初めてのPvP配信! 2戦目決着!
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一瞬で振り抜かれれたのは、超重量であるはずの『双頭剣アンフィスバエナ』。踏み込みよりも遥かに速いそれは、まさに神速と言っても過言ではないだろう。
さしものプテラの丼さんも理解が追い付かなかったのか、驚きの声を上げたのは、斬り飛ばされて宙を舞った彼の左腕が地面に落ちた後だった。
「なんっ……だそれっ!?」
「サポート入るっ!」
このまま私とプテラの丼さんの1対1はまずいと判断したのだろう。ミカツキちゃんを無視してこちらに迫ってきた模熱さんが、剣を抜いて私に斬りかかる。
けど、今は【メタバース・ビジョン】の効果時間中だ。
振り下ろす剣の切っ先さえ、今の私にははっきりと見える!
「ふっ……!」
「なっ───」
地面に突き刺したアンフィスバエナを支点に身体をグルリと回転、振り下ろされる剣をギリギリで躱し、反転した勢いのまま踵でアンフィスバエナの刃を蹴り───
ドパァンッ!
破裂音を響かせながら、『ゴールデンアヴィス・プリアポッド』から放たれた衝撃波がアンフィスバエナに炸裂する。
その衝撃波は超重量のアンフィスバエナを軽々と弾き飛ばし、軋む私の腕を支点に半回転しながら模熱さんの片腕を斬り飛ばした。
「グッハッ!? 待っ、速すぎ───」
「まだ行くわよっ!」
半回転したことで、模熱さんの腕を斬った方と反対側の刃は、再び地面に突き刺さっている。これを───
「せぇいっ!」
「うぉぉぉぉぉっ!」
ぶん殴る!
再びの炸裂音。
今度は軌道を変え、身体を回転させながら水平に振り抜く。
その一撃は、プテラの丼さんが取り出したタワーシールドに直撃し、軽々と粉砕。それでも勢いは止まらずノックバックされた彼は、後ろにいた模熱さんとぶつかって二人一緒に地面を転がっていった。
・待って
・なんだその膂力!?
・明らかに威力がおかしい
・蹴って勢いつけるタイプの剣て
・鎧の性能が異常すぎるww
・ちょっと説明してくれ!
「『ゴールデンアヴィス』シリーズね……金色の感じから察っている人もいるとは思うけど、これ全部『オリハルダイン・オラトリア』の素材でできてるのよね」
私が新しく狩ってきた3体のオリハルダイン・オラトリアを、余すことなく使用した逸品だ。当然【変転】も使えるわけで。
『ゴールデンアヴィス』シリーズに付与された【変転】は【ヒート・キャビテーション】。オリハルダイン・オラトリアと同じく、熱を蓄えて衝撃波を発生させる能力だ。
この衝撃波でアンフィスバエナを弾いて、超重量を無理矢理振り回す戦法である。
問題はその性能なんだけど……
「オリハルダイン・オラトリアってフルチャージ一発で金剛蟹を何十体も倒せる威力出るよね。その力の源の魔石を、この装備には丸々3つ使ってるのよ」
・3つ!?
・それはもう頭おかしいんよ
・どんなブルジョワ装備だww
・つまりあのシャコパンチの3倍の出力が出ると?
・耐えられるわけなくて草
「やろうと思えばシャコパンチも打てるわよ」
ただし、私の身体が耐えられなくて吹っ飛ぶけどね。
だからこそ、装備の耐久力を上げるために、金剛蟹の素材をこれでもかとつぎ込んでガッチガチに硬くしているのだ。
さらに、ため込んだ熱をほんの少しずつ消費するようにして、小さな衝撃波に小分けして使用するのだ。
これなら長期戦でも十分に戦い続けられる。
「じゃ、そろそろ決めに行くわよ! ”黒く、闇く、深く、蒼窮覆う黒の迦楼羅天”───『鴉天狗』、起動!」
「げっ!?」
「ゆっくり話聞いてるんじゃなかった!」
「変身終わるの待ってくれてありがたいわね! 【妖仙流柔術───」
妖仙の下に顕現せし、窮極の【嵐】。
その腕が掴むのは、双頭剣アンフィスバエナだ。
初速が速いほど投げられる重量が増すその技によって、超重量のアンフィスバエナもその瞬間だけは羽根のように軽い!
「───山嵐】!」
各種バフによるAGIアップ、鴉天狗によるステータス上昇、そして【変転】による衝撃波をブースター代わりに使用した刹那の踏み込み。
そして重さを感じさせない【妖仙流柔術】による振り下ろしをプテラの丼さんに叩き込む。
「ひぇっ……!」
彼がその一撃を避けることができたのは、ほとんど奇跡のようなものだった。私の勢いに気圧されて反射的に身体を捻った結果、そのギリギリをアンフィスバエナが通過したのだ。
振れるのはいいんだけど、軌道を変えられないから厄介……
「ねっ!」
「ぇあっ!」
振り下ろしたアンフィスバエナが地面を砕いた直後、それを蹴り飛ばす!
バァンッ! という破裂音と共に、私の目の前は赤いダメージエフェクトに包まれる。まるで、かの有名な『燕返し』のように下から上へと軌道を変えたアンフィスバエナが今度こそプテラの丼さんの身体を捉えたのだ。
凄まじいばかりの速度で引き千切るように鎧を切り裂き、そのまま彼の彼の身体を両断する。HPは、一瞬で消し飛んだ。
「よいっ……しょおっ!」
「ちょっ、待て待て待てっ! ひえぇっ!」
振り切ったアンフィスバエナの勢いを止められなかった私は、そのまま模熱さんに向けて投擲!
触れれば即死級の破壊力を持った剣が回転しながら高速で跳んでくる光景に、さすがの模熱さんも怖かったのだろう。
頭を抱えながら慌ててその場に蹲り、飛んできたアンフィスバエナをやり過ごす。
けど、いいのかしら?
そんな状態じゃ、次の私の攻撃を避けられないわよ?
「【妖仙流柔術───」
「はっ……!?」
私の声は、模熱さんの背後から。
今の私のスピードなら、投げた武器にも余裕で追いつけるのよね……。
要するに、投げたアンフィスバエナに追い付いて、キャッチしたのだ。
相手は蹲った状態で、私はその背後を取った。しかも、すでに武器を振りかぶった状態だ。これはもう、どうしようもないでしょう?
「───大嵐】!」
「ッ───!」
刹那よりもさらに速い一瞬の振り下ろしが、模熱さんを斬り裂いて地面を砕き、轟音を響かせる。地面にぶつかったということは、アンフィスバエナが彼を完全に両断したというわけで───
激しいダメージエフェクトともに、模熱さんのHPも一瞬で消し飛んだのだった。
『プテラの丼、模熱の両者戦闘不能! カローナ・ミカツキペアの勝利!』
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