表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第六章 ~我、陽陰相見えて調和を望む~
244/300

AIには勝てなかったよ……

評価・ブックマークありがとうございます!


「おい、本物のカローナ様だ……」

「可愛い……普段画面の向こうで見てる人が目の前に現れると、なんか不思議な感じがするな」

「ミューロンちゃんに個室用意してもらえるとか、どんだけVIP待遇なんだよ……」


「あの、ミューロンちゃん……これは……?」



 かつて、スペリオルクエスト『親愛なる────へ(ディア・キャロル)』においてセレスさんとペアを組んだときのように、一面がガラスになっている戦闘用ルームへと入ったはいいけど……なんだかギャラリーが多すぎませんか?



『カローナ様は、注目を集めることこそが本望だとお見受けしましたので。貴女の戦闘が見られると、私がアナウンスしました』



 間違ってない、間違ってないんだけどさ……私の手の内を公開するのはまた違うんだよなぁ……。


 いや、まぁ、今まで色々配信しておいて何を今さらって感じだけどさ。



「ま、別にいいわよ。配信の中でも外でも、見られて恥ずかしいことしてるつもりはないし。んで、今回のお相手は?」


『もちろん、モデル《Almighty》です』



 部屋の中央部分の床が開き、私より一回りも二回りも大きい人型の人造生物が現れる。


 それはかつて、私とセレスさん、ヘルメスさん、ジョセフさんの4人を同時に相手取って圧倒して見せた、ミューロンちゃんが誇る最強の兵士───



「───あの、なんか腕が4本あるように見えますが? あと尻尾もあるような……」


『はい。あれからさらに改良を重ねました』



 現れたモデル《Almighty》は、腕が4本に尻尾もあり、ギリギリ人型・・と言えるかどうかという、凶悪な形をしていたのだ。



「いきなり《Almighty》かよ」

「あいつの撃破報告ってあったっけ」

「いや、まだないはず……ってか、カローナ様のスピードにセレスちゃんの魔法乗っけて、最近スターストライプの火力も備えてんだろ?」

「なにその決戦兵器……」

「おいおいおい、死んだわあいつ」



『ファンタジアのリミッターは解除されていないとは言え、全てのステータスが理論上の限界値に到達しています。さぁ、カローナ様の全てを見せてください!』



 理論上の限界値って……私達プレイヤーが厳選してステ振りしてるのに、こいつは全部に入れてるってこと?


 なにそのチート……



 とりあえず、装備を『魅惑の恋人(アミュールラバーズ)』シリーズに変更。『影面舞踏姫シャドウ・マスカレード』を使いこなすには、今のところこの装備しかないからね。


 武器は……まぁ『ヴィルトゥオーソ』でいいかな。



 諸々の試運転を行うには丁度いい。ミューロンちゃんの期待通り、新しいアビリティも見せてあげるわよ。



見えるんだったら(・・・・・・・・)、ね」


「ッ!」



 直後、唐突に戦闘が開始された。

 動き出したのは同時───


 私は【アンシェヌマン・カトリエール】、【次元的機動ディメンジョン・マニューバ】、【メタバース・ビジョン】で機動力と動体視力にバフをかける。



 そして───



「うーわっ」



 思わず声が出たのは、《Almighty》の行動を見たからだ。


 セレスさんが指先の動きで魔法を発動できるように、この《Almighty》も同じことができる。それを4本の腕でやったら───


 その答えは、《Almighty》の前を埋め尽くすように5つ同時に展開された魔法陣が示していた。



 一発一発が軽く私を消し飛ばす威力。逃げ場は───



「こっちしかないよねっ!」



 直線移動、空中ジャンプ、空中滑走を利用し、一瞬で背後に回った私は……私のスピードと同じスピードで振り返り、私に狙いを定める《Almighty》を睨めつける。


 魔法陣の隙は、《Almighty》の背後にしかなかった。それは当然相手も分かってるわけで……私は行動を上手く誘導されたわけだ。


 ただステータスが高いだけじゃなくて、戦術を組み立てる頭の良さに、相手の強みを潰してくる狡猾さ……確かにこれは、レベル100を越えていても容易に勝てる相手ではないだろう。


 私でなければね。



「【バニシング・ステップ】」


「「「っ!?」」」

『なっ……!?』



 ギャラリー達は、そしてミューロンちゃんは初見だろう。私の姿が無数に分裂する瞬間を。



 そして、直後に首を刎ねられ、崩れ落ちる《Almighty》の姿を。



        ♢♢♢♢



 ヘイト値を消費して、それに応じたデコイ(・・・)を生成する【バニシング・ステップ】。『影面舞踏姫シャドウ・マスカレード』の効果によって戦闘開始時にヘイト値が100%上昇し、最大値である200%に到達していたそれを全て消費した私は、計20体のデコイを生み出した。


 《Almighty》の反応速度であれば……いや、超速の反応速度があるからこそ、そのデコイに目を奪われてしまう。



 しかし、その中に本体の私はいない。

 【バニシング・ステップ】を使用した直後の私のヘイト値は0%。

 つまり、誰にも見られていないのだから。



 そして私は、【インビジブル・ステップ】を発動した。ほんの3秒間だけ、私はヘイト値0%のまま固定……つまり、誰も認識できない3秒間を利用できる。



 それだけ時間があれば、【閃旋蜂壊せんせんほうかい】をクリティカルでぶち込むには十分だ。


 『装甲貫通』、『クリティカル特攻』、『強制ダウン』、『装甲破壊』の効果を持つ【閃旋蜂壊せんせんほうかい】は《Almighty》のVITを軽々貫通し、一撃でHPを消し飛ばしたのだった。



「……は? 何が起こった?」

「えっ……一撃……?」

「いきなり分身したと思ったら相手が死んだんだが」

「ヤバい…すごいことが起こったんだろうけど何も見えなかった……!」


『強すぎ……ませんか?』


「ま、初見殺しだったしね……今の戦闘を解析すれば、ミューロンちゃんならすぐに対策は立てられるでしょうし」



 デコイを何体生み出そうと、私がいくら認識されなかろうが、丸ごと巻き込むほどの範囲攻撃を撃たれたらどうしようもないしね。



「ってわけで、ミューロンちゃんの依頼はこれで———」


『いえ、まだです』


「えっ?」


『私が欲しい戦闘データは、まだまだ足りていません。次はモデル《Vitality》です』



 ミューロンちゃんの声が響くと同時に、床が開いて新たな敵が現れる。全身を鎧のような甲殻に包んだ、明らかに重量級タンクのような見た目の人造生物だ。



「……次はこいつを相手にしろと?」


『はい、等価交換ですからね。私が十分だと思えるほどでなければ、報酬はお渡しできませんね』


「くっ……!」



 そう言われると断れないじゃない……これが人間の感情まで学習したスーパーAIの実力かっ……!


お読みくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ