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恋なんて知らなかった 【前編】  作者: 湯川 柴葉
第五章 お姫様願望
42/50

第42話 近藤先生と打ち合わせ

毎日2話投稿予定(午前3時と午後3時に1話ずつ)

 金曜日の午後、院生たちから近藤先生との研究会の進展状況をヒアリングした。火曜日に、院生からある程度先が見えていることを確認できていたので、ぼちぼち最終の纏めをして終了するように指示した。「近藤先生に私から伝える必要があればいうけど?」と聞くと、自分たちで結論が出せるので大丈夫だと言われた。これで、近藤先生が足繁く私の研究室に来る回数は減るはずだ。


 4時頃になって、近藤先生がサンプルデータの入ったUSBを持ってこられたので、院生たちと一緒に話し合いをし研究会をぼちぼち終結するようにお願いした。今の状況が長引くと、他の先生たちから何か指摘される可能性もあるのでこの辺が潮時だと思われるし、近藤先生もそこは理解してくれているはずだ。

 

 USBの中身のサンプルデータをプリントしたものを見せて貰ったが、複数群を合体させるデータ群も同じようなデータだった。

「これで目的は達成できるのですか?」

 近藤先生には失礼だが、素直に疑問点を尋ねた。

「もう1つフィールドの異なるものが含まれたデータ例を作ってみましょうかねぇ?」

 近藤先生が頭を捻られた。


「そうですねぇ……折角プロにやって貰うのだったら少し難しいけれども、是非ともやりたいパターンを作られたら如何ですか?」

「あまり複雑ではないけれども、面白い組み合わせ例を考えてみます」

 近藤先生がニヤリとした。

「近藤先生も、そういうのを考えるのがお好きなようですねぇ」


「あはは、そうなんですよ。もう趣味の部類かも知れないです」

「天野さんも、理論派ですから、寧ろ喜ぶと思いますよ。『面倒なのを持ってきたなぁ』って文句言いながら、意地でも作るタイプです」

「そんな感じの方ですよねぇ。この前お会いしたときに話が合いそうな感じがしました」

 近藤先生がにこにこする。

「そういうところ、先生と似てるかも知れないですねぇ」


「……そうだ! この講習会等が無事に終わったら、お礼としてご馳走しますので、4人で食事に行きませんか?」

「ああ、それなら、うんと言うかも知れないですねぇ。終わったら先生から声を掛けてみてくださればいいと思います」

 私は約束をしない。下手に口を挟むと、ややこしくなったら面倒だもの。

「はい、そうしてみます」

 近藤先生は喜んでいた。私と一緒に食事するチャンスを作れるんだもの、喜んで当然よ。


「あ、それで、このUSBはどうしますか? 取り敢えず、このまま渡しておきましょうか? 違う例を作るの難しそうかも知れないから」

 私はニヤリとして近藤先生の自尊心を少し虐めてみた。

「先生、厳しいことを言われますねぇ。元々、そんな難しいのは考えてなかったですからねぇ。ご指摘のとおりかも知れません」

 近藤先生は、あっさりと万歳してしまった。な~んだ、口ほどにもないじゃない。さっき自信ありそうにニヤリとしたのは、何だったのよ?

「あとで思い付いたら、追加するということでいいですかね?」

 私は勝ち誇った気持ちになって、ダメ押ししておいた。

「はい、取り敢えず、そういうことでお願いします」

 近藤先生が頭を下げた。


 なんだか知らないけど、近藤先生を追い詰めたというかやり込めたぞ。このところ、ずっと彼の計画どおりに進んでいて、面白くなかったので、ちょっと胸がすっきりした。何だか知らないけど、近藤先生のことを少し可愛いと思ってしまった。私、ひょっとするとサディスティックなタイプなのかしらん? あっ、これは冗談よ。


「それで、近藤先生。頂いたサンプルデータからアクセスのプログラムを作って、それを講習会用のパワーポイントファイルを作成するのには結構時間が掛かると思うんですよね。講習会の日程ですけれども、どのくらいの時期をお考えになっていらっしゃいますか? 天野さんにご無理をお願いしているので、あまり急がせるわけにもいかないですし」

「ああ、そんなに急がなくてもいいと思っています。そうですねぇ……3か月くらいでお願いできればと思いますが」

 近藤先生は控え目だ。

「分かりました。そのように伝えておきます。でも、天野さんは、頭の回転が速いので、手も凄く速いみたいです」

「それ、そうだと思います。話していると、切れ者だとすぐ分かりました」

 近藤先生も分かっているのだ。


「この前、彼らと打ち合わせしたときに聞いたら、事例を作るだけなら大して手間は掛からないのだそうです」

「ああ、その……アクセスのプログラムを作ることですよね?」

「そうです。手が掛かるのは、フォームとか印刷フォームとからしいです。でも、そこは、今回は見本なので手抜きするとか。――手抜きと言っても、格好よくこだわるのはしないという意味だそうですけどね」

「そう言われてましたよね。それでも、ある程度時間はかかるでしょう」


「1番時間が掛かるのは、パワーポイント用の画像を1つずつ切り取ってトリミングして並べていくことだそうです。これも手抜きするって」

「分かります! それすごく面倒です。僕らもやりますから、すごく分かります。それを切り取ったら、隣でトリミングとかをやって貰えると助かるんですよ」

「だから、説明文は省略して、講習会のときに口で説明しながらやるのだそうです」

「僕らの授業と同じ要領ですよね。流石、天野さんは先生業も慣れておられるんでしょうねぇ」

「そうそう、サラリーマン時代は会社で先生してたそうです」

 私も笑いながら天野さんから聞いた話をしておいた。


「先生、結構詳しく天野さんから聞いてきて下さったんですねぇ。ありがとうございます」

 近藤先生は頭を下げてくれた。

「まあ、お願いするのに、どれくらい大変なのかを何も知らないと、申し訳ないですものねぇ」

 私も、さりげなく恩を売っておく。

「本当にありがとうございます」

 何度も近藤先生が頭を下げてくれる。先日来の憂さが晴れた気分。

 近藤先生が頭を何度も下げながら帰っていった。


 今日みたいな話の流れ方だと、結構私のペースで話ができそうだと思った。あの先生は、私の言うことを結構聞いてくれそうな感じだ。こんなペースなら付き合ってみてもいいかも知れないわよねぇ。

 だって、私のファンなんでしょ? 私を大切にしてくれるはずよね。私も無茶を言う積もりはないけれども、男の人に気を使いながら付き合うなんて真っ平ごめんだ。私に尽くしてくれるのなら、私だって、それなりに優しくしてあげるわ。この感覚、結心さんと私は違うのよね。


 天野さんに電話して、デートの邪魔にならない日でいいから「緊急会議」をしたいとお願いした。データも渡せるし。


 ――暫くして、返事の電話がきた。

 結心さんと相談した結果、急だけど今夜、いつものように二人で食事デートをしてから、家に来てくれることになった。


 天野さん、お仕事大丈夫かしら? ――仕事の邪魔ばかりしている私が言うのもなんだけど。



読んで頂きましてありがとうございます。


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