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第9話

俺はあの日から、アリスのことが気がかりになっていた。何故、俺が温度調節や耐熱が使えることを知った上で俺たちのパーティーに入ろうとしないのか。1人だけ特別に体温の高い火炎精霊(ボーマ)だからだろうか。それとも、他に何か不都合でもあったのだろうか。何かは分からないけど、もしも彼女が何かで悩んでいるなら俺は不思議と彼女を救いたいと思えた。



きっとレントさんは私の恋慕に気づいた上で、私のことを気遣って誰とも付き合っていないって言ってくれた。優しいウソを吐いてくれたんだ。なのに、私は混乱してる。まだ、レントさんを諦めたくない。心のどこかで勘違いであれと祈ってる。レントさん、どうか私の祈りが届くなら、私を助けてください。



俺は一夜中眠れず、気づいた時には夜が明けていた。


「レントくん、もしかして寝不足?まだまだ成長期なんだから夜更かしはいけないよ。それに、夜更かしはお肌にも悪いんだから」

「いや、そこまで寝不足っていうわけでもないんだが、どうしても気が重くて…。あ、ごめん。やぱり今の忘れてくれ」

「レントくん、何か悩んでるんならいつでも話聞くよ。私だけで解決できないことなら、セラちゃんもいるし」

「いや、そう大したことじゃないからいいよ」


俺の口からどうしてもアリスをパーティーに入れたいなんか言えるわけがない。そんなこと言ったら、俺がアリスに恋してるみたいじゃないか。俺は決して、そんな感情で言ってるわけじゃない。きっとそうだ、きっとそのはずなんだ。

その時、道端にいたアリスと目があった。アリスもまた、寝不足のようで少し疲れたような顔をしていた。やっぱり、何かで悩んでいるんだろう。寝不足の所為なのか、はたまたこの胸を締め付ける何かの所為なのか、俺は頭がぼんやりしてきた。


「レントくん、レントくん。おーい、起きてる?やっぱり寝不足なんじゃないの?さっきからボーっとしてたよ」

「あ、ごめん…。俺、やっぱり、ちょっと今日は休む。何というか、やる気が起きないっていうか、気だるいっていうか」

「そっか。まぁ、健康の方がクエストよりも大切だもんね。なら、今日はお休みにしよっか」


俺は、屋敷に向かってUターンした。帰る途中、少しだけアリスの方を振り向いた。アリスは、絶望したかのような顔をしていた。やっぱり、俺に悩みでも相談したくて待ってくれていたのだろうか。そう思うと、アリスに申し訳なくて仕方がなかった。



私は、絶望した。レントさんはきっと、私がいて気まずくなったから帰ったんだ。やっぱり、あの少女とはお付き合いしてるんだ。受け止め難い現実だった。無理やりその感情を受け止めようとすると、また目尻で熱い涙が蒸発しては消えていった。



俺は家に帰ってから、激しい罪悪感で本当に体調を崩した。もしかしたら、俺が悩みを聞きたくなくて逃げたと思ったアリスは、二度と俺を頼ってこないかもしれない。何故かそう思った。どうしても、前世が忘れられない。あの、何よりも愛おしかった愛梨沙に似ている彼女を助けられない。俺は、誰かが困っていても逃げてしまった。酷い男だ。


「俺に、彼女を救う資格はあるのか…」


俺は再び考えた。何故、俺は彼女を救いたかったのか。まず、アリスが俺のところを訪ねてきて、特別な火炎精霊(ボーマ)だって知らされて、急に俺のパーティーに入りたいって言いだして、俺がアリスと共にあれることを証明しようとして、2人が帰ってきたら急に忘れてくださいとか言いだして…。

まず、そこで呼び方が愛梨沙を彷彿とさせた。

2回目会った時は何故か俺を手助けてくれたけど、その後すぐにいなくなって…。

3回目には俺にわざわざ美味しいもの紹介してくれた。その時、俺はまたアリスと愛梨沙を重ねてしまった。

きっと、俺がアリスを助けたいのは、愛梨沙に似ているから。きっと、俺はあの懐かしさ、ずっと昔の愛おしさを探して…。いや、何か違う。腑に落ちない。うまく、理解できない。この締め付けるものは、一体何なんだろう。

そんなことを考えていると、外で雨が降り出した。俺は考えすぎの所為か頭痛が増した。とりあえず、俺は考えるのも嫌になって眠った。



これは、夢か、現実か。俺は愛梨沙に膝枕をされていた。


「愛梨沙、俺、どうしたらいいと思う?」


これが夢なのかどうか自分でもよく分からない。だけど、この夢で何かが変わることを予感していた。


「煉さん、きっと煉さんは気づけてないんだよ。私、知ってるんだからね」

「そういうこと、それ?」

「わたし、煉さんに助けてもらえて嬉しかったよ。でもね、私を助けてくれたことは無駄になっちゃったんだよ、ごめんね…」

「…え?それ、どういうこと!?ねぇ、教えてくれよ!」


夢だから嘘の可能性もあるとは分かっていても、こしそれが本当だったらと思うと知らずにはいられなかった。


「これは、たぶん7年前くらいの話…」


俺は、この真実を知りたくはない。だけど、大好きな愛梨沙の為、愛梨沙に似たアリスを救う為にも、これは俺にとって必要なことだと思った。

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