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恋なんて知らなかった 【前編】  作者: 湯川 柴葉
第三章 夜の空港で
24/50

第24話 男の目 女の目 (3)

毎日2話投稿予定(午前3時と午後3時に1話ずつ)

 テーマは『男性はどういう気持ちで女性を口説くのか――真面目なケース』


 今どき、男女の別なく異性を性的な目的で口説くケースも多いと聞くが、それでも男女の違いはないのだろうか? そこを天野さんに聞いた。


「乱暴に言わせて貰うと、男は女性が既婚か未婚かには関係なく口説く。真面目なケースを解説すると言いながら、そんな言い方はおかしいと思うかも知れないけど、要するに結婚云々は考えてないということ」

「結婚は関係ないという意味?」

「そう、関係ない。男性が独身だったとして、ロックオンした相手の女性が既婚なら不倫になるし、未婚なら不倫じゃない。男性が妻帯者なら、何をしても不倫。でも、男は、そんなことは関係なく気にいった女性を口説く。まず、根本的な特徴はここにある」

 と天野さんが爆弾発言。


「えぇ~っ! 女性からすると、先に相手の男性が未婚かどうかを確認しようとする、……と思う。未婚かどうかは大切なことでしょ? 不倫というのも抵抗あるしね」

 結心さんも私も、驚いて絶句だ。 

「それは、君たちが《未婚》だからというシンプルな理由が原因かも知れない。たとえ結婚したいと思っているわけじゃないとしても、だ。強いてあげれば、道徳観念が不倫を避けようとしているのかも知れない」

「まあ、それは言えるかも。私たち、そういうケースがないから、分からないけど、多分そう」

 と二人して肯定する。


「あのね、口説くということは、恋愛しようとしているわけよ。遊び相手を探すわけじゃないという真面目なケースであってもね」

「うん、真面目に恋愛だよね。普通に目指すところは結婚なのかな?」

「そうだよね。でもね、恋愛って好きになることでしょ?」

「そう」

「だから、そこに既婚未婚の区別なんてないのよ」

「え~? だって、既婚者だったら、あとで困るじゃない」と私。

「そうだよね。だから、先にそこを見極めるのよね?」結心さんも同意。

「男は先にそれをしないのよ。勿論、例外は別だよ。色々な考えの人がいるからね」

「う~ん、納得できないなぁ」

「いや、だから、男と女の違いを話しているわけで、そこが違うの」

「そういうことか。そこが違うのね。それは驚天動地の気分だわ」

 と結心さん。


「で、ここで問題になっているのは、要するに《不倫》ということだよね?」

「そう! だからこそ、既婚未婚が大切なのよ」と私たち。

「つまり、基本的に、大抵の男は不倫を大して問題にしていないということになる」

「え~?! そういうことになるの?!」

「1つ聞くけど、不倫てどこからが不倫なの?」

 と天野さんが私たちに質問した。

「この前、話したけど、お茶とかお食事程度なら不倫にはならない」と私。

「そうだよね。そうすると、お茶レベル以上を前提として付き合うことを想定しているわけ?」

「そこまで先を考えてないけど、そうなってもいいように、安全面を重視しているのよ、きっと」と私。

「私たち、そんなに、すべての異性を結婚対象と意識してるわけじゃないもんね」

 と結心さん。

「いや、それが正しい反応なんだと思うよ」

 天野さんも否定しない。

 

「裏付ける正当性はないのだけど、仮説がある」

「聞いてあげる」

 と私は上から目線で続けるように促す。

 

「昆虫でも動物でも、強い子孫を残す為、メスは強いオスを選ぼうとする。従ってオスは命懸けで戦って生き残ったオスだけが子孫を残せる。逆に言うと、オスには相手を選ぶ権利がないに等しい。だから、オスはチャンスさえあれば種を蒔こうとするけど、メスは相手を選ぼうとする」


「それは分かる」

 

「人間に当てはめると、男性は気にいった女性を無条件に口説こうとし、女性は男性を受け入れていいかどうかを選別しようとする。それが本能なんだね」

 天野さんが言うと、何だか正しいような気がしてきた。マインドコントロールされていないかしら。それが本能だなんて言い切るのが、天野さんらしいわ。――正当性はないと言ってるけどね。


「というわけで、君たちの感覚は、その仮説に依れば正常な反応だ。未婚であるからこそ、相手を選別しようとする本能が働く。未婚でも子供を産まないなら選別基準は気に入るかどうかだけ。恋愛対象が増える。結婚して子供を産んだら選別基準が消えるから、その選別本能が鈍くなるかも知れない。つまり選別基準が男性化する。だから、主婦が浮気をする。……かなり危ない説明だけどね。あはは」

 と天野さんは煙に巻いた。



「さて、あまり長居すると迷惑だろうから、この辺で失礼するかなぁ」

 と天野さんが私たちを見る。


「こちらこそ、いつも相談に乗ってくれてありがとう。また変化があったらお願いね」

「あ、私も帰るかな? 天野さん、(うち)まで送ってくださいな?」

 と結心さんが一緒に帰ると言う。

「ああ、もちろん喜んで! 途中で珈琲スポットにでも寄る?」

「うん! 寄る!」

 と結心さんが、その話に飛びついたように見えた。

「結心さんも、いつもありがとう! 襲われないように気を付けてね!」

「は〜い! またね~! 襲われたら相談に乗ってね~!」


「どんな会話をしとるんや? あんたたちは?」

 と天野さんがぼやきながら帰っていった。


 でも、あの2人、今日が初対面なのに、昔からの友達みたいな雰囲気だったなぁ。

 話のやり取りもノリノリだったし、すぐに脱線して万才みたいに面白く盛り上げるし、話し方も似てるし、あれも感性が似てるってことなんだろうか?

 結心さんは、天野さんが既婚者だってことを気にもしてない雰囲気で話してたし、まぁお茶くらいなら不倫とかを考えることないわよね。


 それに、天野さんは姉の高校の先輩で、私がこの部屋に迎え入れてお茶やご飯を出して相談してるから、きっと結心さんも安心してたのよね。だから、本当に最初っから、気楽に話してた。緊張感が全く無かったものね。


 質問するときも、天野さんの好みというか、そういう前提でいいってことで聞いてたし。ソファに座るときも抵抗なく天野さんの隣に座ったよね。

 それと自分から握手した。あれには正直にいって驚いたわ。それから、冗談にしても口説かれたって嬉しそうにしてた。全部冗談だと思ってた。面白半分にからかってたのだと思っていたけど、もしかしたら本気だったのだろうか?


 まあ、子供じゃないのだから心配する必要ないよね。でも、あんなに積極的な結心さんは初めて見た。本当に天野さんとの会話を楽しんでいたし。

 きっと、今まで付き合ってきた男性とは違ったのだろうな。何か吹っ切れたような顔してたのよね結心さん。口では未婚者がいいと言いながら、天野さんが既婚者だって知ってても気にしないで積極的に話をしてた。


 天野さんも、今までとは全く違ったわよねぇ。私との会話では、ああいう雰囲気で話をしたことない。

 つまり、何となく、いつもよりずっと2人ともテンションが高かった……一瞬にしてお互い恋に落ちた?

 いやいや、そんなに簡単に、そんなことは起きないわ! でも、ラインの交換してたし、何よりも、帰るときに自分から送ってくれと声かけたよねぇ。歩いてもすぐなのに。

 嫌なら一緒に帰るって言わないし、それも車で送ってくれとは言わないわ。結心さんと天野さんとの関係も気になってきた。


 何だか、私の周りに、面白い事件が発生しだしたなぁ。

 ――私にも、何か、いいことがありますように!


読んで頂きましてありがとうございます。


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