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恋なんて知らなかった 【前編】  作者: 湯川 柴葉
第四章 想定外の行方
36/50

第36話 サンプルデータ

毎日2話投稿予定(午前3時と午後3時に1話ずつ)

「じゃ、パソコンにアクセスソフトがあるかどうかを調べてみますかね? 今、大丈夫ですか?」

 と天野さんが提案した。

「はい、よろしくお願いします」

 近藤先生が答えて、まず、先生のパソコンから確認。


「ああ、マックなんですねぇ。バージョンは分かりますか?」

 と天野さん。

 近藤先生が自分のパソコンを開いて確認していた。その間に、結心さんに指示を出していた。

「持ち主の名前とパソコンのOSのバージョンとアクセスのバージョンをメモして貰えるかな? 僕が言った数字を書いてくれたらいい」

「はい」

 結心さんが、きりりとした顔で応じた。おお、秘書の顔だ。素敵!


「じゃ、学生さんたちのところに行きますか? 先生が指示をしていただけますか?」

 天野さんが先生に振る。

 さすが天野さん。こういうところでは、自分が前に出ないのが原則なのだ。

 ほとんどの学生のパソコンにアクセスはなかった。パソコン購入時に、プリインストールされているエクセルとワード程度しかなかった。



 2階の私の研究室に下りてきて、私の研究室の学生たちのパソコンも調べて貰ったが、同じようなことだった。私のパソコンにもなかった。

 そこで、今度は、私の研究室の打ち合わせデスクに座って、近藤先生と今後の方針について協議した。


「しっかり使いこなせるのであれば、アプリケーションを購入することも考えたらいいですが、見通し不明な今の段階ではお勧めしません」

「そうですねぇ……学生たちへの普及は見送るしかないですかねぇ。……何かいい方法はありませんか?」

 と残念そうな近藤先生。

「もし、アクセスを利用する気持ちが強いのであれば、研究室のパソコン1台にのみ導入するという手があります」

 天野さんが解決策を提示。


「1台だけを共有するということですか? それだと入力時に重なってしまうなぁ」

 先生が腕を組む。

「例えば、その1台のパソコンで入力フォームを作って、そのプログラムをDLLファイルと一緒に吐き出すことで、他のパソコンでもアプリとして使えるようにできます。データファイルを後で合体して纏めることができますので、分散入力は可能ですね」

 天野さんが解説する。

「おお! そうすると院生たちに金銭的負担をかけなくてすみますね! 人海戦術で入力できるから効率がいい」

 先生の顔が明るくなった。この人分かりやすいわ。うふふ。


「学生たちが自宅でアクセスのプログラムをいじることはできないですけどね」

 天野さんが念を押すように言った。

「ああ、それは構わないですよね? 先生?」

 近藤先生が私に聞いた。

「それは大丈夫ですけど、例えば、そのプログラムを作るのに時間がかかるのですか?」

 私は天野さんに質問する。


「単なる入力フォームだけなら、基本的には30分もあれば出来ますが、ただし、形よくとか条件チェックとかの設定をしだすときりがないですよ」

 天野さんが答えて、すぐ、

「普通は、1時間程度を見ておけば作成できます。少し慣れたら」

 と付け加えた。

「入力フォームの作成は簡単なんですね?」

 近藤先生が天野さんに確認する。


「イメージとしては、テーブルまたはクエリを基にフォームを自動生成できます。それでは見難いので、字の大きさやテキストボックスなどの位置を変えたり、カラーにしてみたりと色々工夫をしてフォームを作ります。ここが手間暇の掛かるところですし、凝ると際限がありません。そして、仕上げとして、変な入力データを弾くように条件設定をします。例えば、時間や日付のチェックなとがあります。数字のところに数字以外があると弾くとかもそうです」

 天野さんが具体的な例を示した。

「なるほど! そういうチェックがあると楽になりますね」

 先生が大きく頷く。


「でも、その出てきた集計結果は、エクセルに吐き出して、それぞれのパソコンのエクセルで利用できないの?」

 私もたまには質問する。

「いい質問ですねぇ! さすが矢野先生、そのとおりです。エクセルに吐き出せます」

 天野さんが持ち上げてくれた。うふふ。

「エクセルとアクセスの良いとこ取りができますね」

 近藤先生も喜ぶ。


「しかし、まあ先生にレッスンするのはいいですが、学生の誰もできないと、近藤先生が全部やることになりますよ?」

 天野さんが脅す。

「えっ?! そういうことになるのか。それも大変だなぁ。……どうしたらいいですか?」

 と、また天野さんに相談する。

「それは先生たちの方針次第じゃないですか? 例えば、学生たちで興味がありそうな子にもレッスンして覚えて貰い、それを代々で引き継いでいくとか。あるいは、操作マニュアルを学生たちに作って貰って、アクセス操作を定型化してしまうとか。方法は、必要に応じていくらでも考えられると思いますけど」

 天野さんは、その場ですぐに解決策を思いつくのねぇ。凄いと思った。

 

「なるほど……学生たちは興味を示すのでしょうか?」

 近藤先生は自信がない。

「そりゃ、少ないかも知れないですねぇ。ちょっと今聞いてみたらどうですか?」

「誰か、アクセスに興味のある人いる?」

 と私が院生たちに声を掛けてみた。


 数人が手を挙げたけど、よく分からないまま、興味を示しただけの感じ。パソコンにアクセスソフトが入っている子たちだけかも。


「まあ、ゼロじゃないから、何とかなるかも知れませんね」

 天野さんは楽観的だ。



「そういうわけで、本日はこんなところでよろしいでしょうか?」

 天野さんが近藤先生に言った。

「はい、ありがとうごさいました。貴重なお時間を頂戴しまして、申し訳ありませんでした」

 近藤先生が頭を下げた。

「いえいえ、お役に立てれば幸いです。……それで、今後の予定なのですが、まず、サンプルデータを作成していただけないでしょうか?」


「はい。作成してみます。少しお時間を頂いてよろしいですか? エクセルのデータでいいのですよね?」

「エクセルデータがいいです。USBにでも入れてください。急ぎませんので、お時間のあるときで結構です」

 と天野さん。

「出来上がったデータはどうやってお渡しすればいいでしょうか?」

「えーと、矢野先生にお渡し頂いたら大丈夫です。この森山が受け取って私に届けてくれます」

 天野さんが結心さんを見ながら言う。

「わかりました」

 近藤先生が私と結心さんを見た。

 え? 私と接点ができる? ……まあ、これは仕方ない流れか。


「それでですね、そのサンプルデータをお預かりして、簡単な入力フォームと並べ替えのクエリなどを作成してみます。一連の流れと操作内容を分かりやすくパワーポイントにでも纏めて、3時間程度の講習会をしましょうか? 全体像が見えたら、何を学びたいかもわかるかと思いますので、その先は独習ででもできるようになりますよ。簡単な作業程度なら楽勝です」

 天野さんが事も無げに言った。

「ありがとうございます!」

 近藤先生が改めて頭を下げた。


 天野さんたちが帰っていった。

 私は車のところまで見送りして「どうだった?」と聞いた。

「悪くないから、もう少し接触することにしたわけよ」

 天野さんが笑って答えた。

「詳しくは、もし良かったら今夜私のところに来てくれない? 二人で一緒に。ご飯も用意するから」

 二人が顔を見合わせて頷いた。


読んで頂きましてありがとうございます。


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