表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第五章 ~猜疑に満ちた仮面舞踏会~
198/300

ゴッドセレス、尊死す。

評価・ブックマークありがとうございます!


 いや~、アガるっ!

 まさかゲームの中でこんなにダンス欲が刺激されるなんてね。


 『魅惑の恋人(アミュールラバーズ)』シリーズの出来が良すぎるんだよ……。こんな素晴らしいドレスを着たら、そりゃ踊りたくもなるよ。



 軽くその場で回ってみたり、腕を上げてポーズをとってみたり。私の一挙手一投足に、セレスさんとティターニアちゃんの視線が注がれるのが分かる。



「メルルカさん、最高っ!」


「恐れ入ります。カローナ様ほど魅力的な女性ならば、そのドレスを着こなせると確信しておりました。御覧の通り、ラ・ティターニア様ですら見惚れておりますよ」


「ふふ……ティターニアちゃん、私綺麗?」


「っ! むっ……『ラ』を付けろと言っておるじゃろ……」


「ラ・ティターニア様……♡」


「ひぅっ……こ、これメルルカ! それが本題ではない(・・・・・・)じゃろ!」


「おっと、そうでした」


「えっ、この装備が目的じゃないの?」



 注文の品だったし、私ももう大満足よ?



「ラ・ティターニア様とのダンスパーティのために、特別にもう一着仕立て上げたのです! さあさあこちらへ! さぁさぁさぁ!」


「ちょっ、強っ……」



 再びグイグイと手を引くメルルカさんに連れていかれるように、更衣室へと移動する。


 ティターニアちゃんとのダンスパーティ用の一着って……最初から私を連れて行く気だったってことじゃん。


 別に良いんだけどさ……新しいドレス渡しとけばいいとか、軽く考えてもらったら困るわよ?(フラグ)



        ♢♢♢♢



「ラ・ティターニア様の隣に立つに相応しい、ダンスパーティ用男装礼服(・・・・)———その名も、『星降る夜の妖精執事スターリーナイト・バトラー・ティターニア』!」



 ———まさかの男装だった件。



 あー、そうか。

 『女性同士なる場合の対策』って、私に男装させるってことかよ!

 いや、まぁこのタキシードもクオリティ半端ないからいいか!(フラグ回収)



 妖精女王の名を冠する『ティターニア』シリーズに属する礼装、『星降る夜の妖精執事スターリーナイト・バトラー・ティターニア』。


 黒と濃紺の奥に、星が散りばめられたような輝きを宿している燕尾服だ。中は純白のカッターシャツで、黒の蝶ネクタイが凛々しい。


 私の身体の凹凸が目立たないような作りになっていて、ぱっと見では確かに男性に見えるけど……それでも分かってしまう胸の膨らみが、容赦なく()を破壊してくる。


 さらに、つやつやな革靴と白い手袋ができる限り肌の露出を抑え、どの角度から見ても気品に溢れた服装だ。髪は長いから、とりあえず一つに縛って後ろに流している。


 なんだろう、自然と背筋が伸びる装備ね、これ。



「ふむ、やはり似合うのう」


「……ティターニアちゃん、私に男装させたかっただけじゃない?」


「そ、そんなことはないのじゃ。私と共に出席するのじゃから、そういった服装の方が場に合うじゃろ?」


「まぁ、そういうことにしといてあげる。これも気に入ったし……あ、声もそれっぽく変えた方がいい?」


「おぉっ? 急に男性らしい声になったの……ちょっとドキッとしたのじゃ……」


「ふふ……聞こえてますよ、ラ・ティターニア様?」


「か、からかうでないわっ!」



 やー、これはこれで楽しいかも。

 元々『カローナ』のアバターの背が高めだったのと、クールさがちょっと入ってるのが良かったわね。


 これから時々この装備使ったら、女性ファンも獲得できるかな?



「女性の目から見てどうかしら、セレスさん?」


「あっ、すっ……そのっ……///」


「セレスさん?」


「は、はいっ……! その、すごくいい……と思います……っ///」



 ……セレスさんが、目を合わせてくれない。

 視線は頻繁に動いているにも関わらず、私の顔……というか胸以上まで上がらない。


 そして、ほんのりと染まった頬。

 胸の前でもじもじと落ち着かない指。

 頻りに髪を弄る仕草……。


 あっ(察し)



 なんだろう、セレスさんが急に乙女になって可愛い。

 そしてなぜか嗜虐心を煽ってくる……ちょっとからかってもいい?


 もじもじしたまま目を合わせてくれないセレスさんの目の前にするりと接近、その白磁のような頬に手を添え、私の方を向かせて目を合わせる。


 そして渾身のイケボで———



「しっかりと私を見て言ってください、お嬢様(・・・)?」


「ん゛っ///」



 セレスさんの口から悲鳴のような何かが漏れる直前、突如として彼女の姿が消える。

 何が起こったのかと混乱する私は、そのすぐ後に届いた通知を確認し……



『フレンドの ゴッドセレス がログアウトしました』



 えぇ……(困惑)



       ♢♢♢♢



「ん゛ぁぁぁああああわぁぁぁあああ゛あ゛あ゛っ!!」


「ど、どうしたのですか玲子様!」



 アネックス・ファンタジアからログアウトした玲子セレスは、最後の最後、ギリギリ残った理性でヘッドギアを外し、そのままベッドに飛び込んで泣き叫んだ。


 そんな彼女の声を聞きつけたメイドのアリサが、慌てて部屋に飛び込んでくる。

 が、玲子セレスはアリサの前でも構わず、号泣が止まらない。



「ひぐっ! う゛ぅ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」


「落ち着いてください! 一体何があったのですか!?」


「カ゛ロ゛ーナ゛様゛がっ、カ゛ロ゛ーナ゛様゛がっ!」


「カローナ様がどうしたというのです?」


「カ゛ロ゛ーナ゛様゛がっ……と゛う゛と゛い゛っ!!」


「……はぁ」



 涙でぐちゃぐちゃにしながら何言ってるんだろうこの人は……。



「カローナ様ぁっ! しゅきっ、しゅきぃっ……///」


「はぁ、とりあえずサプリメント(おくすり)出しておきますね」



 またいつもの発作かと、部屋を後にするアリサ。

 カローナのイケメンムーブによって情緒を破壊された玲子セレスが再びログインするまで、数時間要したのだとか……。


お読みくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 尊死しちゃったか
[一言] 彼女にイケメンムーブは非人道的
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ