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恋なんて知らなかった 【前編】  作者: 湯川 柴葉
第五章 お姫様願望
49/50

第49話 4人で食事会

毎日2話投稿予定(午前3時と午後3時に1話ずつ)

 金曜日。18:30から4人で食事会だ。天野さんの提案で、レストランではなく個室のある居酒屋風のところで気楽に飲み食いしましょうということになった。天野さんから近藤先生への負担を掛けないようにという配慮だ。


 天野さんと結心さんそして私の3人の関係については、次のように事前取り決めをしていた。《私と結心さんが友達で、結心さんの会社の社長が天野さん。天野さんは結心さんの彼氏だとか、天野さんが既婚者などの突っ込んだ話までは説明しない》 もう私の仮装彼氏にする必要がなくなったから、隠す必要のない話だけれど、わざわざ言うほどのことでもない。でも、あの二人の言動を見ていたら恋人同士だろうなぁとは、普通なら分かる。


 岡山駅近くに、そのお店はあった。近藤先生が予約してくれたお店だ。落ち着いた雰囲気で小綺麗な感じ。私が到着すると、係の人が部屋に案内してくれたら、近藤先生はもう座っていた。天野さんと結心さんは二人揃って、私と1分違いくらいで部屋に案内されてきた。多分、会社から揃って歩いて来たのだ。


 奥の席に天野さんと結心さんを座らせて、近藤先生と私は接待する側だから手前に座った。私の前に結心さん、近藤先生の前に天野さんという位置だ。

「天野さん、森山さん、昨日はありがとうございました」

 近藤先生が挨拶したところで、お店の人が注文を取りにきたので、近藤先生が対応するため挨拶は中断した。

「とりあえずビールでいいですか?」と二人に聞くと頷いたので、私も同じく頷いた。

 コースを注文していたようで、飲み物の確認だけで係の人は出ていった。


「本日は、わざわざ席を設けてくださいまして有り難うございます。遠慮なくご馳走になります」

 天野さんと結心さんが頭を下げた。

「昨日は、みんな分かり易かったと大好評でした。本当にありがとうございました」

 近藤先生が頭を下げたので、私も一応頭を下げた。

「いえいえ手抜きの講習会でしたから、どうでしたかねぇ? まあ入門の入門コースみたいな話でしたけど、操作手順を細かく区切って表示したので、あのレベル程度ならば自分で作れるのではないかと思うのですけどねぇ?」

 天野さんが軽く答えた。

「はい、あの後、自分で同じようにやってみたんですよ。そうしたら、出来ました! もう感動ものでした。アクセスを簡単に動かすことができたので、驚きました。仰るとおり、あの程度の作業なら、誰でも直ぐにできるんだと確信しました」

 近藤先生が本当に嬉しそうに言った。


 ビールや突出(つきだし)が並べられたので、私の音頭で乾杯をして、宴会が始まった。


「森山さんも、見易くて綺麗なパワーポイントを作って下さってありがとうございました」

 近藤先生が結心さんにもお礼を伝えた。

「いえいえ、私は並べただけですから」

 結心さんは謙遜する。

「いや、私たちも結構頻繁にああいう資料を作成するので分かるんですよ。あれは上手いって」

 近藤先生は口も上手い。

 結心さんは、天野さんを見て、どうにかしろと催促した(のだと思う)。

「先生、あまり褒められると『給料上げろ』と言われたら困るので、その辺で」

 天野さんがすかさず愛の手を入れた。あ、合いの手か。

「あ、給料上げてください!」

 結心さんも笑いながらすかさず反応する。

「ほら!」と天野さん。

「あ、済みません」

 近藤先生が笑いながら謝る。またも漫才コンビが始まった。

 

「それで先生への個人レッスンですが、その様子だと暫くご自分で色々とやってみて、分からないところが溜まった頃を目途にしますかね?」

「あ、そうですね。その頃にお願いできれば一番いいかも知れません」

 近藤先生が喜んだ。

「じゃあ、そういうことで。私としては何も用意する資料はありませんので忘れてしまいますが、適当なときにご連絡ください」


「ところで、皆さんはお休みの日に何かされているのですか? 趣味の話です」

 近藤先生が話を変えた。

 みんなが固まったように反応しないので、近藤先生が焦って、

「あ、すみません。僕はランニングをしています」と先頭バッター。

「健康的ですねぇ。マラソンとは違うのですか?」

 天野さんが話を合わせる。

「違いますねぇ。私は4㎞位を走るだけです。それも、毎日じゃないので」

「趣味はそんなものですよね。ノルマになると大変だもの」

 天野さんは上手く話を合わせる。


「矢野先生はどうなんですか?」

 近藤先生が早くも私に振ってくる。

「私は趣味と言える程のことはしてないなぁ。だって料理は仕事の範疇だし。強いて言えば、美容と健康かしら」

「おお、それでその美貌とスタイルが維持されているんですか?!」

 近藤先生が嬉しそうに反応した。

「近藤先生、褒め過ぎですよ。気配り程度ですから、女性はみんなそれくらいしてます」

 私は慌てて言った。

「表現がストレートだったかも知れませんが、学生たちも含めて皆さん言ってますよ」

 近藤先生が食い下がる。


「なるほど、僕なんか、うちの森山が美人だなんて言いませんけどねぇ」

 天野さんが漫才にもっていこうとしてくれた。

「あら! 社長、美人と言っても大丈夫ですわよ。怒りませんから」

 結心さんが早速乗ってきた。

「あ、森山さんも美人ですよ!」

 近藤先生が追随する。

「え? 近藤先生、私と矢野さんとどっちが美人だって言ってますの?」

 結心さんが笑いながら突っ込む。

「えっ!? え~と、え~と、……どちらも美人です」

 近藤先生が焦りながら曖昧な返事をした。


「あれ? ……私じゃないのね。……残念だわ」

 と私は短く低い声で(ツブヤ)く。

「……!」

 近藤先生は、真っ青じゃないけれど、顔が引きつったようになってしまった。

「……冗談ですよ! 詩織先生は怒ってないですよ」

 結心さんが笑いながら、近藤先生に言う。

 私も笑いながら近藤先生を見た。

 近藤先生が顔をタオルでしきりに拭っていた。女性の扱いに慣れてないのね。


「で、その美人の森山さんの趣味は何だっけ?」

 天野さんが優しく結心さんに振る。

「私は、普通に変哲のない趣味というか、音楽聞きながら読書するのが好きです」

「いいですねぇ。クラシックなんですか?」

 近藤先生は懲りずに挑戦している。

「クラシックも含めて、色々なジャンルの音楽を聞きます」

 結心さんが静かに答える。


「天野さんは、どうなんですか?」

 近藤先生が懲りずに仕切りたがる。

「私は、なんでも興味持つほうなので、スポーツならスキーやクロスバイクとかですかねぇ」

「スキーをされるんですか。スノーボードではなく二本足のですか?」

「そうです、二本足です。クロスバイクも結構面白いですよ。遠くまで散策できますからねぇ」

「結構遠くまで行かれるのですか?」

 近藤先生が聞く。

「総社のほうまで行ったり、深山公園経由で玉野のほうまで行ったりしますね」

「遠くまで行かれるのですね?」

「元気のいい人は、鷲羽山へ登ったりしてますよ」

「凄いですねぇ!」

「いや、ランニングより楽なスポーツじゃないですかね?」


 そんな雑談をしながら、2時間を和気あいあいと楽しく過ごし、私と結心さんの二人はタクシーで帰った。

 近藤先生は天野さんを喫茶店に誘っていたので、もう少し話をしたのだろう。本当に天野さんは面倒見が良いので有り難い。



読んで頂きましてありがとうございます。


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