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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第五章 ~猜疑に満ちた仮面舞踏会~
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猜疑に満ちた仮面舞踏会 5

評価・ブックマークありがとうございます!


 親切な男性に言われ、両手にワイングラスを携えてワインを楽しんでいる男性へと視線を向ける。


 一口口に含み、ゆっくりと飲み込んではぶつぶつと何かを呟き、さらにもう片方のワインを一口……傍から見たら、なんだか関わってはいけない感じのヤバい爺さんだ。



 『食事を楽しんでいる相手に話しかけるのはマナー違反』という暗黙のルールゆえ、話しかけずしばらくそのまま待機。


 すると……



「なんじゃ、小娘。儂に何か用か?」


「……口が悪いって言われたりしません?」


「身分も種族も関係ないのであれば、年齢が上の者の方が偉くて然るべきじゃろう」



 なるほど、一理ある。

 『年功序列』という言葉がこの世界にあるのかは分からないけど、身分や種族も関係ない『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』の場では、年齢ぐらいしか比べられるもの仕方がないのかも。


 この爺さん、できる……!



わたくしも誇り高き…………家名を言ってはダメでしたわね。立派なレディですから、小娘扱いは止めていただきたいですわ」


「『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』に慣れていないのが明らかなのじゃが」



 家名を言いかけたのは、もちろんわざとだ。

 煽られて、すぐに反論しようとして身分を暴露しかける無知な少女を演じ、わざとこう返しただけである。


 そもそも、プレイヤーである私には、名乗る家名はないからね。



「そ、それは仕方ありませんことよ。わたくしはずっとベットで寝たきりでしたもの」


「……ようやく病気が治ったから、ここにきたと」


「えぇ、ですからわたくしは、こうして外の世界を知ろうと思ってここに来たのですわ」


「ほう……で、本当のところは?」



 ……は?



「ど、どういうことかしら……?」


「外の世界を知ろうとしている割には、外の世界より他人に興味があるようだったな。そして、外の世界を知らないというには『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』の事を中途半端に知っているだろう」


「……それはお父様に教えていただいたから———」


「何より、お前は立ち居振る舞いを上手く偽装・・しているように見えるが、体幹……それとボディバランスが尋常ではないな。病弱な小娘には到底思えないが」



 わーぉ、全部バレてらぁ……。


 マジ?

 私の振る舞い、そんな簡単に見抜けるものじゃないと思ったけど。実際、この爺さん以外の誰にもバレてなさそうだし。


 これはやられたわね。



「……参りました。どうやらあなたも一筋縄ではいかないようですね」


「小娘ほどではないと思うがな。儂を前に一芝居打とうとは、思いもよらなんだ」


「ま、バレちゃったら仕方がないけどさぁ……このことは内緒でお願いね?」


「それがか……儂には何の得もないことじゃが、まぁ、小娘の胆力に免じて秘匿しておこうか」


「ありがとう!」


「その代わり、儂には小娘の腹積もりを教えてくれるんじゃろう?」


「まぁ、仕方がないですわ……わたくしはこの『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』で、ちょっとしたゲームをしているのです」


「ほう? ゲームとな?」


「えぇ……あなたには見抜かれてしまいましたが、先ほどの男性はわたくしの言うことを信じていましたわ」


「あれは見ていて滑稽であったな」


「『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』の性質上、個人の詮索はご法度……であれば、上手く話を運べば、彼らの中に様々な私(・・・・)を作り上げられると思いませんか? どれだけ相手のイメージをコントロールできるのか、興味がありませんか?」


「ふははっ……小娘、お前どんな生き方をしてきたらそんな考えになる? 儂も大概だと思ったが、お前も相当な変人だな?」



 もちろん、今の話すら作り話だけど……この爺さんにとっては、最初の淑女を装っていた時よりもよっぽど納得できる内容だったのだろう。


 しかしまぁ、この話で納得するとは……相当偏屈な爺さんだ。



「面白い、確かに興味があるな。顔が見えない状況で人が相手を判断する時、その相手の声が、言葉が、振る舞いが、どれだけ相手のイメージに影響を与えるか……アイデンティティ形成にも関わる面白い研究だ」


「あら、おじ様は哲学者か何かですか?」


「何、『自分を自分たらしめるものは何か』……そういった思考に浸るのが好きなだけである」


「おじ様も相当変人ですのね」


「その歳で他人の思考をコントロールしようという考えに至るお前ほどではない」


「言えてますわね……しかし、それもなかなか難しくて」


「ほう?」


「どうやらわたくし、会場に居る誰かに監視されているようです。あまり行動を見られたくないのですが……」


「まぁそうであろうな。手当たり次第に多くに人に話しかけていれば、当然怪しまれる」


「えぇ……なので、できればその誰か(・・)を特定して、何とか監視を外したいのですが、これがなかなか難しくて」


「ふむ……ならば、儂も協力してやろう」


「……良いのですか?」


「無論、見返りは貰う」


わたくしは何を返せばよろしいのでしょう?」


「欲しいのは情報・・だ。今シーズンの『仮面舞踏会ラ・クンパルシータ』が終わった後、お前の情報を儂に渡せ」



 私の情報を……?

 別に、私はプレイヤーだから家系がどうこうとかいう話はないし……年齢とか、ステータスとか?


 何を渡せばいいのかいまいち分からないけど、そもそも配信で公開してるようなものだし、大丈夫でしょ!



「分かりましたわ。少しだけ協力してもらいますわね、おじ様?」


お読みくださってありがとうございます。

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