気を取り直して作戦会議
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「えっと、ひとまずファルコン君は今回の作戦に参加してくれるってことで良いんだよね?」
「あっ……は、はい、そうです」
「よし、それだけ分かってれば戦力になるな」
アネファンにおける『楽器』は、リズム、メロディ、ハーモニーによって味方全体にバフをかける武器である。
バフの量は演奏者の技量に依存するうえ、複数のプレイヤーによる相乗効果で凄まじい効果量となるのだ。
ただし、その扱いの難しさから、楽器を使える職業のプレイヤーはほんの極一部しかいない。
そのほんの極一部のプレイヤーの中の、トップ2がこの場に集まったのだ。それだけでも重畳だろう。
「オッケー、改めて確認するけど……各クランからもメンバーを集めるんだろ? セレスちゃんとダイヤモンドさんのところはどう?」
お非~リアさんに代わって司会を始めたMr.Qが、セレスさんとダイヤモンドさんに話を振る。
Mr.Qの言う通り、参加メンバーは多いに越したことはない。PKクランがどれだけの規模なのかも分かってないしね。
「私の『パレードリア』はもちろん参加しますわ!」
「『ジュエラーボックス』もいけるぜ? むしろ、PvPは得意分野だ」
セレスさんは玩具を与えられた子供のような、ダイヤモンドさんは獲物を狙う肉食獣のような表情を浮かべ、そう答える。
「敢闘精神旺盛で助かるよ。『ディー・コンセンテス』からは俺とカローナちゃんとスターの3人が出る。ヘルメスは戦闘職じゃないし、ミカツキちゃんとPKを戦わせるのは、ね……」
「まぁそうだよな」
「その代わり、3人ともが一騎当千の実力者だ。期待してくれよ?」
「自分で言っちゃうあたり自意識過剰なのよねぇ……」
「実際、お三方は我々も認める実力者ですよ。我々『銀龍聖騎士団』ももちろん参加いたします。何者からも守る盾となりましょう」
「あー……俺のところは5人しか居ないけど良かった?」
「オウガ様は仮面ライダーでしたものね」
「仮面ライダー?」
「えぇ、あの、日曜日の朝に放送している仮面ライダーですわ。オウガ様のクランは、あの仮面ライダーをアネファンの中で再現しているのですわ」
「ま、詳しくは『仮面ライダー』じゃなくて『マスクドヒーロー』だけどな。ロールプレイも楽しいもんだぜ?」
「へぇ、そういう職業もあるのね」
ってことは、戦闘が開始した時に『変身っ!』とか、ライダーキックとかするのかな? めっちゃ動画映えしそうだと思うのは私だけ?
「カサブランカは……クランの話とか全然聞かないけど、そこんところはどうなの?」
「俺? 俺クランに入ってないんだよね」
「えっ、そうなの?」
「うん。元々リア友と一緒にやってたけど、ランカーになってから騒がれるのが嫌でさ、脱退してソロになったんだよね」
「……色々聞いてみたいこともあるけど、『エクゼキューター』的にはソロのほうが行動しやすいんだし、良いんじゃない?」
「あの、ボッチじゃないからね? クランに所属してないだけで、友人とは普通にプレイしてるからね?」
「うっし、じゃあ作戦なんだけど」
「ちょっと!!」
「ふふ……カサブランカさん、弄られ側にようこそ♪︎」
私はここぞとばかりにカサブランカさんの肩を組み、こちら側へと引き込む。私は『脳筋弄り』、カサブランカさんは『ぼっち弄り』。
仲間だね!
「いや、カローナちゃんと一緒にしないで……」
「何言ってんのかしら、カサブランカさんはもうこっち側よ?」
「とりあえず、初手から奇襲かける以外に方法は無いよな」
顔を若干赤くして私を押し退けるカサブランカさんを横目に、Mr.Qは話を再開していく。
「最善手はセレスちゃんの【アポカリプティック・サウンド】を【ダブルディール】でぶち込んで全員即死なんだけど……」
「【アポカリプティック・サウンド】は詠唱が長い上に、実は効果範囲が広くありませんので……防がれるか逃げられるかしそうですわね」
「だよなぁ……絶対見張りとか置いてそうだし、詠唱に時間がかかるような攻撃は奇襲にはなりにくいか」
「【極魔の滅却】も同じか……としたら、【メテオスラスト】が妥当か?」
「それか、カローナちゃんのあれか」
カサブランカさん発言に、一斉に視線が集まる。カサブランカさんが言う『あれ』とは、間違いなく【恋人】だろう。
まぁ確かに、PKクランの拠点全部をカバーできるぐらいの範囲まで蔦は伸ばせそうだけど……。
「いや、カローナちゃんの【恋人】はなるべく温存した方がいいだろう」
「だネ。俺もそれが温存されてるかされていないかで、戦いやすさが全く変わるから」
「ナンバー1、2が言うならそうなんだろうな。じゃあ、セレスちゃんが開戦の合図かな?」
「お任せくださいな! ド派手に一発決めてあげますわよ!」
「よし、それでいこう。その一撃で決まることは無いだろうけど、戦力を削れればそれで十分。その後は……もう皆にお任せかな?」
「皆白兵戦が得意だろうし、目に付いた敵をとりあえず斬ればいいだろ?」
「一応、『銀龍聖騎士団』から数名ずつ、各クランに団員を派遣しますね。皆さん遠慮なく盾として使っていただければ」
「助かるよ。じゃあ次に、敵が逃げた場合のバックアップ要因を———」
流石はプロゲーマー。
チーム戦もお手の物のようで、様々な場合を想定して次々と作戦が立案されていく。
……私はその辺り苦手だし、とりあえずMr.Qにお任せしておきましょうか
お読みくださってありがとうございます。




