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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第五章 ~猜疑に満ちた仮面舞踏会~
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猜疑に満ちた仮面舞踏会 7

評価・ブックマークありがとうございます!


 さて、『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』の3回目だ。今回もドレスを新調し、仮面だけ同じものを使って参加することにする。


 最初の2回は情報収集に費やして、今回が勝負のつもりだ。



「お嬢様、ようこそ『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』へ」



 ってことで、少し遅れて私は参加。

 昨日の青年に捕まると逃げられなくなりそうだから、その前にウェルブラート辺境伯の発見と、偏屈爺さんとの接触をしておきたい。



「おじ様、わたくしと少しお話してくださらない?」


「おや、これは素敵なお嬢様だ。私で良ければぜひ」



 適当に男性を捕まえて情報収集開始。

 多少なりとも、有益な情報が得られることを期待しよう。









「それで、あの空に浮かんでいる浮島には、初めて見るモンスターがいてな」


「どんなモンスターなのです?」


「ロック・リザードに似ているが、奴よりもはるかに大きく、何より二足歩行だった」


「二足歩行って……」


「あぁ、いや、我々のように直立しているわけではないぞ? こう……後ろ脚で立って、前屈みの状態で歩く感じだな」


「もしかして……尻尾が長くて、翼が生えてるとか……」


「いや、翼は無かったな。鱗が非常に硬く、爪も牙も凄まじく強靭……何とか逃げ切ったが、なかなかに怖い思いをしたな」



 巨大なトカゲっぽいモンスターで、翼は無いからドラゴンではなさそう。牙も爪も強靭……ってなると、どう考えても『恐竜』しか思い浮かばないんだけど?


 まだ浮島には行ったことないけど、まさか恐竜らしきモンスターがいるなんて……。


 『親愛なる────へ(ディア・キャロル)』でティラノサウルスは見たけど、あれはミューロンちゃんが作った個体だったんだっけ。


 ってことは、その浮島にいる奴がオリジナルの可能性があるのか……


 やばい、この人の話、面白いぞ?


 新種らしきモンスターの話を聞いて、じっとしてられる配信者なんていないでしょ!



 ……いかんいかん、今は別のクエストの途中だった。

 でもなぁ……このクエスト終わったら、いよいよ浮島にも足を延ばしてみるかな。



「———首尾はどうなっている?」



 ふいに聞こえてきたその声を、私は聞き逃さなかった。

 間違いない、ウェルブラート辺境伯の声だ。


 位置的には、私の斜め後ろか……視界に入っていないのは不安だけど、怪しい動きをするわけにもいかない。


 ひとまず会話は続けながら、耳は後ろのウェルブラート辺境伯の会話へと傾ける。聞くのと話すのを同時に熟すのは難しいけど、マルチタスクが得意な私なら何とかなる。


 ひとまずこっちの会話を……



「そんな世界があるなんて、初めて知りましたわ……!」


「君はあまり外に出られなかったんだったね。もしよければ、連れて行ってあげようか?」


「でも、少し怖いですわ……戦うことなんてできませんし……」



 嘘である。

 行きたくてめっちゃうずうずしてるけどね!



はたくさん用意できそうです。いつでも送りましょう」


「ありがたい。私の飼い犬(・・・)は最近特に食いしん坊でなぁ……金がかかって仕方がないのだ」


「優秀な冒険者達に集めさせていますから、必要な分はすぐにでも集まりますよ」



 飼い犬……?

 この世界にも、ペットを飼うっていう習慣はあるのかな?

 まぁ、私もカルラを連れてたりするし、そういうのもあり得るかもね。



「ふむ……確かに、興味があったとしても、少女を怖がらせてまで連れ歩くわけにもいかないか」


「お力になれず申し訳ありませんわ……」


「ふむ、なかなか面白そうな話をしておるではないか」



 ふいに会話に入ってきたのは、聞き覚えのある声。

 そちらを振り向くと、白い髭を蓄えた大柄な爺さんの姿があった。私の悪巧み仲間の偏屈爺さんだ。



「あら、ごきげんよう」



 ナイスタイミング!


 偏屈爺さんの方を向くついでにウェルブラート辺境伯の姿を視界の端に留めておき、偏屈爺さんを会話に引き入れる。


 前回の騒ぎもあり、偏屈爺さんはあまり関わりたくないと思われている人物である。『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』の場において、個人がどうこう言うのはご法度だけど、嫌なものは嫌だからねぇ……。



 と言うわけで、私が何も知らない風を装って偏屈爺さんと会話を始めると、浮島の話をしてくれたおじ様は、スススッとフェードアウトして何処かへ行ってしまった。


 これも狙い通りよ!



「……さて、これで気軽に話せるな。小娘、今日は何を?」


「あら、人聞きが悪いですわよ。わたくしは『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』を楽しんでいるだけですわ」


「言いよるわ」


わたくしはダンスを楽しんでいますもの。昨日、わたくしを誘ってくださったお兄さま……また会えるといいのですけど……」


「ふん……お前も一丁前にレディと言うわけか……」



 偏屈爺さんがクイッと親指で示した先、数人の女性に囲まれて困ったように頭を掻く青年の姿があった。


 表情は見えないけど、デレデレしているに違いない。

 なんかムカつく。



「ふはは、彼は随分モテるようだな」


「……なんか腹立つので、悪戯に協力してくださいませんか?」



        ♢♢♢♢



「お兄さま……♪」


「っ!? き、君はなぜそんなにも背後に現れるのが得意なんだい!?」


「お兄さまを驚かせようと思っただけですわよ」



 背後から静かに近づいて、耳元でそう囁いてみた。

 今回はよほど驚いたのか、青年は吃驚した様子でそう声を上げたのだった。


 ふふ、してやったり。



「私をダンスに誘うと言ったまま、他の女性に囲まれてデレデレしているんですもの」


「違っ———ただ普通に会話をしていただけですから!」


「あら、この娘が先約と言っていた……?」



 青年を囲んでいた女性の一人が、私を見てそんな風に声をかけてきた。アニメや漫画でしか見たことがないような、見事な金髪縦ロールお嬢様だ。



「初めまして———」


「田舎丸出しの娘に見えますが、あなたはこんな娘が良いのです?」



 私のカーテシーを遮るように口を開き、青年にそう問いかける縦ロールちゃん。ほう、じゃじゃ馬お嬢様ですか……。



「そんな風に言うのは良くないと思いますよ?」


「事実ですわ。わたくしの方が、よほど上手く踊れますのに……」


「……ふふ、それは聞き捨てなりませんわね」



 私より上手く踊れると?

 随分自信がありそうなお嬢様だ。


 これはあくまでゲームだから、こんな風にバカにされても、『金髪縦ロールロイヤルお嬢様可愛ぇ……』としか思わないけど、ダンスの話となれば別だ。


 ならば、ダンスで黙らせるしかあるまい!



「お兄さま、目に物見せてあげましょう?」


「……今度は急に強気になるね、君……」



 今日は立場が逆だ。前回は青年の方からのお誘いだったけど……私が差し出した手に、青年はゆっくりと自分の手を重ねた。


お読みくださってありがとうございます。

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