第2のアナザーモンスター
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「———はっ!」
私が次に意識を取り戻したのは、もはや見慣れた鬼幻城の自室……つまり、私はあそこで死んだらしい。
しかし、何が起きたのかが記憶にない。
巨大なバラみたいな花があって、甘い匂いがして……というか『アナザーモンスター』とか言ってなかった?
アナザーと言えば、女王蜂が真っ先に思い浮かぶけど……他にも存在してたのね……。
・あ、起きた?
・もう少し寝てても……
・カローナ様の寝顔尊い……
あっ、配信続いてたんだった。
バーチャルとはいえ、寝顔をそのまま配信してたと思うと、ちょっと恥ずかしい……。
「皆さん、さっき何が起きたか聞いてもいいです? ネペンテス・アグローが出現した後の記憶がなくて」
・へ?
・そんなことある?
・アナザーモンスター特有の能力じゃね
・カローナ様は自分から花に食べられに行ったように見えた
・あれちょっと怖かったよな、コメントに反応ないし
・記憶がないってことは、もう意識なかったのか
視聴者さんに教えてもらった内容から判断すると、私は自分からネペンテス・アグローに突っ込んで行って死んだらしい。コメントで指摘があったように、その時点で記憶が途切れているのも事実。
でも自分から動いているということは……他のモンスターと同じように操られていたと判断するのが妥当だろう。
あの、独特の甘い匂い……あれを吸い込んだせいかな?
・でもネペンテスアグローってそんなことしないよな?
・種を遠くまで運ばせるために他のモンスターを操るわけだし、崖から飛び降りなんてことはさせないはず
「お、そこんところ詳しく聞いてもいい?」
ネペンテス・アグローの生態を詳しく聞いてみると……ネペンテス・アグロー、繁殖のために他のモンスターを使うのだという。
十分に成長したネペンテス・アグローは大きな果実をつけるのだが、この果実には強力な依存性物質が含まれており、果実を食べたモンスターは一生この果実に依存することになる。
いずれネペンテス・アグローが枯れた際、果実に依存しているモンスターは、他のネペンテス・アグローを探して原生林を彷徨い続け、次第に力尽きて倒れるのだ。
すると、果実を食べたことによって体内に残っていたネペンテス・アグローの種が発芽し、モンスターの身体を養分に、再び大きな花を咲かせることになる。
これを繰り返すことによってネペンテス・アグローは繁殖していくのだ。
「なるほどね……今回であったやつと、結構違うところがあるのね」
・カローナ様、実食べてないのに操られてたしね
・だからアナザーなんじゃね
そう、今回私が出会ったネペンテス・アグローのアナザーモンスター……“恋人”は、今聞いた生態とは大きく異なる。
一番大きな違いは、『果実を付けない』という部分だろう。
“恋人”は、本来果実に含まれるはずの物質を臭気として花から放っており、果実を摂取していなくても臭気を吸ってしまうだけで状態異常に陥るのだ。
そして、催眠状態に陥ったモンスターを食虫植物のように捕食し、自身の養分とする。種を繁殖するためではなく、自身の繁栄のために。
と、私なりに考察してみた。
他のモンスターを捕食する系のボスに良い思い出はないっての。
お前のことだぞ、堕龍。
でも、果実をつけないということは、種をばらまいていないということ。あれが何体も発生しなさそうで、そこだけは救いね。
「問題は、あの臭気をどうするかよねぇ……ほんのちょっとでも吸ったらアウトっぽいし」
・討伐する気なん?
・あれ見てやろうと思えるのがすごい
・集合体恐怖症の俺にはきついですわ
「そりゃ、もちろん討伐するわよ? せっかく発見したアナザーモンスターなんだし、誰かに取られる前に討伐を目指すでしょ」
とはいえ、“恋人”に進化した原因となったプレイヤーが居るのかもしれないけどね。
“女帝”もそうだったからね。
臭気を風で巻き上げて、上空に飛ばしてしまうのが一番かな。となると、カルラの魔法で何とかでいけるかな?
……最悪息を止めてヒットアンドアウェイになるかなぁ。
こんな時にセレスさんが居たら……私に経験値が入ってこなくなりそうだからやめておこう。
「ま、なるようになれ、かな。【アドラステア原生林】に行く前にポーションとかいろいろ買い足すから、皆さん付き合ってくださいね?」
・オッケー
・カローナ様に「付き合って」って言われるとドキッとする
・カローナ様「付き合ってください!」
・↑喜んでぇ!
「そういう意味じゃないから」
視聴者さんと他愛もない会話をしつつ、カルラの【座標転移】によって【ユピテル】へ。買い物するならここが一番色々揃ってるからね!
お読みくださってありがとうございます。




