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アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第五章 ~猜疑に満ちた仮面舞踏会~
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頂上決戦 前編

評価・ブックマークありがとうございます!


『Mr.Q vs スターストライプ、決闘開始!』



 開始を告げるアナウンスが鳴り響くと同時、Mr.Q(クウ)は漆黒の剣、『ネグロ・ラーグルフ』を手が届く範囲の地面に突き刺し、左腕にバックラーを装着しているものの、両手が空いた状態にする。


 対するスターストライプさんは、クラウチングスタートのように姿勢を低くし、左手を地面に付いた前傾姿勢となっている。右手はぼんやりとアビリティエフェクトを纏い、何らかのアビリティを準備しているのが分かる。



 その状態で互いに睨み合い、タイミングを伺う2人。



「意外と静かに始まったけど……緊張感あるわね」


 ・これだけトッププレイヤーになると、下手に動いたら一気に終わるからな

 ・意外とすぐには動かないんやね

 ・カローナちゃんはどう見る?

 ・つーか剣握らないんや



「うーん……今距離が10m以上空いてるし、剣を使う距離じゃないもんね。スターストライプさんはとにかく間合いを詰めたい、Mr.Q(クウ)は近付けたくない。剣はいざという時の保険……かな」


 ・スターストライプは明らかに突っ込んでくる体勢だしな

 ・真っすぐ来るなら見切りやすいし、Mr.Qなら弾けるのでは?

 ・セレスちゃん×イシュタムのチートコンボを除けば、スターストライプは瞬間火力ランキング1位だぞ

 ・軌道が分かるからと言ってそのままぶつかるには怖い火力だよな

 ・ならカウンターの準備か?



「スターストライプさんだったら、カウンターを仕掛けても当ててくれないかもね……私がMr.Q(クウ)の立場だったら……魔法の発動で身体を隠しながら、スターストライプさんを動かすかな」



 『自分から動く』のと、『相手に動かされる』のでは天と地ほどの差だ。だから魔法の発動でスターストライプさんを動かして、逃げるのならそれまで。


 向かってくるなら、操糸術で牽制して一戦……かな。



 そんな風に視聴者さんと話していると、ついに動き出したようだ。

 先手はMr.Q(クウ)

 最初の一手は……私の予想通り、魔法の発動だった。



 Mr.Q(クウ)の目の前に、彼の身体を隠すほどの魔法陣が現れる。それを見たスターストライプさんは即座にスタートを切り、その加速を【アクセルダイブ】の移動攻撃へと繋げ———


 スターストライプさんが一歩だけ横にずれた直後、一瞬前まで彼がいた場所を、黄色っぽい矢が通り抜けていった。


 おそらく、Mr.Q(クウ)が放った『麻痺効果』を持つ魔法矢だ。ミカツキちゃんも使っていたそれを、魔法をキャンセルして魔法陣が消えるまでの1秒の間にインベントリから取り出して放ったのだ。


 そして、それを読んでいたスターストライプさんはいとも簡単に避けて間合いを詰めていく。



「今の避けるんだ……」


 ・判断が速い

 ・よく矢を放つタイミングが読めるな

 ・1秒で弓を取り出して矢を放つところまでいくMr.Qも大概



 スターストライプさんが避けるのも当然だとばかりに表情を変えないMr.Q(クウ)は、即座にを取り出して展開する。



「【アヴィス———」


「ふんっ……!」



「上手っ」


 ・地面を殴って回避!?

 ・糸が届……かないっ!

 ・完全に当たると思った

 ・下手したら数mmの神回避やんけ



 『マリオネッター』の強力なアビリティ、問答無用で相手を縛り上げて行動不能にする【アヴィス・アラーネア】が発動する直前、スターストライプさんが地面を殴り、その反動でMr.Q(クウ)の頭上を飛び越える。


 【アヴィス・アラーネア】の有効範囲のギリギリ外をなぞるような、完璧な回避だ。


 Mr.Q(クウ)の【アヴィス・アラーネア】は不発。

 その背後に着地したスターストライプさんの拳に、雷のようなエフェクトが纏わりつく。


 その瞬間。



「っ!」



 【アヴィス・アラーネア】によって絡めとられた『ネグロ・ラーグルフ』が、ものすごい勢いでスターストライプさんへと飛んでくる。


 容赦なく眉間に向けて放たれたそれを、スターストライプさんは上体を逸らして躱し、高速の打撃アビリティ、【ブリッツ・インパクト】で———



 対するMr.Q(クウ)は、スターストライプさんが避けている間に取り出した『糸通し(ニードル・スレイダー)』を片手に【ラディエル・カウンター】で迎撃を準備していた。


 そのまま突っ込めば、強力なカウンターによって手痛い反撃が来るが……



「ふはっ!」



 思わず笑い声を漏らしたスターストライプさんは、【ブリッツ・インパクト】をわざと空振り(・・・)。カウンターアビリティに当てないことで、反撃を回避したのだ。


 腕を振り切った勢いで回転するスターストライプ。

 互いにアビリティの不発で数瞬の硬直が入った後———



「【カラミティ・ストライク】!」


「【グラン・ペネトレイション】!」



 ガード読みで放ったスターストライプさんの貫通攻撃アビリティ【カラミティ・ストライク】と、同じく貫通攻撃の【グラン・ペネトレイション】がぶつかり合う。


 赤黒いエフェクトが弾け、周囲に衝撃波をまき散らすも、相殺・・が起こったことによって2人へのダメージは0だ。



 ギリギリと鍔迫り合いをしていた2人は、互いに不敵な笑みを浮かべた後に離れる。


 僅か十数秒の攻防。

 たったそれだけで、見ている者全てに尊敬と畏怖を与えるほどのものだった。


 撃ち、避けて、次の行動へ———一切無駄がなく、ノンストップで展開されるその攻防に魅入られたのは、私も同じだった。


お読みくださってありがとうございます。

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