第31話
国王様の指示するようにその場所へ向かうと、そこは一面が焼け野原になっていて、化け物が1人、佇んでいた。
その化け物、獄炎のサタンはこちらに気が付くと少し微笑んだようだった。一体、何のつもりだろうか。
「おっと、あの時の上位魔人に間違えた少年とそのご一行か。そして、その後ろにいるのは俺相手に手も足も出なかったクソ雑魚異世界人じゃないか」
どうやら、向こうもとくのことを覚えていたらしい。
「ほう、我をクソ雑魚というか。いいだろう、今ここで貴様を叩き潰してやろう。覚悟しろ」
口調が変わった。ただ挑発に乗せられたわけではなさそうだけど…。少し不安なことが俺の本音だった。
「雑魚の分際で俺に宣戦布告とは、よっぽど死にたいらしいな。さて、まずはこれを避けてみせろ!」
サタンは指先から何十発もの火炎弾を乱れるように連射した。とくはそれをうまいこと躱していった。
「おいおい、面白くねぇな。避けるだけか腰抜けが。俺に一発でも攻撃当てて俺に前言撤回だって言わせてみろよ」
「いいだろう。その挑戦、受け取った。【エアカッター】!」
日本生まれ日本育ちとはいえど、流石にこの世界の魔法は使うか。とくは両手の手先から空気の刃を舞うように放った。
しかし、その攻撃も当たることはなく弾き返されてしまった。
「なかなかやるじゃないか。でも、その程度ではまだまだ魔王軍の幹部には通用しないぞ」
「ならば、互いの全力をぶつけ合ってみようではないか」
「おいおい、まだ始まったばっかじゃないか。そんなすぐ終わらせたって楽しくないだろ?お前はかつて俺に一切の攻撃が通用しなかったことは根に持ってるんだろ?」
「それはそうだ。我は誇り高き天狗。悪霊ごときに負けてしまっては一族に合わせる顔がないからな」
「いくら俺が魔王軍幹部だからって悪霊呼ばわりするのはちょっとどうかと思うぞ?まあいい。それで、本当にやるんだな?」
「ああ、いつでも我は覚悟ができているぞ」
「そんじゃ、こっちからやらせてもらうぞ。【我が名はサタン。魔王軍幹部にして、火炎精霊以上の火炎魔法を操りし者。我の魔力を贄とし、我の前に立ち塞がる悪しき者を焼き払い、今一度この世に秩序をもたらしたまえ。<インペリアル・フレイム>】」
サタンは激しく燃える炎の渦を自身の周りに巻き起こしながら詠唱を完成させ、今にも恐ろしい量の炎を放とうとしていた。
その頃、とくの方は…。
「【我が名はとく、真名を徳蔵天狗という者なり。日本に生まれ、ごく僅かな同胞の期待を背負った最後の子どもにして、様々な妖術を操りし者。我の前に立つ悪、一度は殺し損じれど、今こそ打ち倒すべき。精霊よ、我に悪を滅ぼすほどの風を与えたまえ。<ジャスティス・ストーム>】」
とくの方も準備ができたようで、風の膜らしきものを纏っていた。2人は互いに睨み合うと、互いの魔法を真っすぐにぶっ放した。
しかし、互いの威力が平等だったのかすぐに互いの魔法は打ち消し合ってしまった。
「ふっ。なかなかやるじゃないか」
「我も負けていられないからな」
いい感じになってきたところで、決着がつくでもなく想定外の事態が起きた。セラが2人の間に割り込んだのだった。
「師匠、サタン。どっちももうやめて!」
「お嬢ちゃん、これは見ての通り大切な戦いだ。世界がかかってるかもしれない。しかし、俺は罪なない人々まで巻き込もうなんてそんなに思ってないからさ。そこをどいてもらえると有難いんだが…」
「もしもこのまま戦い続けるんだったら、セラはサタンの人質になる。そうすれば、戦わずに済むでしょ」
「お嬢ちゃん、そんな冗談は辞めときな。俺は決してロリコンじゃない。それに、お前はさっきアイツのことを師匠と言ったな。俺について来たらきっと師匠が悲しむぞ?」
そんな会話が繰り広げられているその時だった。セラだけでなく、とくの口からも意外な発言が飛び出した。
「セラ、我はお前がそおれでいいなら構わない。ついて行け」
「…ありがとう」
なぜセラが今ありがとうと言ったかは分からない。でも、きっと何かあるんだ。
「そうか。じゃあ、俺は体温調節するからお姫様抱っこしてあげようか?」
「うん、お願い」
どうしてこうなった?ていうか、やっぱりサタンはロリコンなんじゃ…?
そのままお姫様抱っこされたセラは、あろうことか全身でサタンに抱き着き、顔をすり合わせていた。
「おい、そう人前で甘えるな…ガァッ…。血?」
サタンは前触れもなく吐血した。そうか、セラには【インヘル・バイタリティ】で他人の生命力を吸える。その力を生かした上での戦法だったのか。
「すまない、久しぶりに激しく戦った所為で体の調子が悪いみたいだ。さあ、早く帰ろう」
「え~、今ここでお昼寝した~い。ねぇ、ダメ?」
セラは上目遣いで問いかけた。ここで時間を稼ぐつもりなんだろう。でも、そううまく行くとは考えられない。
「…し、仕方ない。少しだけだぞ」
サタン、お前はロリコンだったことが運の尽きだな。
こうして、無事サタンは死亡したがその顔はとても気持ちよさげだった…。




