表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アネックス・ファンタジア ~V配信者による、神ゲー攻略配信日記~  作者: 風遊ひばり
第四章 ~親愛なるーーーーへ~
135/300

閑話 大樹海の異変

評価・ブックマークありがとうございます!

いつか入れようと思ってた話になります。


初のスペリオルクエストが終了して数日、プレイヤー達は未だ勝利の美酒に酔い、浮ついた雰囲気を醸し出していた。


しかし、堕龍おろちが残した爪痕は、これ以上なく大きい。



【極彩色の大樹海】への壊滅的打撃。

【ターミナル・オロバス】の崩壊。

果ては、空の崩壊に伴うマップの拡張。


その影響はあまりにも大きく、スペリオルクエストが終了した今もなおアクセス数が記録を更新しているほどだ。



中でも、【極彩色の大樹海】の中心部がオルトロスによって食い荒らされ、開けた大地になったことが大きい。


【極彩色の大樹海】の中心部は、『アネックス・ファンタジア』の中でも屈指の難易度だ。『女王魔蜂ディアボロヴェスパ・カラリエーヴァ』の住処が存在していると考えられているその場所には、今までに何人ものプレイヤーが挑み、散ってきた。



そんな【極彩色の大樹海】の中心部が開かれたことにより、プレイヤー達は中心部へと踏み込むことが可能となったのだ。


そこで我々は、あるプロジェクトを打ち立てた。



それは———『大樹海踏破プロジェクト』。



【極彩色の大樹海】を踏破するにはこのタイミングが最も良いと言える。

しかし当然、前人未到の樹海を攻略するのは、困難を極めるだろう。


集まったのは、いずれも腕に自信があるプレイヤー達、総勢15人。


我々はその全貌を明らかにすべく、ジャングルの奥地へと向かうのであった……」


「なんでお前、ドキュメンタリーのオープニングみたいなことやってんの?」


「なんでって……実際ドキュメンタリー作るんだろ?」



そんな風に軽口を叩きあうのは、クラン『カメラマン』に所属する動画制作班(・・・・・)のメンバーだ。


専用のアイテムを用いることで配信者のように動画を撮影することができ、彼らはそれを使って撮影・編集を行っている。


彼らが手掛けた映像作品は好評で、写真集と共に彼らの人気コンテンツとなっている。



今回は他のプレイヤーの協力してもらい、戦闘職10人と『カメラマン』のメンバー5人、合わせて15人で【極彩色の大樹海】の中心部へと向かうこととなった。



「噂によると、【極彩色の大樹海】にはとんでもない化け物が住んでいるらしい」


「誰も見ていないから真偽は不明だが、オルトロス型を倒したとかどうとか……」


「そんなの聞いたらさ、映像に収めたくなるってもんだぜ」


「めっちゃ昔に流行った『未確認生物を追え!』みたいな番組さ、あれに本気になるの分かるわ」


「未確認生物とかワクワクするし」


「アネファン内だと確実に未確認生物がいるから余計にだよな」


「さすがに女王蜂とか出てきたら太刀打ちできないんで、その時は逃げてもいいよな?」



この先に待っているであろう未知の生物心を躍らせつつ、彼らは樹海の奥地へと足を踏み入れる。


どこか弛緩した雰囲気の彼らの様子は、確かに堕龍おろちとの戦いを乗り越え、レベル99(カンスト)まで上昇したことを考えれば仕方のないことであった。


が、ここを支配しているのはプレイヤーではなく『女帝』。


彼女は、自身の領域が汚されるのを決して許さない。



ゴウッ! と、強い風が木々の間を吹き抜け、バランスを崩しかけたメンバー達が思わず足を踏ん張る。


風の発生源は上空から(・・・・)


ワイバーン型を彷彿とさせる、巨大な翅。

禍々しい紋様と極彩色が、見る者すべてに畏怖を与える。


15人のメンバーが見上げる中、その無機質な複眼には人間(プレイヤー)の恐怖が映る。



そこにいたのは、10mを優に超えるだろう、巨大な蛾のモンスター。


こいつ(・・・)がオルトロス型を葬ったモンスターだと思わせるには十分な威容は、信じがたい事実と共に現れた。



『ユニークモンスター: フラゴニトロ・ファラエナ―“女帝隷属エンプレス・スレイブ” が出現!』


「ひぃっ!」



アナウンスと共に、誰かが悲鳴を上げる。

それは、メンバーの中の『鑑定士』によるものだった。


『鑑定機能』は、全てのプレイヤーに備わっている機能の一つだ。しかし、普通のプレイヤーが鑑定によって確認できる内容は『名前』と『レベル』程度であり、その全容は把握しづらい。


『鑑定士』ともなれば、相手のステータスやアビリティなども確認することができるようになり、堕龍おろち戦でも堕龍おろちの技名を調べていたのは『鑑定士』だったりする。


そんな職業ジョブだからこそ、一番に理解してしまうのだ。

そのモンスターの異質さを(・・・・)



「何か分かったか!?」


「こいつ、レベルが百ごじゅ———」


「キュルルルルルルルルルルッ!!」



耳を劈く金切り音と共に、フラゴニトロ・ファラエナの翅が激しく振動し、灰黒色の煙のようなものが視界を覆いつくす。


その正体は、可燃性(・・・)爆発性・・・に富んだ、非常に細かい粒子の鱗粉。



「まさかっ———」



そのまさか(・・・)だ。



最後に覚えているのは、フラゴニトロ・ファラエナが翅を擦り合わせることによって発生した火花と、直後に視界の全てを覆いつくす灼熱と閃光。


15人のプレイヤー達は、何かをする暇すらなく爆撃(・・)によって消し飛んだのだった。













遠くからでも分かるキノコ雲を作り出し、【極彩色の大樹海】の一部に焼野原を作り出したフラゴニトロ・ファラエナは、プレイヤー達が消えていくのを眺めた後、ゆっくりとその場を後にする。


もちろん、に事の経緯を伝えるためだ。



女帝隷属エンプレス・スレイブ”———ハクヤガミにさえ負けるとも劣らないレベルを持つこのモンスターでさえ、女帝の隷属に過ぎないのだ———




お読みくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] さて、女帝のレベルは幾つになってる事やら……最低でも250オーバーかねぇ?
[一言]  ちょっとちょっと奥様(カローナ)、ライバルの女王蜂がとんでもないことになっていますわよ。 具体的にはオロチキラーや格上殺しの称号の他にもレベルの上限を二回か三回分はぶっ壊して強化されただ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ