背後から正面へ──一周して元の場所に戻ってきた私は、『ドレッシング・エフェクター』を弾いて衣替え(・・・)を終えている。


 身を包むは、黄金の重装備(ゴールデンアヴィス)。拳に宿る、目映いばかりのオレンジの灯火を───



「【ドゥルガー・スマッシュ】!」



 蓄積していた熱を、衝撃に変換! 一撃で金剛蟹を数十と屠る破壊の一撃を、多段ヒットするアビリティで叩き込む!



「っ───」



 大気を震わせるような鈍い音が連続し、私とレグラッドを中心にドーム状に衝撃波が辺りを駆け抜ける。


 レグラッドの数m背後にあった岩も粉々に吹き飛び、その威力を物語っている。



 そんな攻撃を受けたレグラッドは───



「捕まえたぜ」


「っ!?」



 レグラッドの胴体に叩き込んだ私の腕が、彼に絡め取られる。


 何が起こった!?

 【ドゥルガー・スマッシュ】が効いてない……って訳でもないか。ダメージエフェクトは出てる。


 が、レグラッドの周囲の地面が抉れているところを見ると、受け流された(・・・・・・)と考えるべきか。



 何かのアビリティ?

 困った、私が捕まるなんてね……


 腕を引こうとするも、レグラッドに捕まれた私の腕はびくともしない。見た目以上に、STRが高そうだ。



「俺がてめぇらランカーの前にノコノコ出てきた理由は分かるか?」


「さぁ、何かしら」


「勝てるからだよ」



 レグラッドが逆手に握るダガーに、アビリティエフェクトが纏わりつく。


 仕方がない。

 相討ち覚悟でもう一発……


 自由な方の拳を握り、そこに再びオレンジの光が灯る。そして───



「グフッ……!」


「っ!?」



 突如として私の視界を覆ったのは、赤いダメージエフェクト。その発生源は、レグラッドの胸だった。



「これ一対一タイマンじゃないからさ、悪いね」



 その声は、レグラッドの背後から。いつの間に現れたのだろうか、カサブランカさんが握るナイフが、レグラッドの胸を貫いていた。



「カサブランカさん!」


「横やりごめん」


「ううん、助かった!」



 拘束が緩んだ隙に、私はレグラッドを振り払う。


 カサブランカさんの職業ジョブ『エクゼキューター』は、アサシン系の最上位職業(ジョブ)だ。ターゲットを取られていない時に威力を増大する『隠密特攻』と、クリティカルで威力が増大する『急所特攻』をデフォルトで備えている。


 今のカサブランカさんの一撃はその両方の条件を満たしており、ただのナイフの刺突とは思えないほどの威力だった。



 ———はずなのに。



「首を狙うべきだったなぁ?」



 胸を貫いたナイフもそのままに、肩越しに振り返ったレグラッドはカサブランカさんにニヤリと嘲笑を向ける。



「はっ? なんで死んでな———」


「言っただろ? 勝てる(・・・)って」



 ゾクッと背筋に走った寒気に従い、私は本能のままにレグラッドから距離を取る。果たしてその判断は、正解だったようだ。



「……【進化の因子エボリューションコード——“悪魔ザ・デビル”】」



『因子とファンタジアが混ざり、覚醒する!』


『バイオファンタジア計画が進行———』


『プレイヤー名: レグラッド の種族が一時的に パンドラウス・クラーケ に変化します』



「ぅぐッ……!?」



 アナウンスが流れた直後、私は目の前に突如として現れた触手・・による一撃を避けることができず、大きく吹き飛ばされた。


お読みくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
うへぇ〜、相手も因子持ちだったよ〜……
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