この人、意外と気さくなんだ……
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翌日、私は『銀龍聖騎士団』の拠点の一室を借りて、カサブランカさんと対面していた。なんと、お非~リアさんは一日でカサブランカさんとのアポを取ってくれたのだ。
律儀だなぁ……。
そんなわけで私の目の前にいるのは、総合ランキング3位……『エクゼキューター』のカサブランカさんだ。
相変わらずの初期装備……に扮した、高リソース装備で全身を固めている。
「カサブランカさん、久しぶり!」
「うっす、お非~リアさんから話は聞いてるよ」
「カサブランカさんは協力してくれる……よね?」
「まぁ……詳しくは知らんけど、昔からあいつらを潰すって話はあったしな」
「……カサブランカさんも『髑髏會』側だったりしないよね?」
「マジで止めて……大体、PKした奴はゲーム内じゃ犯罪者扱いだからな。ランキング系には乗らなくなっちまうんだよ」
「ってことは、ランカーはPKではないってことね?」
「そういうこと。アサシン系の職業使ってるけど、俺は健全なプレイヤーだぜ?」
「それは良かった! カサブランカさんがいると心強いわね♪」
「あんた一人でも行けるだろうに……」
「流石にそれは買い被りすぎよ。あなたにももう【恋人】は通用しないでしょ?」
「まぁね。もちろん対策は考えてるよ」
「流石トップランカー」
「んで、話はそれだけか? それだったらもうお非~リアに……」
「あーっと、ここからは私的な話なんだけど……カサブランカさんの暗器って、どこで仕入れたの?」
「……なんで?」
「ん~……まぁ言っちゃうと、私新しい職業手に入れてさ、暗器が使えるようになったから、優秀な暗器が欲しいなって」
「えぇ……ここに来て職業進化するのかよ……」
「ちょっと、引かないでよ。私だって予想外だったんだから」
「はぁぁぁぁ……また対策考えないとダメじゃんよ……」
「わ、私は別にPvPやったりしないから……」
「そういう問題じゃないんだよ。一回負けてるんだから、次は勝たなきゃプライドが許さねぇんだよな」
「PvPがメイン戦場の人の闘争心よ……」
「そういう人種だからさ」
「それで、暗器の件……ダメ?」
「別にいいんだけど……俺のクランに暗器専門の生産職がいるんだよ。そいつに頼んでもいいけど」
「マジ? ホントに助かる!」
「その代わり、俺からも一つ頼んでいいか?」
「もちろん! 私にできることだったら言ってね」
「ツーショ撮っていい? できればメイド服で」
「えっ……そんなことでいいの?」
「いや……俺のリア友がカローナちゃんの大ファンでさ、こないだの敗戦でめちゃくちゃ煽ってくるから自慢しまくってやる」
「あはは……そんなことなら、何枚でも撮るよ!」
UIを弄り、『ブリリアンドール』シリーズに変更。ついでにモップも取り出し、準備万端だ。
というわけで、一旦の撮影タイム。私がハートマークの半分を作ると、カサブランカさんはサムズアップで対応してパシャリ。
「なんで私がフラれたみたいになってんの!?」
「お返しだお返し」
「なんか腹立つ~っ!」
その後もメイド服で数枚撮り、装備を変えてまた……という感じで、割りと盛り上がった。
私も仕返しとして、カサブランカさんに私のドレスを着せて、私は『星降る夜の妖精執事』で姫扱いしてやった。
イケメンがメイド服着てるギャップが……(笑)
まぁカサブランカさんも満足するぐらい撮ったから充分でしよ。
「っし、アザっす!」
「カサブランカさん、実は私のファンでしょ」
「俺は正直、あの決闘からアーカイブ見漁った口だけどな」
「『にわか』って指差されるわね」
「それ以前に、カローナちゃんと2人で撮影会とか、バレたら殺されそうだけどな」
「良いじゃない。全員決闘でボコるんでしょ?」
「まぁ、負ける気はしないわな」
「流石トップランカー……それで、私の暗器の件なんだけど……」
「あぁ、どんなのが良いのか教えくれれば伝えておくけど」
「って言っても、私は暗器について全然知らないからなぁ」
無難にナイフかな、とは思ってるけど、手札が多いことには越したことはないしね。
「ん~……アサシン系の職業にも2種類あってさ。なるべくヘイトをはずして隠れながら行動する隠密タイプと、無害な容貌に擬態して暗殺する騙し討ちタイプと。カローナちゃんの場合はどっちよ?」
「あー、多分どっちもいけるタイプだけど、アビリティを考えれば隠密タイプ……かな?」
「なら、そこまで手の込んだ偽装武器は作らなくて良いわけだ」
「偽装武器?」
「あぁ。騙し討ちタイプの場合、相手に見せてる武器の見た目と性能が同じなら、騙し討ちにならないだろ? 普通のナイフに見えて、いきなり刃が飛んでくるとか……そういう風に虚を突けるから騙し討ちになるんだよ」
「あー、なるほど。分かりやすい」
「けど隠密タイプなら、そもそも姿を相手に見せないからな。武器を偽装する必要もない」
「カサブランカさんの暗器は、結構見た目通りの性能だったわよね?」
「俺は『曲芸師』があるからな。【ウェポンリロード】で即座に武器を入れ換えられるから偽装する意味があんまり無いんだよな」
「なるほどね……というか、そういえばカサブランカさん、銃とか持ってなかった? あれってどうやって?」
「あれ? カローナちゃん持ってなかったんだ。『ディア・キャロル』でレベルキャップ解放するついでに、ミューロンのデータ集めに協力したら貰えたけど……」
「えっ、そんなの知らない……」
「『ディア・キャロル』に一番乗りだったのにそんなことある?」
「あのクエスト、めちゃくちゃ大変だったんだからね!?」
「ま、お陰さまで俺は楽にレベルキャップ解放できたよ」
「くっ……ミューロンのやつ、後でしばいてやる……」
「でも既製品の銃じゃちょっと威力が弱くて……一から作ったやつか、そもそも使わない方が懸命だと───」
「待って。このゲーム、銃を一から作れるの?」
「できるんじゃね? 武器のデータファイルの中に、銃の設計図も入ってたし」
マジですかぁ!?
そんなの知ったら……もう作るしかないじゃんよ!
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