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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第1章 ~彼岸の際にて再臨を願う~
23/300

こ、これがトップ配信者の実力……(ガクブル)(新キャラ登場)

評価・ブックマークありがとうございます!


自称親衛隊の4人が私の周囲をがっちり固めており、4人とも防御寄りの職業ジョブ故に、10人いるPKer達も攻めあぐねている様子。


とは言え2倍の人数差があるため打開できるかと言われればそうでもない。


さて、どうしようか……



「カローナ様っ!」


「えっ……!?」



突如として響いた私を呼ぶ声は、上空から(・・・・)


一体何が、と顔を上げる私の目の前に現れたのは、白銀のドレスに身を包み、コウモリのような翼が生えた女性プレイヤーであった。


そのプレイヤーは私のすぐ近くに着地すると、困惑する親衛隊を押しのけ、ずかずかと私に近づいてきた。



「ふふふふふ……ようやく会えましたわね、カローナ様」


「え、えっと」


「ああもうっ、そのメイド服もバチクソお似合いですわよっ! あぁ、なんて可愛らしいっ!」


「あの、あなたは」


「ふへへへへ……あなた、わたくしの専属メイドになりませんこと?」


「いや、だから」


「いえまずは親睦を深めるところからですわね。ですのでぜひコラボを」


「話を聞けぇっ!」


「っ!?」



まったく話聞かないわねこの人。まずは名前を名乗れ!

……と言いたいところだけど、名前を聞かずとも、私はこの人のことを知っている。


銀色の縦ロールをばっちり決めた印象的なヘアスタイルに、輝くような銀色の瞳。中世ヨーロッパの貴族のドレスのような、ゴテゴテした白銀のドレスを優雅に着こなし、その豊満なスタイルを惜しげもなく強調している。


そして、トレードマークである、頭に装備した悪魔の角のような2本のアクセサリー。



間違いない。この人もバーチャル配信者だ。

しかも、配信者界隈でトップを走る、登録者数500万を誇る超大手———『白銀の悪魔』の二つ名を持つ、プレイヤー名『ゴッドセレス』、その人だ。



「失礼、姫君。貴方はもしやゴッドセレス様では?」


「あらご機嫌よう。えぇ、わたくしがゴッドセレスですわ」


「無礼を承知で申し上げます。我々に協力して頂けませんか? カローナ様をお守りするために」


「カローナ様を……?」



キョロキョロと辺りを見渡すゴッドセレス。何やら顔を突き合わせてひそひそと話しているPKer達や、遠巻きに囲んでいる野次馬達を認めたゴッドセレスは、再び私達の方へと向き直った。



「決闘か何かの最中ですの?」


「え、何も知らずに来たんですか?」


「ゴッドセレス様、よく聞いてください。カローナ様は今まさにPKerに襲われているところなのです」



神妙な表情のオルゾ・イツモのその一言を聞き、一瞬でゴッドセレスの目つきが鋭くなる。



「『プライマルクエストの情報を寄越せ、断れば、吐くまでリスキルする』、と———」


「ふふ、ふふふふふ……」


「っ———!?」



背筋に走る悪寒に思わず身構えるのと、ゴッドセレスがインベントリから自身よりも大きい白銀の杖を取り出したのは同時。



「———【伏魔殿パンデモニウム】」



音を立てて杖を地面に突き立てる。

直後、ゴッドセレスを中心に薄紫色のドーム状の壁のような物が構築されていく。


PKer達が気付いた時には時すでに遅し。


私達とPKerを隔離したバトルフィールドの中心で、白銀の悪魔が嗤った。



「えぇ、えぇ、よぉく分かりました。つまり、あの者達を消せばいいのですわね?」


「くっそ、やっぱり最初から逃げとけばよかったじゃねぇか!」


「てめぇが『セレスも狩れるんじゃね』とか言うからだろ!」


「こうなったら仕方ねぇ! やるしかねぇだろ!」



自棄やけになったらしいPKer達が、ゴッドセレス目がけて一斉に動き出す。それでも、迫り来る10人を前にして尚、ゴッドセレスの笑みは崩れない。


私もゴッドセレスの配信を見ているから、その余裕がどこから来るのかもちろん知っている。


———何しろゴッドセレスは、ゲーム内ランキング5位につける、バリッバリのトップランカーなのだから。



「【魔神解放】、【詠唱省略クイックスペル】、【アトミック・———」


「なっ」

「ちょっ、まずっ」



初手の【魔神解放】で魔法攻撃にバフをかけ、【詠唱省略クイックスペル】で詠唱を省いたアビリティを口遊くちずさむ。


間合いを詰めようと走り出していたPKer達の足元の地面が突然ひび割れ、その隙間から赤々と燃える光が漏れ出した。



「———マントラ】!」


「「「どわぁぁぁっ!!」」」



地面を割り、灼熱の柱が牙を剥く。

地の底から湧き上がったマグマが間欠泉のように吹き上がり、直撃したプレイヤーのHPを消し飛ばし、掠めただけのプレイヤーをも四肢欠損の重傷へと追い込む。


あまりに凄惨な光景に思わず目を覆いたくなるが、悪魔セレスは更に笑みを深めていく。



「【ヴェリタスイデア】起動。【ダブルディール】。呪文詠唱……“母よ(母よ)母よ(母よ)何処へ行く(何処へ行く)———」


「っ!? なっ……に、これっ……!?」



ゴッドセレスの戦いぶりを見ていた私の口から漏れたのは、紛れもない驚愕と、少しの恐怖が入り交じった感想だった。


何しろ、副音声でも流しているかのようにゴッドセレス一人の口から2つの声が出ているのだから。



【ダブルディール】は、任意のアビリティ一つをリキャストに関係なく2回発動可能にするアビリティだ。2回目を発動した後のリキャストが通常の2倍になるというデメリットがあるが、強力なアビリティを連続で発動できるようになるという強力な技である。


しかし、それをまさか2回同時(・・)に、しかも魔法の詠唱として使用するとは思わないだろう。どうやっているのか見当もつかないが、BANされていないからチートではないことは分かる。


えげつないPS(プレイヤースキル)だ。



見ている全員が度肝を抜かれ、呆然としている間にもゴッドセレスの詠唱が進んでいく。



「“奈落より産まれし(奈落より産まれし)無垢なる産声が(無垢なる産声が)飲むは万の命と祈り(飲むは万の命と祈り)”」


「「「止めろぉぉっ!!」」」



ゴッドセレスが発動しようとしているアビリティの正体が分かっているのか、PKer達が一心不乱にゴッドセレスへと襲い掛かる。なんとしても詠唱を止めなければという必死さを感じるけど……それほどのアビリティなのだろう。


初撃の【アトミック・マントラ】で数人削ったとはいえ、無傷のPKerは5人。ある者は剣を振るい、ある者は槍を構え、ゴッドセレスへと吶喊する。


しかし、それらは全てゴッドセレスが軽く腕を振るモーションから放たれるアビリティによって阻まれ、届かない。



——アビリティ【ヴェリタスイデア】——

一定時間のみ、詠唱の代わりに特定のモーションによって魔法を発動可能にするバフ、『オーバードライブ』効果を自身に付与するアビリティである。これにより、アビリティの詠唱中にも別のアビリティを使用できるのだ。



「“産まれ落つるが(産まれ落つるが)罪なれば(罪なれば)嘆く怨嗟は(嘆く怨嗟は)命乞う意思すら挫く(命乞う意思すら挫く)”」


「まずっ」

「ちょっ、マジでこいつ脳ミソ何個あんだよ!」



指先から展開した魔法陣が剣を防ぎ、腕を振るって発動した風魔法が背後に回ろうとしていたPKerを押し返す。


脚を踏み鳴らせば、黒い鎖がPKerを縛り上げ、その鎖を握ってプレイヤーを投げ飛ばす。その動きで誘発した炎の壁が彼らの脚を止め、ただの一人も後ろに通さない。


そうこうしている間に、ゴッドセレスの詠唱が完了する。



「“我が名は終焉(我が名は終焉)破滅をもたらす我に(破滅をもたらす我に)静寂と安寧を与え給え(静寂と安寧を与え給え)”———』




——【アポカリプティック・サウンド】



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