病葉の舞う孤島 5
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『ユニークモンスター: 呪われた亡者 に遭遇!』
「Gyaooooooo!!」
アナウンスと共に、松明をなぎ倒しながら現れたのは、黒紫の身体を持つ異様なモンスター。
人のようで人ではない、悪魔のような見た目をしたそいつは、アップルさんが釣った魚を両手に握り、無機質な目をこちらへと向けてくる。
間違いない。
こいつが、追っていた魔物だ!
【レム・ビジョン】、【レール・アン・ドゥオール】、【マキシーフォード】起動!
2色のエフェクトが脚から弾け、私のAGIにバフがかかる。『ブリリアンドール』シリーズはパーティメンバーが多いほどバフの効果量に補正がかかるため、【変転】がなくてもそれなりのステータスを得られる。
「【グリッサード……ッ!?」
「Gyaoooooo!」
そんな私が間合いを詰めるよりも早く、数mの距離を一気に潰した『呪われた亡者』が、まるで斧でも持っているかのように腕を振り下ろす。
即座に掲げたブリリアンドール・スイーパーがその腕とぶつかり、ガキィンッ! と、およそ生物の身体から出るものではない音を響かせる。
「「カローナさん!」」
「大丈夫! 二人は村人の避難を!」
こいつ、結構速い! そして強い!
真っ先に狙われたのが私で良かったかも。これが、戦う術がない村人に向いたらどうしようもなかった可能性がある。
互いに力を込めて拮抗するなか、『呪われた亡者』は空いているもう片方の手を私の首へと伸ばし———
「ふっ……!」
スウェーバックしながら手を躱し、ブリッジの要領で『呪われた亡者』の胴に蹴りを一発。そのまま巴投げで投げ飛ばす!
・身体柔っ!
・み、見えっ……!
・騎士姿もいいけど戦闘メイドもとてもいい
・村襲撃パターンもあるんやな
・カローナちゃん普通に正解ルートたどってるのすごいよな
地面を転がる『呪われた亡者』は、起き上がると同時に地面を蹴って火の明かりが届かないところへ回り込む。
闇に紛れる気か?
舐めるな、私は目でなくても見える!
ネックレスのように首から下げた鈴が、澄んだ音を響かせる。
これはカグラ様から貰ったものだ。
随分古いものだけど、邪悪なものが全て祓われるかのような美しい音が出る。
その音色はどこまでも届き、そして私の耳は、不自然に動く音のうねりを捉えている!
「【グリッサード・プレシピテ】!」
「Gyaaaaaa!?」
稲妻のようなエフェクトを散らしながら、今度はこちらから肉薄。『ブリリアンドール・スイーパー』が『呪われた亡者』の腕を跳ね上げる。
胴体ががら空きよ? 【千手夢奏】!
ブリリアンドール・スイーパーが何本にも分身し、次の瞬間には打撃音とダメージエフェクトが弾ける。
【千手夢奏】は【三手三棍】から進化した攻撃アビリティだ。あまりの速さに棍は分身したように見え、アビリティ一回分の時間で多段ヒットする。
「Gyaooo———」
反撃の隙は与えない。
最後の一発を『払』にして『呪われた亡者』の腕を無理矢理払い除けた私は、僅かに空いたその隙間へと左手を放り込む。
「【蜂閃華】!」
「ッ———!」
私の貫き手が、僅かな隙間を縫って『呪われた亡者』の喉を穿つ。クリティカル発生。
【蜂閃華】のクリティカル発生時の追加効果は、約1秒の『脱力』状態だ!
膝が崩れる『呪われた亡者』と同時に腰を落とした私は、腰だめに佩いたブリリアンドール・スイーパーを居合のように———
「【連獅子】……!」
ステップ系アビリティを使えば使うほど、ノックバック効果が大きく上昇する範囲攻撃である【連獅子】。
まだ【レール・アン・ドゥオール】、【マキシーフォード】、【グリッサード・プレシピテ】の3種類しか使ってないから最大効果とは言い難いけど、私より少し大きい程度の敵をぶっ飛ばすには十分!
鈍い衝突音を響かせ、ダメージエフェクトと同時に『呪われた亡者』が吹き飛ぶ。
まだまだぁっ!
「【セカンドギア】、【セカンドウィンド】!」
私の脚に新たなアビリティエフェクトが纏わりつき、空気抵抗を減少されるアビリティと合わせて、私の身体は吹き飛ぶ『呪われた亡者』に簡単に追いつく!
「【兜割かち】!」
軽々と追いついた私はブリリアンドール・スイーパーを振り下ろし———
突如として翼を広げた『呪われた亡者』がベクトルを変え、宙へと飛び上がる。
私のアビリティは空振りに終わったけど、距離を取った『呪われた亡者』からの反撃もない。
つまり今の『呪われた亡者』の回避行動は逃げの一手。私を恐れたか?
「逃がさないわよ!」
・えっ、は?
・何その挙動!?
私の脚に宿るのは、黒い泡のようなエフェクト。
始めて見せるこのアビリティは、高機動を最大の武器とする私にとって到達点とも言える究極のアビリティ。
その名も———【無重力機動】!
【無重力機動】は、つま先を向けた方向に歩行行動を経ずに移動するアビリティである。
それこそ無重力場を移動するように、地上だろうが上空だろうが関係なく移動を可能する!
スケートリンクを滑るように空中へと昇った私は、引き絞ったブリリアンドール・スイーパーの柄の先を『呪われた亡者』へと向け、【グラン・ペネトレイション】発動!
【グラン・ペネトレイション】は【ペネトリースパーダ】から進化したアビリティだ。『ジュエラーボックス』のダイヤモンドさんが使っていたのが記憶に新しい。
咄嗟に腕をクロスしてガードをしようとする『呪われた亡者』に対し、ガード貫通効果のある【グラン・ペネトレイション】をぶつけて腕ごと貫通。その地面へと叩き落す。
「Gyaaaaaa!!」
悲鳴を上げながら地面へと激突する『呪われた亡者』を見つつ、私も着地。【レム・ビジョン】の効果切れにより、追撃はちょっと慎重に行きたい。
けど、
「私を今までの相手と一緒にしないでよね?」
《名誉妖怪》の《専属秘書》なんだから!
お読みくださってありがとうございます。




