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恋なんて知らなかった 【前編】  作者: 湯川 柴葉
第五章 お姫様願望
50/50

第50話 天野さんと近藤先生の会話

毎日2話投稿予定(午前3時と午後3時に1話ずつ)


51話からは、「恋なんて知らなかった【後編】R15」に引き継がれます。

 https://ncode.syosetu.com/n8701ic/1/

 先週と今週は、何だか怒涛のような週だった。

 先週は例の研究会が終了してケーキで打ち上げ、今週は木曜日が講習会で金曜日が4人での食事会。

 これらは、すべてが近藤先生に絡んだイベントばかりだ。それらが一気に終了したのだから、台風一過の晴れ間を見たような気持ちになる。


 同時に、当初忌避感を感じていた近藤先生に対して、いつの間にか好意を抱くようになってしまったことには、自分でも驚いている。

 そして、昨夜4人で食事したときには、近藤先生の隣に座っていても違和感を感じなくなって自然に過ごすことも出来ていた。

 昨夜は、私たちが帰ったあと、天野さんと近藤先生は喫茶店でどんな話をしていたのだろうか? ちょっと気になる。


 結心さんと天野さんはラインや電話で連絡しているだろうけど、結心さんの仕事中に電話して聞くのも申し訳ないから天野さんに直接電話して聞くしかないわよねぇ。天野さんに、午後にでも電話してみよう。午前中は掃除や洗濯をしたり、近くのスーパーへ買い物に行った。


 午後2時過ぎ、天野さんに電話したら、やっぱり会社に出て仕事をしていた。

「こんにちは、電話大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。昨夜はお疲れさまでした」

 天野さんは気軽に電話に出てくれた。

「こちらこそ、連日ごめんなさいね。仕事が溜まって出勤しているのね、責任感じるわ」

「いやいや、仕事を先取りしておかないと余裕がなくなるからねぇ。こちらから掛け直してあげるよ」

 と言って電話を切って、掛け直してくれた。


「昨夜は、あの後お二人で喫茶店に行ったの?」

「近藤先生がまだ話をしたかったみたいなので、お付き合いしてきたのよ」

「ごめんなさいね。……どんな話をしたの?」

「アクセスの話が中心だったよ。そりゃ、新しい玩具を得た子供みたいなもんよ」

「そういう感じになるものなの?」

「そりゃそうよ。プラモデルみたいなもんだな。どうやったら自分の思うように動いてくれるのかを探求するのが面白いのよ」


「なるほどねぇ」

「そうなると、女よりも夢中になるかもね、頭の中が」

「あはは、なんていう比較の仕方をするのよ」

「いや、本当の話なんよ。頭の中で数式が躍るような感覚ね。数式は出てこないけれどもね」

「へぇ~。それで私の話が殆ど出てこなかったわけ?」

「そうそう」


「だから、僕から少しフェイントを入れておいたよ。感謝しな、僕に」

「え? なにを?」

「『今日、本音をポロリと出してましたよねぇ、美貌とスタイルなんてこと』と(ツツ)いてみたのよ」

「そしたら何て?」

「『あれ本当なんですよ。同僚たちの中で矢野先生はマドンナみたいな存在なんです。おかげ様で、最近になって何とか僕はこうして話をする機会ができて、結果として天野さんたちと一緒に食事することができました。……緊張しましたけど』と、案外正直に言ってたよ」

「そのままじゃない」と私は思わず笑った。


「『じゃ、僕らはお邪魔虫だったですねぇ』と笑って言ったら『とんでもない! 二人だけでなんて無理ですし、第一、緊張して話もできないですよ』だってさ。正直な人だよねぇ。そのくせ、策略を練るのにねぇ」

 と天野さんが笑う。

「あはは」

「『でも、本音は二人で食事が良かったですよねぇ?』ともう少し突っ込んでみたら『まあ確かに本音はそうですけど、今日は天野さんたちへのお礼の席ですから。矢野先生を誘うなら、別の機会を作ります』と真面目に答えたよ」

「本当に正直だよねぇ」


「だから僕も『そりゃそうですね。男としては、頑張ってくださいとしか言えないですけれどね』と笑ってエールを送っておいたよ」

「うわ~、そんなところまで話をしたんだ」

 私は驚いた。

「そしたら『ありがとうございます』って、真面目に答えたわ」

「やっぱり、口説く積もりなんですよねぇ?」

「そりゃ、ここまで大掛かりな計画を実行に移したんだから、その気満々でしょうよ」

「今の気持ちは、喜んでいいのか、どうなのか、少し複雑かも」

 私の本音。


 少し好感を持ち始めているので嬉しいのは確かなのだけど、やっぱり既婚者・不倫という文字が頭に浮かんでくるから、不安がある。手放しで喜ぶわけにはいかない。でも、私の気持ちは「結心さんのような恋愛をしてみたい」という、憧れほどではないにしてもそれに近い気持ちがあるのは確か。この辺の揺れる心が、その時その時に浮かんでくる。この前、天野さんに「決心した」と言ったのも本心だけど、「大丈夫だろうか?」という不安も本心。だって、未知の世界なんだもの。


 どきどきする気持ちは、ある意味、楽しい。これが恋愛の初歩なんだろうな、と感じている。私はまだ、そんな恋愛と言える段階ではないかも知れないが、正直なところ、口説いてくれるのを待っている。この段階でも、既にどきどきするのだ。このどきどきは嫌じゃない。どちらかと言うと、わくわくしているというほうが正しいのかも知れない。


「要らん世話をしたかねぇ?」

 天野さんが気楽な声で聞いてくる。要らん世話とは思ってない声だわ。

「そんなことないですよ。ありがとうございます」

 殊勝な声で答えておいた。

「『この際だから言いますけど、何か僕がお役に立つことあります?』と聞いてみたのよ」

 天野さんが爆弾発言?

「えぇっ?! そんなこと言ったの?」


「だって、彼、正直に本音を言うんだもの。僕のことを疑ってないんじゃない?」

「……確かに。そしたら何て?」

「『1つ教えてください。矢野先生には恋人がいるのですか?』だって。ストレートに」

「本当に、そのまんま。あんな計画を考えた人には思えないわね」


「あはは、ほんまじゃ。『そういう噂は聞いたことないですねぇ。まあ、矢野さんは、浮いた話の1つもない真面目な子ですからねぇ』と言っておいた。口説かれるのを待ってるなんて言えないからねぇ、わはは」

「待ってるなんて言ったらダメよ」

 私は念を押す。

「心配するな。ま、ここをどう捉えて、それを乗り越えてくるかだねぇ」

「そうね。『真面目』って言葉は微妙だわね。でも、それでいいわ」


「本気になられたら修羅場があるかも知れない。ここの覚悟が必要なのよ」

「そうね、遊び半分は嫌。でも、『離婚するから結婚したい』と言われても嫌」

「我儘な女やなぁ」

「あら? 結心さんだって同じでしょ?」

「あ? そう? 可愛い女じゃなあ」

 天野さんは手の平を返す。

「もう、現金なんだから」と、笑ってしまった。

 

「……でも、結心さんとは、その辺は解決済というか分かりあってるからいいじゃない」

「うん」

「私も、今となっては、両方の気持ちが分かるから抵抗ないよ。私も、そういう関係がいい」

「ま、焦らないことだね。愛はゆっくりと育むものだと思うよ」

「よく言うよ、たった4日間で恋人宣言した人が」

「それは、お互いが意気投合したからで、レアケース」


「はいはい、ご馳走様でした! ……でも本当に色々とありがとうございました。色々なことが一気に解決した感じでホッとしてます。今後ともよろしくお願いします」

 

     ―――――――――――――――――――――――――――


 ここまでお読み頂きまして有り難うございます。

「恋なんて知らなかった【前編】」は、

「恋なんて知らなかった【後編】R15」に引き継がれます。

 https://ncode.syosetu.com/n8701ic/1/


【後編】はラブシーンが発生する予定ですので、「R15」と表示させて頂きました。

 引き続き宜しくお願い致します。


読んで頂きましてありがとうございます。


もし宜しければ、「いいね」「★マーク」「ブックマーク」などをして頂けると、嬉しいです。

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