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恋なんて知らなかった 【前編】  作者: 湯川 柴葉
第三章 夜の空港で
21/50

第21話 そもそも恋愛とは

毎日2話投稿予定(午前3時と午後3時に1話ずつ)

 主な議題は済んだので、少し気楽に3人でお話をした。今日はせっかく男性の天野さんがいるので、先日結心さんと話して結論がでなかった異性間の友情と恋愛感覚の問題を話題にした。


「同性愛という部分は別にして、同性間での友情の存在は認めるよね?」

 と私が切り出した。

「うん、認める」と結心さん。

「そりゃ、当然あるわ。異性間でも友情があるくらいだし」と天野さん。


「天野さんと私の姉とは、どういう関係なん?」

「おっ! 最初から全然関係のないところで鋭い突っ込みじゃなぁ」

「雑談なんだから、関係云々はいいの。で、友情関係なの?」

「う~ん、友情とは違うかもなぁ……」

 天野さん歯切れが悪いよ。

「え? じゃあ、ま、まさかの恋愛感情?」

「いや、それは全く違う!」

 即答する天野さんの返事は、意味不明。訳が分からない。


「あのなぁ、微妙なんだけど、先輩と後輩という間柄なのよ」

「友情とは違うの?」結心さんも参戦してきた。

「うん、僕の感覚で言うと、《友情》というのは、お互いが《同格》というか上下のない間柄」

「え~? それって言葉遊びじゃない?」と私。


「あのな、例えば、結心さんにせよ詩織にせよ、君たちと僕との間には先輩後輩という間柄は存在しないのよ。今の時点ではね」

「確かに」と美女二人。

「だから、君たちとは、《友情》か《愛情》の二者択一しかない」

 と天野さんが澄まして言う。

「年令が違っても関係ないのね?」と私。

「そうそう。友情にも愛情にも年齢差は関係ない。そして、先輩後輩にも年齢は関係ない」

 と天野さん。


「あまりここで長くなると夜が明けるから、簡単に済ますけど、先輩後輩という関係は、その関係性において先か後かの違いなのよね。例えば年下でも、テニスのうまい人は先輩だったり先生になる、ということ」

 と端折(はしょ)る天野さん。

「だから、詩織のお姉ちゃんは、僕にとっては、どこまでも高校の後輩なのよ。仮に恋愛でもすれば、同格になるかも知れないわけね。でも、絶対に恋愛にならないけどな」

「なるほど。……『絶対』を強調するわねぇ」

 と結心さんが突っ込むと、天野さんは、

「だから、先輩後輩の仲なのよ」と返した。


「で、先輩と後輩の関係って、友情とか愛情みたいなものはあるのか? ということが問題になるかも知れない。これはまあ、ちょっと違うけど、家族愛と同じような種類のものだと思う。家族愛は、性別に関係なく《情》が大きい感覚なのかもしれない」

「分かりにくいわね」と私。

「広い意味で言えば友情とか愛情とかの分類に入るかも知れないけれども、明らかに愛情とは違うのだと思っている。例えば、職場の中で先輩後輩がいて仲がよくても、家族愛とは違う部分も多いと思う。だから、これは、やはり、愛情とは区分しておくべきだと思うのよね。勿論、友情の域に達する関係もあるだろうけどね。どちらにしても、そういうわけだから、後輩が困っていれば、可能なら手助けくらいならする」

 と天野節が続いた。


「そうすると、友情とか先輩後輩は、ある意味、関係性においての分類であって、愛情とは違うということ?」

 と結心さんが(まと)めようとする。

「まあ、乱暴かも知れないけど、そういうことだと思う。単なる《情》の問題。友情は友としての情。だから、そこには、男女の問題は関係ない」

 と天野さんがざっくりと説明する。

「そうかぁ、……そうだよねぇ。じゃ、異性間の友情というか友達感情と恋愛感情の違いを説明して欲しい」

 と結心さんが真面目な顔で聞く。

「その前に、恋愛感情って何?」と天野さん。

「え~と、大好きってことなのよねぇ。ここに《性》の問題があるのじゃないかと思うんだ」

 と結心さんは《性》という言葉に踏み込む。

「なるほど、でも大好きなんて、あっちこっちにあるよなぁ。親子も大好きの系統だろうしね」

 と天野さんが軽くあしらう。

「そうなんだけど、語彙(ごい)が不足してるというか、どう表現したらいいのか分からない」

 と結心さんはたじろぐ。


「大好きというのは、まあ《愛》と言い換えてもいいと思うのよねぇ。親子兄弟の愛みんな同じ。その点、《恋愛》というのは、基本的には異性間の特別な愛のことだと思う。つまり恋する愛。恋は、異性に対しての特別な感情のことで、そこには《性》が存在する。元来、恋愛は異性間の愛情のことを指していたのだと思うよ。今でこそ、LGBTQだとかいろいろな愛情の表現が出てきたからややこしいけど、元々は男女の愛を恋愛と考えてきたと思う。その上で、その感覚を同性間にも適用しようとしているのが現代の考え方だよね」


「なるほど、恋愛は、本来異性間の愛だということなのね。すごくすっきりする」

 と結心さんは納得している。


「そこで先ほど質問された異性間の友情感覚と恋愛感覚についてだが、もう分かったと思うけど、もう一度整理して言うと、異性間の友情は恋愛とは明らかに違う。友としての情であって、恋ではないから《性》が入らない。異性間の特別な感情が入らないと恋愛にはならない。特別な感情とは《性》だ。多分、結心さんの理解で正しい」

「そうだよねぇ。それしかないと思ってたけど、自信がなかったの」

 と結心さんはすっきりして、笑顔で天野さんを見る。


「そうすると、《性》って何ですか?」

 と結心さんは突き進む。

「程度の差こそあれ、ここでは《性的感情》のことじゃない?」

 と天野さんは、簡単に言う。

「例えば、キスも性的なんですか? 外国人など挨拶でもしてることがあるけど」

 と結心さん。私の出る幕がない速度で話が進む。

「挨拶なんかでされるキスは、慣習によるものであって、性的とは言わないでしょ。頬を寄せる行為でも、性的とは限らないし。要するに、性的な特別感情なのかどうかの問題。抱きしめるだけでも、性的か否かは分かれる。要は感情の問題だからね」

「手を握っても、同じことが言えますよね?」

 と結心さんは、今日は凄く突っ込んでいく。


「そうそう。恋人同士が手をつないで歩けば、性的や。まあ、当人たちは、そこまでの意識はないかも知れないけどな、あはは」

「うんうん」

「ついでに、ちょっと脱線するけど、いい?」

「はい!」と結心さんは前のめり。って、天野さんの横にいるから、横のめり?


「まあ、交際を始めたばかりのころの話だと思って想像してね。二人で公園を散歩していました。もちろんデートです。で、男の人が彼女の手を握ろうとしました。さて、女性は、どんな反応を示すでしょうか?」

 と天野さんが質問する。

「う~ん、そう言えば、私もデートのときに、相手から手を握られた」

 と結心さんが過去を思い出しながら遠い目で話す。

「え~? それで、どうしたの?」

 と思わず、私は結心さんに聞いてしまった。

「うふふ、私の答えは後からにして、詩織さんならどうする?」

 と結心さんは先輩顔して、私に促す。年下なのに、恋愛歴は先輩だ。

「私は、恥ずかしいから、嫌というかもなぁ……」

「そうなのよ、私も断った」と結心さんが笑う。

「そうだよねぇ。大抵の場合、男性から口説かれてデートに行った女性は手を繋がない。理由は恥ずかしいから。でも女性が口説いてデートするときは女性から手を繋ごうとする」

 と天野さんが回答。




読んで頂きましてありがとうございます。


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