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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第六章 ~我、陽陰相見えて調和を望む~
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対PKクラン戦 1

評価・ブックマークありがとうございます!


 開戦を告げる号砲は、ある日突然鳴り響いた。

 それは、アネックス・ファンタジア史に残る大戦の始まりだった。



「【ユニゾンレイド】、【ダブルディール】、【詠唱省略クイック・スペル】……【メテオ・(メテオ・)スラスト(スラスト)】!」



 天空より落下した巨大な隕石が狙うのは、PKクラン『髑髏會』の拠点である建物だ。鬱蒼とした森に隠された渓谷の底にひっそりと佇むその建物は、ウェルブラート辺境伯に毒を盛ったことで得られた情報から特定した場所だ。


 この襲撃を感知されていない間にゴッドセレスさんの強力な魔法を打ち込むというのは、考えうる最高の初手であった。



 が、



「っ!? 『設置型対物理障壁』!?」



 隕石が建物に衝突する直前、半透明のドームとぶつかり稲妻のようなエフェクトを撒き散らした。


 隕石と拮抗するその障壁は、『設置型対物理障壁』。文字通り、設置しておくとこである一定以上の威力の物理攻撃に対して自動で発動する物理障壁である。


 ただし、強力な効果を発揮する半面、相当なリソースを消費するのだ。そんなものまで用意していたとは……



「セレスちゃん!」


「押し切りますわ! 【エレメンタルバースⅣ】!」



 バフを盛り、さらに威力を増したゴッドセレスさんの【メテオ・スラスト】は『設置型対物理障壁』を砕き、建物に直撃した。


 隕石に押しつぶされて拠点が崩壊していく中、おびただしいダメージエフェクトに紛れて脱出してくる多くのPKを視界に捉え———



「GO!!」



 Mr.Qの声が響く。その声を合図に私達は一斉に突撃を開始した。



「敵襲!」

「対物理障壁が逝った!?」

「誰だそんなやべぇ攻撃放った奴!」

「黙れ! とにかく敵の排除を———ぐあっ!!」



 崩壊する拠点から何とか脱出したPKの一人が、Mr.Qによって斬り倒される。そんなMr.Qから逃げた先でダイヤモンドのレイピアに貫かれ、その命を散らした。



「囲まれてる!?」

「いや違う、これは———!」



 用意周到に計画された襲撃作戦だ———!



        ♢♢♢♢



「【変転コンバージョン——ポイズン・グロー】!」



 私はひとまず『冥蟲皇姫(インゼクトレーヌ)』シリーズでバトルに参加。『魔皇蜂之薙刀』によって生成される毒がバフに変換され、私のステータスを跳ね上げる。


 そして何より……



「やっぱり楽器バフは別格ね……!」



 戦場に鳴り響く二つのヴァイオリンの音色が、私達全員にとんでもない量のバフをかけていた。


 全ステータスがほぼ倍、バフの効果時間延長、リキャストの短縮etc……戦いを有利に進めるのに十分なバフをかけてくれているようだ。



「さすがファルコン……後でよしよししてあげよう!」



 訳あって今は【アンシェヌマン・カトリエール】が使えないから……【次元的機動ディメンジョン・マニューバ】を起動して一瞬でPKへと距離を詰め、薙刀で切り裂く。


 瞬時にスケートのように空中を滑って反転、次のPKへと視線を向け———



「はっはぁ! お前は重装備が苦手だったな、カローナちゃんよぉ!」



 私が薙刀を振り抜かんと身体を捻ると同時、タワーシールドを取り出したPKの一人が私へと突っ込んできた。



 作戦会議の段階での、お非~リアさんの懸念……それは、『PKである』ということは、『プレイヤーとの戦闘で勝利した』ということ。


 つまり、対人戦に慣れている……ということだ。



 アビリティエフェクトを纏う盾が私に衝突する———よりも早く。私の左手の人差し指が、耳についているイヤリングを弾いた。



「なっ……!?」



 直後、黒と金で彩られた鎧が、黄金の重装備に変化する。同時に武器も、『魔皇蜂之薙刀』から『双頭剣アンフィスバエナ』へ———


 勢いを止めぬまま超重量のアンフィスバエナを叩きつけられたタワーシールドは簡単に砕け散り、その向こうにいるPKすら容赦なく斬り伏せた。



 私の最後の枠に装備されたアクセサリの名は『ドレッシング・エフェクター』。ミューロンちゃん謹製の、装備を一瞬で替えるアクセサリである。


 クリスマスツリーを逆さにしたような形で、枝の先には『白と黒』、『黒と金』、『金』、『オレンジ』、『赤』、『ピンク』、『白と赤』の7つのクリスタルが付けられている。


 これらのクリスタルに今の私の装備が登録されており、指でクリスタルを弾くことで装備をより出すことができるのだ!



 今は『金』のクリスタルを弾いたことで、『ゴールデンアヴィス』シリーズを呼び出したわけだ。


 これめちゃくちゃ欲しかったやつ……やっぱミューロンちゃん最強ね!



「ふっ……!」


「ぐあっ!」



 タワーシールドを持ったPKを斬った後、私の背後から近づいてきていたPKを、アンフィスバエナを踵で蹴って下から斬り上げる。



「近づくな! 威力がやべぇ!」



 いい加減、『ゴールデンアヴィス』シリーズの火力がとんでもないことに気が付いたのだろう。PK達は不用意に私に近づくことが無くなり、弓や魔法を使う者が増えてきたようだ。



 ———最初の混乱が収まり、徐々に統率が取れ始めている。



「ゴールデンアヴィスは不利……かな」



 瞬間スピードが速いものの、通常時の動きが重い『ゴールデンアヴィス』シリーズでは、遠くにいるウィザードやアーチャーの格好の的だ。


 狙いうちされる前に、私は再び『ドレッシング・エフェクター』の……オレンジ(・・・・)のクリスタルを弾く。



 『白と黒』は『ブリリアンドール』シリーズ。

 『黒と金』は『冥蟲皇姫(インゼクトレーヌ)』シリーズ。

 『金』は『ゴールデンアヴィス』シリーズ。

 『赤』は『魅惑の恋人(アミュールラバーズ)』シリーズ。

 『ピンク』は『フルール』シリーズ。

 『白と赤』は『妖仙之姫(ようせんのひめ)』シリーズ。


 ならば『オレンジ』は……



「ヘルメスさんの最新作……その名も『ラブリーチャーム』シリーズ! 対軍勢・・・装備の強さ、見せてあげるわよ!」


お読みくださってありがとうございます。

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