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恋なんて知らなかった 【前編】  作者: 湯川 柴葉
第二章 予測と対策
15/50

第15話 結心さんの整理 (1)

毎日2話投稿予定(午前3時と午後3時に1話ずつ)

 お菓子を食べながら、コーヒーを飲んで、恋愛の話をしている。まるで、高校生になったみたいだ。でも、実際はそんな楽しい話じゃない。そもそも、私は高校生のとき、そんな話には見向きもしなかった。

 嫌というのではなく、興味がなかったのよね。通学のバスや電車で格好いい男子生徒を見つけた、学校はどこそこらしいとか、結構キャーキャー騒いでいる子がいたけど、何が楽しいのだろうと思っていた。


 結心さんが、会話のリーダーシップをとって、私の気持ちを丁寧に確認してくれている。結心さんは、メモを取り出して、纏めながら私の気持ちを書き留めてくれた。本当に頼りになる結心さん。


「まず、一番大切なことは、詩織さんがその先生のことをどう思っているのかを教えて」

「それと同じことを天野さんにも聞かれたわ。正直に言って、好きでも嫌いでもない。何とも思ってない。興味がないし、そもそも不倫は嫌だというのが一番大きい」

「無味無臭という感じね。とどめのキーワードは『不倫は嫌』」

「そうそう! 無味無臭! うまいこと言うわね」

「だから、断る前提で考えたらええんよな?」

「当然よ! それ以外考えられない」


「じゃ、手紙じゃなくて、勉強会のようなものだったら、どうするん?」

「そりゃぁ、……仕事だから、今までどおりと同じように、普通に接して普通に話はすると思う」と私。

「職場だもの、難しいよなぁ。……逃げたいような人でなくって良かったなぁ、いや、ほんとに」

「勉強会だったら接触の回数は増えるかもしれないけど、私に迫ってくることはできないはず。もしも迫ってきたら、そのときは、学部長に言いつけてやるわ。妻帯者なんだから、セクハラになるはず」

 と強気な私。公衆の面前で言い寄るなんてできるはずがない。自己保身の人がするはずない。

「勉強会は、自然体で、一定の距離感を保つわけじゃな? ほんなら、これは考慮せんでええな」と結心さんが纏めた。

「うん、天野さんとの話でも、そんな感じで、準備不要となった」


「さて、ラヴレターとして、好きですとか色々書いてきたら、どうするん?」

 と次の問題を提起する結心さん。

「う~ん、いくらなんでも気持ち悪いとかは言えないしねぇ、職場だから」

「だから、ここで、例の『彼氏いる』という必殺技を使うんよ」

 結心さんの切れは鋭い。

「でも、具体的にどうするわけ?」

 私には思い浮かばない。だって、彼氏がいないのだもの。

「だから、好きですとか交際したいと書いてくるわけでしょ?」

「ラヴレターならそうなるよなぁ……」

「それに対して断るのだから、『私には彼氏がいます』でいいじゃない」


「あ、そうか! 断る言葉としては、相手を傷つけないで返事をする最適な言葉よね」

「そうそう。ラヴレターに対しては、『彼氏いる』作戦しかないでしょ」

「彼氏いないのに、イメージ作れるかなぁ?」

「う~ん、とりあえず天野さんを彼氏ということにしてしまおう。便利な男じゃなぁ、うふふ」

「今ごろクシャミしてるかもね、ふふ」


「天野さんは独身ということにしとかんといけんじゃろ? まあ、年は近いんじゃから無理はないじゃろ。私も、こんなトラブルがあったときは、貸してね天野さん。会ったことないけど」

 と結心さんが乗ってくる。

「いいわよ! って私の持ち物じゃないし」

 私は『天野さん、持ち物扱いしてごめんなさいね』と心の中で謝っておいた。

「ラヴレターに関しては、『彼氏がいます』で対応し、具体的なイメージは天野さんを想定する、これでええよな?」と結心さんが纏めた。

「うん、それでいい」と私。

 天野さんが彼氏という設定は、まあこの際仕方ない。ごめんね、天野さん。


「さっき取り敢えずは外したけど、花束とかプレゼントとか貰ったら、どうするん?」

 と結心さんが、天野さんとも外した話を持ち出してきた。さすが結心さん!

 花束なんて思いつかなかった。結心さんはボーイフレンドたちから貰ってたんだろうなぁ?

 他人の話なら、それ素敵と思ったけど、自分の話になると、好きでもない人から花束なんて気持ち悪い。


「プレゼントは、誕生日を知らないから無いかと思って、検討しなかったよ。基本的には、断って受け取らない。……でも、職場でそれやられると引くわ。波風は立てたくないけど、困るだろうなぁ」と私。

「それで、天野さんが、まさか自分が勤める職場ではやらないだろうと思って、検討対象から外したのかな?」

 と結心さんが推測する。

「そうそう、自宅は可能性があるけど、知らないだろうし。知ってたらストーカーみたいで怖い」

 

「でも、一応は、考えておこうよ。可能性がないわけじゃないし」

 と結心さんは心配そうに言ってくれた。結心さんは細かいところまで気配りをしてくれる。

「そうよねぇ……。花束なんて、まさかの展開だもんね」

 私も少し不安になった。

「花束って大きいから、職場では目立つだろうけど、男の人がよくやる手の1つみたいよ」

 と結心さん。

 なんでも、結心さんが知ってる女性の勤務先に、社外で知り合った男性から花束が贈られたそうな。まさかと思ってたところへのサプライズとなって、その女性はデートに応じてしまったらしい。――なんだ、結心さんの話じゃないのか。


「へェー! その男性はプレイボーイなんだろうねぇ」

「プレイボーイというか、妻子持ちの人で顔とかも良いことないのに、何故かモテるらしい」

 と結心さんの具体的な事例研究。

「要するに、女は花束に弱いって? 相手が妻子持ちでも、デートに応じるんだ!」

 と私はびっくりした。


「あはは、『1億円の札束』ならどうする?」

 と結心さんが次の攻め手を掲げる。

「!……! う、う~ん、考えるかも! あはは」

「女は、花束と札束に弱い?」

 と結心さんが面白そうに纏める。


「結論は、贈られるモノによる、ということで」と私。

「おいおい! 断るんじゃないん?」

 結心さんが、私のまさかの回答に慌てる。

「まあ、花束ならややこしいから要らない。他は、貰ったものに依るわね。そこに、苦労とかアイデアとかがあれば、貰うかも」

「あんた、かぐや姫か? ……でもまあ、全てを拒否ではなくて、臨機応変に判断するってことか。――ここでの臨機応変てなんだろ?」

 と結心さんがスマートに纏めた。――疑問符を付けながら。


 そりゃ、花束を受け取るだけで1億円貰えるのなら、考えるわ。――普通。

 私だけじゃないわよね? 1億円だよ?!

「女は、花束と札束に弱い?」って名言かも。



読んで頂きましてありがとうございます。


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